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先天性嚢胞性肺疾患の症状と検査――肺炎やかぜが治らない場合は注意

先天性嚢胞性肺疾患の症状と検査――肺炎やかぜが治らない場合は注意
川嶋 寛 先生

埼玉県立小児医療センター 小児外科 科長

川嶋 寛 先生

目次
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先天性嚢胞性肺疾患(せんてんせいのうほうせいはいしっかん)は、胎児診断で判明するケースと、生まれてから咳などのかぜ症状や肺炎などがなかなか治らない場合に検査をすることで診断に至るケースがあります。胎児診断で見つかった場合は、生後すぐに治療を行うべきかどうかを判断するために病変の大きさなどを調べる必要があります。今回は埼玉県立小児医療センター 小児外科 科長である川嶋 寛(かわしま ひろし)先生に、先天性嚢胞性肺疾患の症状と検査についてお話を伺いました。

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発熱、咳、痰などのかぜ症状が多くみられます。嚢胞が大きい場合には胸痛が出ることもあります。また、肺炎などの感染をきっかけに咳をはじめとした呼吸器症状が強く出ることで胸腔内の圧力が高まり、嚢胞が破れてしまう場合もあります。出生直後では、嚢胞が大きすぎて呼吸が確保できないケースもみられます。この場合は迅速に手術を行い、嚢胞を小さくする必要があります。

ただし、なかにはまったく症状のないまま経過する方もいます。

胎児心拍が落ちてしまうケースや、肺自体の成長が悪く肺が十分に育たないケースがあります。また、正常な肺や胸腔内の臓器を圧迫してしまうほど嚢胞が大きくなる胎児もいます。このとき、胎児には肺に穿刺(せんし)(針を刺すこと)して嚢胞を縮めるなどの対応を行うため、生後に呼吸障害や肺の成長障害を起こすことがあります。

なお、母体には症状が現れず影響もありません。

先天性嚢胞性肺疾患は、咳や痰、発熱などの一般的なかぜ症状や呼吸器症状がなかなか治らない場合に、詳しく検査を受けることで見つかることが多いです。大きい嚢胞であれば胸部単純X線写真で比較的判別しやすいのですが、CPAMのように小さい嚢胞が集束している場合は非常に判別がしづらく、見逃されてしまうこともあります。そういった場合はCT*などの画像診断を行うことで嚢胞が見つかるケースもあります。

*CT:体の周囲からX線を当てて、体の中の吸収率の違いをコンピューターで処理し、体の断面を画像にする検査方法。検査の目的によっては、造影剤を使用する場合がある。

胎児期の検査

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基本的に、まずは隣接するさいたま赤十字病院の産婦人科にて胎児超音波検査が行われます。胎児超音波検査で嚢胞性肺疾患の疑いが出た場合、次にMRI*で病変の大きさ、範囲、種類を特定します。ただし、MRIでは嚢胞性肺疾患の中でも肺分画症なのかCPAMなのかといった細かい分類までは診断がしづらく、そのあたりの鑑別は出生後に行う検査結果から判断します。

MRIの結果、呼吸と循環(血液の巡り)に影響がなさそうなレベルの嚢胞性肺疾患と推測されれば、出生後に精密検査を行うのが一般的です。出生後の呼吸や循環が正常に保てるか不明なレベルの嚢胞性肺疾患の場合、さいたま赤十字病院の産婦人科と当院の新生児科が連携して設立した総合周産期母子医療センターにて、出生後すぐに手術ができるような体制を整えています。

*MRI:強力な磁場が発生しているトンネル状の装置の中で、FMラジオなどで用いられている周波数の電波を体に当て、体の内部の断面をさまざまな方向から画像にする検査方法。検査の目的によっては、造影剤を使用する場合がある。

出生後の検査

出生後の嚢胞性肺疾患の検査では、胸部単純X線写真とCTを行うことが標準的です。肺分画症とCPAMの分類は、異常血管があるかどうかによって決まるため、CTに関しては異常血管の有無が確認できる造影CTを行うことがほとんどです。このように、嚢胞性肺疾患の中でも疑われる病気のタイプによって実施する検査が分かれてきます。

場合によって行う可能性がある検査

患者さんの年齢が高い場合は気管支鏡検査を行うことがあります。とはいえ最近はCTやMRIの検査精度が非常に高く、この検査を行わなくてもほとんど診断がつくため、特殊なケースでない限りは基本的に実施しません。気管の太さは年齢依存であり、新生児は気管が細すぎるため適応されません。

肺分画症とCPAMは異常血管の有無で分類されるため、異常血管があれば肺分画症、異常血管がなければCPAMと診断されます。胎児期であれば胎児超音波検査やMRIを、出生後であれば主に造影CTを行って異常血管の有無を確認するのが嚢胞性肺疾患における一般的な診断方法です。

胎児期に診断されるケースの多くは、嚢胞の病変が大きいことが特徴です。嚢胞が大きいと心臓や肺などの周辺臓器を圧迫して成長障害につながる可能性があるため、出生時に呼吸や循環が確保できない場合は出生直後から治療を開始します。

一方、嚢胞が小さい状態で胎児診断されるケースでは、特に呼吸器症状がなければ体が成長するのを待ちつつ、CT検査などを行って症状の経過を見ながら治療につなげていきます。

検査は、隣接するさいたま赤十字病院と当院が連携して設立した総合周産期母子医療センターにて、互いに協力しながら行っています。毎月実施している周産期カンファレンス*ではさいたま赤十字病院の産婦人科、当院の新生児科、外科などさまざまな診療科の医師たちが集まり、患者さんに必要な検査について検討しています。

当院は埼玉県立“小児”医療センターという名称から、小児のみの診察を行っているというイメージが強いかもしれません。しかし、当院の医師は総合周産期母子医療センターにて胎児超音波検査から診断までを積極的に担当しており、子どもと母体のケアを包括的に行っていることが特徴です。

*カンファレンス:医療を提供する関連スタッフが情報の共有や共通理解、問題解決を図るために開催される会議。

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  • 埼玉県立小児医療センター 小児外科 科長

    川嶋 寛 先生

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