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先天性胆道拡張症を診断するための検査――MRCP、CT、ERCPについて

先天性胆道拡張症を診断するための検査――MRCP、CT、ERCPについて
川嶋 寛 先生

埼玉県立小児医療センター 小児外科 科長

川嶋 寛 先生

目次
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先天性胆道拡張症(せんてんせいたんどうかくちょうしょう)の診断では、数種類の検査を組み合わせて胆道の機能や形態を詳しく確認することが必要です。検査の中でも特に重要なのは、MRIにより膵管(すいかん)や胆管の形を診るMRCPと、周辺の血管の形を調べる造影CT検査です。埼玉県立小児医療センターでは、これらの検査をスムーズに実施するために、小児科をはじめとした他科連携体制を構築しています。同院小児外科 科長の川嶋 寛(かわしま ひろし)先生に、小児の先天性胆道拡張症の診断に必要な検査内容についてお話しいただきました。

こちらのページで詳しく述べたとおり、ほとんどの場合、先天性胆道拡張症(すい)胆管合流異常症(たんかんごうりゅういじょうしょう)を伴います。このことから先天性胆道拡張症の診断のためには、胆管拡張と膵・胆管合流異常症の両方を確認する必要があります。

以下に、先天性胆道拡張症を診断するにあたって当院が実際に行っている検査の内容とそれぞれの特徴を解説します。

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先天性胆道拡張症が疑われる場合、基本的にまずは血液検査(採血)で血中アミラーゼ値や直接型ビリルビン、肝機能、胆道系酵素、膵機能などを調べます。ここでアミラーゼ(膵機能)の値が高かった場合は胆道系疾患や膵炎(すいえん)の可能性が疑われることになります。また、膵炎を起こしていることが分かった場合、子どもでアルコール摂取による膵炎の可能性はまずありませんから、そうした検査所見を示す子どもの病気の筆頭として、われわれ小児科医は先天性胆道拡張症を疑います。

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腹部超音波検査では、総胆管や肝内胆管に拡張があるかどうか、膵管が拡張していないかなどを細かく調べることができます。患者さんの体に負担がかからない検査法であり、診断のきっかけとしても有用な方法です。

腹部超音波検査で異常が認められたら、より詳細に胆道系の状態を調べるための検査を行っていきます。

MRCPとは、簡単に述べると撮影対象を腹部(特に胆道系)に絞ったMRI検査です。先天性胆道拡張症の患者さんは胆管の中に液体(胆汁)がたまっているので、そのたまっている液体を描出する形で胆管を撮影し、胆管の形状を映し出します。対象を絞って撮影を行うため、胆道系全体の状態や、膵・胆管合流異常症の形態を詳細に確認することが可能です。

このようにMRCPは胆道系全体や膵・胆管合流異常症について確認するには優れた検査方法ですが、血管系は描出されにくいため、次に述べる造影CT検査を行い確認します。

胆道系周囲の血管の異常や形を調べるのに適した検査で、MRCPでは十分に映し出せない部分を確認するために実施します。施設によってはMRCPよりも先に実施する場合があります。

ERCPは、内視鏡を用いてカテーテルを口から挿入しX線撮影をすることで、胆道や膵管の状態を調べる造影検査です。臓器を直接撮影でき、必要に応じて内視鏡から組織を採取することも可能であるため、先天性胆道拡張症における最終的な検査法とされています。

しかし、ERCPの内視鏡やカテーテルは子どもの体格に対して太いため、小さな子にはなかなか入らない、挿入できた場合でも動作に多少の制限がかかる、全身麻酔が必要などのさまざまな課題があるため、実施できる施設が限られます。

ただし、こちらのページでお話しした膵胆管高位合流のような一見正常に近いタイプの膵・胆管合流異常症はMRCPと造影CTを行っても診断がつかないことがあるため、最終診断のためにERCPを適応する場合があります(診断的ERCPといいます)。

また、先天性胆道拡張症によって生じたタンパク栓*が膵・胆管に詰まって閉塞性膵炎(へいそくせいすいえん)を生じているようなケースに対しては、タンパク栓を摘出する目的でERCPを行うことがあります(治療的ERCPといいます)。

*タンパク栓:膵液中のタンパク質が胆汁と混じることによってできた固い塊で、やがて膵石となる。

その名のとおり、実際の手術の際に行う造影検査です。胆管の形態を直接調べて術前の検査結果とのずれがないかを確認します。

当院では先天性胆道拡張症診断に関する各検査を、画像診断を専門とする放射線科医が中心となって進めます。そのため、超音波検査からMRCP、造影CTなどの一人ひとりの患者さんに必要な検査を並行して進めていくことが可能です。

また、ERCPに関しては消化器・肝臓科の医師が実施し、その診断結果を小児外科に共有していただいています。このように、小児病院という特性を生かし、他科連携体制でスムーズな検査を行っております。

胆管の拡張は、胆管径、拡張部位、拡張形態などの検査結果から診断します。胆管がどのような形に拡張しているかによって、膵・胆管合流異常症を伴う先天性胆道拡張症は発症の多い症例として“Ia”、“IV-A”、そして“Ic”などに分類することができます。

MN作成

  • Ia

胆管拡張の程度が大きく、拡張は肝臓外にとどまっています。症状は強く劇的に現れることが多く、発症頻度は比較的高いとされます。

  • IV-A

胆管拡張の程度がより大きく、肝臓の中まで拡張が広がっていることが特徴です。症状はIa同様劇的に現れ、発症頻度も高いとされます。

  • Ic

胆管に膵管がなだらかに合流するタイプです。IaやIV-Aに比べて胆汁が流れやすい形態のため、比較的症状が出にくいものの、タンパク栓を形成しやすいことが知られています。どちらかというと年長児に多くみられ、発症頻度は低いとされます。

前項で述べたMRCPや造影CT検査などにより、膵管と胆管が異常な形で合流している、または通常よりも長い共通の管をもって合流している、合流部分が十二指腸壁外にあるなど、合流異常の状態が確認できた場合に診断されます。

〈そもそも膵・胆管合流異常症はなぜ起こる?〉

先天性胆道拡張症の根本的な原因は膵・胆管合流異常症です。では、なぜ合流異常が生じてしまうのでしょうか。

膵臓(すいぞう)は、胎生早期に“腹側膵原基”から作られる“腹側膵”が十二指腸を回って“背側膵”に接合することで作られます。腹側膵には胆管・膵管の元になる細胞があり、背側膵と接合したときに胆管と膵管も全て接合・形成されます。この発生の過程で腹側膵に形成異常が起こり、胆管や膵管がうまくくっつかなかった場合に、膵・胆管合流異常症が起こると考えられています。

なお、このような発生過程の異常がなぜ起こるのかについては、2021年現在ではまだ分かっていません。近年、さまざまな推測に基づく研究が進められており、将来的には発生過程で合流異常が起こるメカニズムの詳細が明らかになってくる可能性はあるでしょう。

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  • 埼玉県立小児医療センター 小児外科 科長

    川嶋 寛 先生

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