概要
膵・胆管合流異常とは、本来は十二指腸壁内で合流する胆管と膵管が十二指腸壁の外で合流してしまう生まれつきの形態異常です。
通常であれば、胆汁が流れる胆管と膵液が流れる膵管は十二指腸の壁内で合流し、それぞれの消化液が十二指腸内に排出され、口から摂取した食物の消化を助けます。しかし、膵・胆管合流異常では、胆管と膵管が十二指腸の手前で合流するため胆汁と膵液が逆流し、その結果としてさまざまな症状や病態を引き起こします。
膵・胆管合流異常には、胆管の拡張を伴う“胆管拡張型(先天性胆道拡張症)”と、胆管の拡張を伴わない“胆管非拡張型”があります。それぞれで合併しやすい病気の割合が異なるため、治療法も異なります。
なお、膵・胆管合流異常はあらゆる年齢層にみられますが、特に若年女性に多く、男女比は約1:3とされています。
原因
膵・胆管合流異常が発生するメカニズムはまだ解明されていませんが、胎生4週頃までに形成される腹側膵の形成異常によるものと考えられています。
通常、胆汁が通る胆管と膵液が通る膵管は十二指腸の壁内で合流します。この合流箇所には括約筋という筋肉が存在し、それぞれの消化液が逆流しないよう調整されています。
しかし、膵・胆管合流異常では先天的な形成異常から括約筋の作用が及ばない十二指腸壁の手前で合流するため、管の中を流れる胆汁と膵液が逆流を起こしてしまいます。胆汁が膵管内に逆流すると膵炎を引き起こすことがあるほか、膵液が胆管や胆嚢に逆流すると高頻度に胆道がん(胆管がんや胆嚢がんなど)を発生させることがあるといわれています。
日本国内の2,500人の患者を対象とした調査において、胆管拡張型(先天性胆道拡張症)では約2割、胆管非拡張型では約4割の人が胆道がんを合併しており、通常の胆道がん発症年齢よりも15~20歳ほど若年とされています。
症状
膵・胆管合流異常があるだけでは自覚症状はありません。そのため、超音波検査や、別の病気の精密検査などで偶然に発見されることが多くあります。
合併症が生じた際に症状が現れ、膵炎や胆管炎では発熱、腹痛、嘔吐など、胆道がんでは黄疸(皮膚や白目が黄色くなること)、腹部の腫瘤(こぶ)、灰白色便などがみられることがあります。
膵・胆管合流異常のタイプ別では、胆管拡張型のほうが胆管非拡張型よりも症状が現れることが多いとされています。
検査・診断
画像検査で膵・胆管合流異常の有無を確認することで診断されます。
胆管の拡張は超音波検査や腹部CT検査で分かりますが、膵・胆管合流異常の有無はこれらの検査で確認できないことが多くあります。そのため、精密検査として内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、MR胆管膵管撮影(MRCP)、超音波内視鏡検査(EUS)などが行われる場合があります。また、時に手術中に胆道造影検査を行い診断することもあります。
治療
膵・胆管合流異常の基本的な治療目標は、胆汁と膵液の逆流を防ぐこと、重要な合併症であるがんの発生を予防することです。
胆管拡張型では胆管がんを合併しやすいため、がん化する可能が高い拡張した胆管と胆嚢を可能な限り切除し、そのうえで胆管と小腸を縫合します。これによって胆汁は直接小腸に流れるようになるため、胆汁と膵液が腸以外の場所で混ざることはありません。この手術を肝外胆管切除+肝管空腸吻合といいます。
胆管非拡張型については胆嚢がんを合併しやすいため、腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われますが、肝外胆管切除はせずに経過を見ることが一般的です。
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