まるふぁんしょうこうぐん

マルファン症候群

目次

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概要

マルファン症候群とは、常染色体優性遺伝性の結合織疾患で、身体の骨組みとなる結合組織と呼ばれる部分に先天的な異常があり、全身各種臓器に種々の合併症をきたす病気です。

結合組織は、骨や血管、眼、関節などに存在しており、こうした部位に症状が現れます。

マルファン症候群は、適切な治療介入を行うことで、他の方と比べ遜色ない寿命を全うすることも可能です。

しかしその一方で、自分自身がマルファン症候群であることに気付くことなく、健康障害を引き起こしうる生活スタイルをとっている方も少なからずいると推定されています。その結果、突然死を招くこともあります。

日本にはおよそ2万人の患者さんがいると推定されていますが、マルファン症候群の認知度を高めることは、早期発見・早期治療介入を行うという観点からは、とても大切なことです。

原因

染色体の15q21に存在するFBN1と呼ばれる遺伝子に異常があることが代表的な原因です。FBN1遺伝子に異常があると、結合組織にとって必要不可欠なフィブリリン1と呼ばれるタンパク質に異常が生じます。

フィブリリン1は、身体に強固さと柔軟性を与えるために重要な役割を果たしています。さらにフィブリリン1は、身体の成長や修復を調節するためにも大切なタンパク質です。

フィブリリン1に異常があるマルファン症候群では、身体の骨格に異常をきたし、身体の成長過程も制御できなくなってしまいます。

ご両親どちらかがマルファン症候群であると、お子さんが同様の疾患を発症する可能性は約50%です。

こうした遺伝形式を常染色体優性遺伝と呼びますが、マルファン症候群の患者さんのうち、およそ8割弱が常染色体優性遺伝形式で発症していると考えられています。残りの2割強の患者さんは、FBN1遺伝子などに突然異常が生じることから発生しています。

症状

マルファン症候群の症状は、全身各種臓器にみられます。特に、骨・関節・皮膚、心血管、眼、肺などに症状が生じます。

各種臓器の症状はフィブリリン1の異常により説明することが可能であり、強固さと柔軟性が障害されること、また成長に対しての制限が効かなくなることが鍵となります。

骨・関節・皮膚

骨の成長が正常に制御できなくなり、年齢を重ねるとともに背骨が曲がってきます(側弯症(そくわんしょう))。

さらに骨が過剰に成長する結果、手足や指が長くなり、か細くとても高い身長になります。その他に、胸も通常の形を保てなくなります(漏斗胸(ろうときょう))。

関節や皮膚に対しては、正常な柔軟性が失われることから過剰に関節が柔らかかったり、皮膚に妊娠線のようなものが生じていたりします。こうした症状は、マルファン症候群を疑うきっかけとなる重要なものです。

心血管

マルファン症候群では血管の柔軟性も障害されるため、大動脈に負担がかかり、大動脈解離といった命に関わる合併症を生じます。

大動脈に対する影響は、心臓にも二次的な影響を及ぼし、大動脈瘤の形成から大動脈弁逆流症といった合併症も生じます。また、年齢を経ると、心不全の症状(息切れや疲れなど)が出現するようになります。

眼の中には水晶体と呼ばれるレンズが存在します。マルファン症候群では、水晶体を正常な位置に留めておくことができなくなり、水晶体亜脱臼を生じます。眼の症状に関連して、視力低下や近視を生じます。

肺の組織が突然損傷を受けることで、気胸を発生することがあります。気胸が生じると、突然の胸の痛みが起こり、呼吸困難を伴うようになります。

検査・診断

まず身体的な特徴から疑われます。マルファン症候群では、2010年に改定されたGhent基準に従って全身スコアを評価します。

検査としては、以下が主な検査になります。

  • 心エコー検査(僧帽弁逸脱、大動脈基部拡大)
  • CT検査(全身の大動脈瘤、硬膜拡張)
  • 骨X線検査(側弯、後弯、寛骨臼突出)
  • 眼科的検査(水晶体偏位)
  • 遺伝子検査

マルファン症候群では、FBN1をはじめとしていくつかの原因遺伝子が知られており、遺伝子に異常がないかを確認することもあります。また、臓器障害の程度を定期的に経過観察することも大切です。

治療

マルファン症候群に対しての、根治的な治療方法はありません。各種合併症に対してのアプローチが必要になります。

ただし、症状がなくても適切な時期に適切な処置をすることで、将来の障害に伴うQOL(生活の質)の低下を減らしていくことができます。定期的なフォローを受けていただくことで、そうした疾病管理ができるようになってきた疾患だと考えます。

心血管系については、血圧や心拍数のコントロールのための内服薬(βブロッカーやアンジオテンシン受容体拮抗薬など)が適応になることがあります。また大動脈瘤が進行した場合には、人工血管置換術を行います。

さらに大動脈弁に異常がある場合には、大動脈弁に対してのアプローチが検討されることもあります。特に、大動脈解離は生命にかかわる重大な合併症です。大動脈解離を実際に発症する前に、予防的な治療介入を行うことが大切です。

視力障害については、コンタクトレンズや眼鏡等で対応することが推奨されています。水晶体亜脱臼に対しては、手術的な介入がなされることがあります。重度の側弯、漏斗胸などに対しても同様です。

日常生活で注意すること

マルファン症候群では、日常生活に注意を払うことも大切です。過剰な運動は合併症の進行を促すことがあるため、可能な限り避けることが必要です。

たとえば重量挙げやラグビーなどは、血圧を急激に変動させうるため避けたほうがよい場合もあります。また喫煙も心臓、肺に負荷をかけるため控えることが必要です。

さらに出産に関しても、事前に身体の状況を把握したうえでの慎重な対応が求められます。マルファン症候群の一部は、お子さんに遺伝する可能性もあるため、遺伝カウンセリングが必要となる場合もあります。