概要
弱視とは、視力の正常な発達が妨げられることによって視力が正常よりも低い状態である病気の総称で、子どもの50人に1人程度の割合でみられる病気です。
視力は、生まれてから8~10歳くらいまでの間にさまざまなものを見て刺激を受けることによって徐々に発達していきます。3~6歳で成人と同程度の視力に発達するとされています。しかし、中等度以上の遠視や乱視、左右差のある遠視、斜視(右目と左目の視線が違う場所に向いていること)、先天性白内障や角膜混濁などが原因で、ものを見ることが妨げられると、視覚による刺激を受けることができず弱視に至ります。
視力の成長は8~10歳まで続き、この時期を過ぎると治療に反応しにくく十分に視力が改善されにくいといわれています。そのため、弱視はできるだけ早い段階で発見し、原因に合わせて適切な治療や対処を行うことが大切です。
原因
視力はさまざまなものを目で見て、正しい視覚情報を脳へ伝えるというトレーニングを重ねることによって発達します。そのため、目から入る刺激が少なくなると視力の発達が妨げられるのです。
弱視は原因によって以下の4つに大きく分けられます。
屈折異常弱視
遠視や乱視などの屈折異常(網膜にピントが合わないこと)によって、ものがはっきり見えないために視力が発達せず引き起こされる弱視です。特に遠視によって引き起こされやすいとされています。近視はよほど強くない限り弱視にはならないといわれています。
不同視弱視
屈折異常の左右差が強いことによって片目に引き起こされる弱視です。屈折異常が弱く、よく見えるほうの目の視力は正常に発達しますが、屈折異常が強いほうの目の視力は正常な発達が妨げられ弱視になります。
斜視弱視
左右の目で視線が違う方向に向いている斜視が原因で引き起こされる弱視です。この状態は、片方の目では網膜の中心部でものを見ることができる一方、もう片方の目は斜視のため中心部でものを見ていない状態です。その結果、視力の発達が妨げられ、弱視になります。
形態覚遮断弱視
先天白内障、目や瞼の腫瘍、角膜混濁(角膜のにごり)、長期間の片目の眼帯装用などにより網膜に刺激が届かない状態が続くことで引き起こされる弱視です。
症状
弱視の症状は、その種類によって異なります。屈折異常弱視では両目が、不同視弱視と斜視弱視では片目が弱視になります。両目の弱視の場合、目を細めて見たり近づいて見たりする様子が見られることがありますが、弱視の程度が軽度な場合は特に症状は現れないことが一般的です。片目の弱視では、よいほうの目の視力は正常に発達するため、症状は見られません。斜視については、外見から気付ける場合もありますが、分からないことも多くあります。形態覚遮断弱視が後天的に生じた場合、つまりよかった視力が悪くなった場合には、本人が症状を自覚し訴えることもありますが、それ以外のケースでは子ども自身が症状を自覚することはまれです。
検査・診断
斜視や眼瞼下垂(まぶたが下がり視界が悪くなっている状態)であれば弱視が疑われることもありますが、それ以外のケースでは弱視であることが見逃され、3歳児健診の視覚検査や小学校に入る前に行われる就学時健診で気付かれることが多いようです。
弱視が疑われる場合、視力検査、屈折検査、斜視検査が行われます。さらに、形態覚遮断弱視や視力を低下させ得る目の病気がないか、目の奥まで一通りの診察を行う必要があります。以上の結果から、弱視であるかどうかを総合的に判断し診断されます。
治療
弱視の治療は原因や発症時期によって異なります。屈折異常弱視や不同視弱視では眼鏡で矯正を行い、視力の発達を促すことが大切です。眼鏡で矯正をしても弱視の改善がみられない場合は、視力がよいほうの目をパッチなどで数時間塞いで視力が悪いほうの目でしっかりものを見るように促す遮閉訓練を行うこともあります。斜視弱視の場合も遮蔽訓練を行います。
そのほか、先天眼瞼下垂ではまぶたを上げる手術、先天白内障では水晶体摘出手術が行われることもあります。
対策
視力には発達時期があるため、早期発見・早期治療が重要です。発見が遅れると、十分な治療効果を得られない可能性があります。そのため、弱視を引き起こす原因をできるだけ早い段階で発見して、適切な治療を行うことが大切です。しかし、ほとんどの場合、弱視には自覚症状がないため、健診が大切となります。
従来の3歳健診では視力検査を実施していましたが、弱視の見逃しが多く発生していました。これに対応するため、2021年に日本眼科医会から「3歳児健診における視覚検査マニュアル~屈折検査の導入に向けて~」が発行され、健診での全例屈折検査が推奨されました。その結果、2023年度には全国の自治体の85.7%で屈折検査が導入されています。3歳児健診を必ず受診し、「要精密検査」といわれた場合には、眼科を受診することが大切です。
また、強い先天白内障や、強い片眼性先天眼瞼下垂での場合は、生後1か月前後で治療が必要です。治療が遅れると、強い弱視が残る可能性が高くなります。子どもの目の様子に異常を感じた際には、速やかに医師に相談しましょう。
実績のある医師
周辺で弱視の実績がある医師
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