らんそうけいねんてん

卵巣茎捻転

同義語
卵巣嚢腫茎捻転,卵巣のう腫茎捻転
最終更新日
2023年12月04日
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2023/12/04
更新しました

概要

卵巣茎捻転とは、卵巣と子宮がつながっている部分にねじれが生じることをいいます。

特に、卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)をはじめとする卵巣腫瘍(らんそうしゅよう)で卵巣の大きさが通常よりも大きくなっている場合に起こりやすく、下腹部の痛みなどの症状が現れることがあります。卵巣腫瘍に伴って生じる卵巣茎捻転を“卵巣腫瘍茎捻転”と呼びます。

卵巣とは子宮の両脇に左右1つずつある臓器で、主なはたらきとして、卵子のもととなる“胚細胞”を含み月に1回程度の排卵を行うほか、性ホルモンを作ることが挙げられます。

卵巣は卵巣固有靱帯(らんそうこゆうじんたい)卵巣提索(らんそうていさく)と呼ばれる靱帯によって固定されており、これらの靱帯を軸としてねじれることを“卵巣茎捻転”といいます。何らかの原因でねじれて下腹部痛が生じても、すぐに元に戻ることもあります。しかし、ねじれたままになり、卵巣への血流が滞って壊死(えし)を引き起こすと卵巣が暗い紫色に変色してしまうほか、激痛が生じます。

卵巣は通常、2~3cm程度の小さな臓器ですが、腫瘍が生じると大きいもので30cm以上まで膨れ上がることがあります。卵巣嚢腫の場合、一般的に卵巣が5~6cmまで大きくなると卵巣茎捻転を引き起こしやすくなるといわれています。卵巣嚢腫による卵巣茎捻転のことを“卵巣嚢腫茎捻転”と呼びます。

原因

卵巣茎捻転は正常な卵巣には起こりにくく、主に卵巣嚢腫をはじめとする卵巣腫瘍などによって卵巣が大きくなっている人によくみられます。大きい卵巣嚢腫のある人では、運動や性行為をきっかけに卵巣茎捻転が生じることもありますが、特にきっかけなく発症することもあります。

そのほか、妊娠や排卵などに伴って生じるケースもあります。

症状

卵巣茎捻転が生じると、下腹部に痛みが生じることが一般的です。ねじれが一時的なものであれば、痛みもねじれの解消とともになくなります。しかし、何度もねじれたり元に戻ったりすることで、痛みが繰り返される可能性はあります。

一方で、完全にねじれて元に戻らなくなってしまうと卵巣に血液が流れなくなり、壊死が生じることで下腹部の強い痛みや吐き気・嘔吐などが生じ、救急車を呼ぶほど強い症状が現れることも少なくありません。

検査・診断

卵巣茎捻転が疑われる場合、症状などの臨床所見を確認したうえで、腟から装置を挿入し超音波検査を行うことが一般的です。超音波検査で卵巣が大きくなっていることが確認できれば卵巣茎捻転の可能性が高く、手術で実際の卵巣の状態を見て確定診断がつきます。

また、カラードプラ超音波検査*を行えば卵巣への血流も調べることもでき、これが減少している場合には卵巣茎捻転の疑いが強くなります。同じように下腹部に痛みを生じる病気には虫垂炎異所性妊娠骨盤内炎症性疾患、卵管腫瘍・卵巣腫瘍などさまざまな種類が考えられるため、診断の際はこれらの病気と見分けることが大切です。

*カラードプラ超音波検査:プローブと呼ばれる装置を調べたい部位の皮膚にあて、超音波を流して血流の方向や速さを調べる検査。

治療

卵巣茎捻転が生じた場合、開腹手術や腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)で治療します。ねじれを解除し、卵巣卵管を切除したり卵巣嚢腫だけ摘出したりします。

腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術とは、お腹に小さな穴を複数箇所開け、内部を炭酸ガスで膨らませたうえで穴から腹腔鏡や医療器具を挿入して内部の様子を観察しながら行う手術方法です。開腹手術よりも傷が小さく、術後の回復が早くなることが期待されます。

卵巣温存手術

未婚女性や今後妊娠を検討している患者を中心に行われる手術です。主に腹腔鏡下手術で行われることが一般的で、卵巣固有靱帯のねじれを元に戻すだけで、卵巣や卵管を摘出しないことが特徴です。

また、卵巣嚢腫などの卵巣腫瘍によって卵巣が大きくなっている場合には、腫瘍部分を摘出し、正常な卵巣部分だけを残す“核出術”という治療を行います。

予防

卵巣茎捻転そのものの予防は困難ですが、卵巣茎捻転の原因となりやすい卵巣嚢腫などの卵巣腫瘍をあらかじめ見つけることができれば、それに対する治療を受けることは可能です。

卵巣はどの年齢の人でも腫瘍が生じる可能性のある臓器ですが、ほとんど症状がないことが一般的で、かなり大きくなるまで気が付かないという場合もあります。健康診断や婦人科のがん検診を定期的に受診するなど、早期発見のためにできることをしておくとよいでしょう。

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