概要
卵巣茎捻転とは、卵巣嚢腫(卵巣に発生する腫瘍性病変)に合併する救急疾患のひとつになります。卵巣は一般的に小指先から親指先程度の大きさ(2~3cm)で、骨盤内の左右に存在していますが、骨盤内ではしっかりと固定されているわけではなく、体の動きや向きにあわせてプラプラと動いています。通常は、卵巣が動いてもすぐにもとの位置に戻りますし、卵巣自身は軽いため、動くことで周囲の血管や組織を巻きこんだりねじったりすることはありません。ところが、卵巣嚢腫によって卵巣が腫れた状態では、卵巣自身の重さが増しているため、卵巣が動いた際に周囲の血管や組織を巻きこむようにして捻じれてしまい、そのまま元の位置に戻らないことがあります。こうなってしまうと、卵巣周囲の血流が悪くなり、激しい痛みが生じるとともに、その部位の組織が徐々に壊死してしまいます。完全に壊死に至ってしまうと、治療(手術)をしても卵巣を含めた壊死組織の機能は回復しないため、早急な診断と治療が必要な救急疾患といえます。 卵巣茎捻転は、卵巣嚢腫を有する女性であれば誰にでも発生する可能性がありますが、卵巣嚢腫の種類や大きさなどによって発生リスクは異なるといわれています。
原因
卵巣嚢腫が根本的な原因となります。ただし、卵巣嚢腫の種類や大きさなどによって発生リスクは異なるといわれており、一般的に大きさが6cm以上になると、その重みによりリスクが高まるとされています。ただ、それより小さい卵巣嚢腫でも卵巣茎捻転が発生することはあります。また、もっとも頻度の高い卵巣嚢腫の種類は、成熟嚢胞性奇形腫というもので、若年女性に比較的多い良性腫瘍になります。一方で、子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)では卵巣周囲に癒着(周囲の組織とくっついてしまうこと)が生じていることが多く、このために卵巣茎捻転は比較的起こりにくいと考えられます。 卵巣嚢腫は体動にあわせて動くことが多いと考えられていますが、具体的にどの程度激しい運動で、どんな体の動かし方が卵巣茎捻転を生じやすいかは分かっていません。このため、卵巣嚢腫があるとわかっている女性に対して、日常生活での運動制限を指示することは一般的にありません。
症状
卵巣茎捻転、つまり卵巣嚢腫が捻じれて周囲の組織の血流が遮断されると、その部位に激しい痛みが生じます。一般的に卵巣茎捻転が起こるのは卵巣嚢腫がある側の卵巣であり、卵巣嚢腫が指摘されている側の下腹部に突然激しい痛みが生じた場合には卵巣茎捻転を疑わなくてはなりません。また、痛みにともなって吐き気や嘔吐、下痢などの消化器症状をともなうこともあります。通常、性器出血をともなうことはありません。 なお、卵巣茎捻転が起こってからある程度(数時間~1日程度)の時間が経過すると、発生した部位での壊死が完全に完成してしまう場合があります。こうなると、逆に痛みがなくなってしまうケースがみられます。しかし、この場合には自然に治ったわけではなく、完全に壊死し、卵巣機能の回復は望めない段階となっていることが多いと考えられます。
検査・診断
通常、激しい下腹痛を自覚して病院を受診することが多いため、まずは意識状態や血圧、脈拍数など身体の基本的な状態を把握します。次に診察に移りますが、婦人科診察では通常内診を最初に行います。一般的には痛みのある側の子宮や卵巣を詳しく観察するために超音波検査を実施し、腫れている卵巣嚢腫周辺に最も痛みが強いかどうかを確認します。ただし、超音波検査だけでは実際に卵巣嚢腫が捻じれているかどうかを判断することは困難なことがあり、その場合にはCT検査やMRI検査などの精密画像検査を行うこともあります。 もし卵巣茎捻転が強く疑われた場合は、一般的に緊急手術が必要となるため、術前検査としての血液検査、心電図、レントゲンなどを行うことになります。なお、病院によって術前検査の内容は多少の違いがありますのでご確認ください。
治療
卵巣茎捻転を治療するには、開腹手術が必要となります。開腹し、直接卵巣嚢腫の捻じれや周囲の血流遮断の程度を確認します。卵巣茎捻転が発生してまだ間もなく、血流の状態があまり悪くなければ、卵巣嚢腫の捻じれを元に戻して卵巣機能の回復が可能かを判断します。可能と判断した場合、正常な卵巣部分を残し、卵巣茎捻転の原因となった卵巣嚢腫の部分だけを摘出する手術を通常行います(卵巣嚢腫摘出術)。一方で、捻じれを元に戻しても卵巣機能の回復が望めない場合には、壊死した組織を体内に残しておくことで全身への悪影響を及ぼすことを考慮し、壊死した卵巣、卵管、卵巣嚢腫をまとめて摘出する手術を通常行います(付属器摘出術)。一般的に、これらの判断は手術中に行う必要があるため、手術が始まる前によく主治医の説明を聞いておきましょう。 なお、近年では腹腔鏡手術(お腹の中を対象とした内視鏡手術)を緊急時でも実施できる医療機関も増えてきており、そのときの状況によっては腹腔鏡手術が可能な場合もありますが、どこの医療機関でも可能なわけではなく、また緊急時には開腹手術の方が望ましいと判断される場合もありますので、こちらも主治医にきちんと確認するようにしましょう。
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