お腹が痛いとき、お腹のどの辺りが痛いかによって、原因として考えられる病気は異なります。ここでは腹部を七つのブロックに分けて、考えられる病気をご紹介します。
ストレスや食生活の乱れなどによる胃酸の過剰分泌が原因で、胃の粘膜が荒れる病気です。
急性胃炎の代表的な症状は、上部腹痛(みぞおち周辺の痛み)、吐き気や嘔吐、食欲不振、腹部膨満(腹部の張り)などがあります。胃粘膜の炎症がひどくなって出血を起こすと、黒色便(便が黒くなる)が出ることもあります。
急性胃炎の方の胃粘膜の状態を内視鏡で観察すると、びらん(ただれ)やむくみ、発赤(赤み)が見られます。
食べ物を消化する胃酸やペプシンと呼ばれる酵素によって、胃や十二指腸の粘膜が傷つき潰瘍が形成される病気のことです。
みぞおちの強い痛みは胃潰瘍・十二指腸潰瘍によく見られる代表的な症状のひとつです。ほかにも、みぞおち周辺の不快感、吐き気や嘔吐などを経験する方もいます。また、ひどくなると血管が傷ついて大量出血をきたし、血を吐いたり便が黒くなったりすることもあります。
お腹が痛くなるタイミングとして、潰瘍が胃の上部にある場合は食後、幽門(胃と十二指腸のつなぎ目)や十二指腸にある場合は空腹時(食前)に感じるといわれています。
虫垂と呼ばれる腸の一部分が炎症を起こす病気です。“盲腸”と呼ばれることもあります。
急性虫垂炎による腹痛は、最初はみぞおちあたりに生じますが、次第に右下腹部へと移動するのが特徴です。ほかにも、吐き気や食欲不振、微熱も特徴的な症状といえるでしょう。
心筋梗塞とは、心臓の壁に張り巡らされるように走行する冠動脈と呼ばれる血管が詰まることにより、心臓の筋肉に充分な血液が行き渡らなくなって最終的に壊死する病気です。
心筋梗塞の症状というと“締め付けられるような胸の痛み”や“胸の圧迫感”がありますが、痛みが広がってみぞおち、顎、左肩、背中などに痛みを感じる方もいます。
心筋梗塞では約半数の方に前駆症状(前触れ)があるといわれており、胸の痛みのほか、呼吸困難、息切れ、冷や汗、吐き気、嘔吐などの症状が生じます。
胆嚢から分泌される胆汁(消化を助ける液体)が何かしらの原因によって固形化(もしくは砂状、液状化)したものが胆石です。胆石が胆嚢や胆汁の通り道である胆管にできた状態のことを胆石症といいます。
胆石が肝臓内の胆管にできると胆管結石のような症状が現れます。肝内結石は激しい腹痛や発熱などが起こることもあり、肝臓の機能が悪化すると黄疸が生じます。また、長期化した場合はがんの原因になることもあります。
胆嚢や胆管が胆石や腫瘍などによって、胆汁の通り道が塞がれてしまうことがあります。ここに雑菌が侵入して起こる炎症を胆嚢炎や胆管炎といいます。
急性胆嚢炎では、上部腹痛や右肩の痛み、吐き気や嘔吐、発熱、ときに黄疸が生じます。
急性胆管炎の場合は、右側肋骨周辺を中心とする腹痛や黄疸が主な症状で、重症化すると低血圧や錯乱状態などの精神症状が現れます。
膵臓が、自らが分泌する膵液という酵素によって消化されることによって起こります。急性膵炎は激しい痛みが特徴です。痛みには個人差がありますが、痛さのあまりその場にうずくまってしまう方もいます。
尿を作る腎臓から膀胱につながる尿の通り道のことを尿管といいます。尿管結石とは、この尿管に結石が詰まることです。
尿管結石の症状は、結石が詰まっている側の脇腹や、背中から下腹部にかけて生じる激しい痛み、血尿、吐き気などです。
生活習慣病がある、男性、30~50代の方は、尿管結石のリスクが高いといわれています。
若い女性の場合、卵巣出血の可能性があります。卵巣が成熟した卵子を排出する際、表面の部分に傷がつきます。傷の量はごくわずかなため、通常であれば出血しないか、ごく少量の出血で済むのですが、何かしらの原因によって出血量が多くなったり、腹痛を伴ったりする場合があります。
卵巣出血の症状は腹痛と出血です。特に腹痛は急激な下腹部痛であることが多く、出血がひどい方の場合は貧血やショック症状を起こすこともあります。
受精卵が子宮内膜以外の場所に着床して成立した妊娠のことを、異所性妊娠(子宮外妊娠)といいます。
現在は検査機器の精度が向上したこともあり、異所性妊娠は初期の段階で発見されるようになりましたが、受診の遅れなどによって発見されるのが遅くなり、受精卵の成長によって卵管が圧迫され破裂すると、腹痛や大出血を起こす可能性もあります。
子宮内部以外に子宮内膜の組織が発生する病気です。周辺の組織と癒着を生じるため、下腹部に慢性的な痛みを引き起こします。また、月経時に痛みが強くなるのも特徴のひとつです。
30~34歳頃に発症することが多く、不妊の原因になることもあります。
便秘は腸の運動異常や水分不足が原因です。便秘の定義はさまざまですが、3日以上便が出ていない状態のほか、毎日便が出ていても残便感がある状態、便の出る間隔が不規則な状態、出る便の水分量が少なく硬い状態なども便秘の症状といわれています。
便秘が続くと腹部の張りや不快感などによって、精神的、身体的にも悪影響が出ます。
腹膜に炎症が生じる病気です。お腹全体に非常に強い痛みが生じ、歩いたりすることでお腹に刺激が加わると痛みが増すのが特徴です。また、お腹は全体的に板のように固くなり、押すと跳ね返すように無意識のうちに力が入るようになります。
治療が遅れると敗血症などに進行して死に至る危険もあります。原因は多々ありますが、虫垂炎や胆管炎などお腹に炎症が起きる病気や、がん、消化管穿孔(穴が開く)などが挙げられます。
以上のように、お腹の痛みにはさまざまな病気が考えられます。痛みが引かないときや、激痛が生じているときは、早めに病院を受診することを検討しましょう。
横田 修一 先生の所属医療機関
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