インタビュー

求められる心臓リハビリテーションの普及

求められる心臓リハビリテーションの普及
後藤 葉一 先生

国立循環器病研究センター 循環器病リハビリテーション部 部長 (心臓血管内科併任)

後藤 葉一 先生

この記事の最終更新は2016年03月31日です。

再発予防に効果があるにもかかわらず、心臓リハビリテーションはまだ普及の途上にあります。施設基準の要件緩和、地域連携パスの診療報酬点数化など普及を妨げる状況の早急な改善が望まれます。ここでは国立循環器病研究センター循環器病リハビリテーション部・心臓血管内科部長後藤葉一先生に心臓リハビリテーションの今後のあり方についてお伺いしました。

2009年に実施した「循環器専門医研修施設における心臓リハビリテーション実施率に関する全国実態調査」では、カテーテル治療は96%の病院で行われているにもかかわらず、外来通院型の心臓リハビリテーションの受診はわずか21%にとどまっていることが明らかになりました。

施設にとってはカテーテル治療よりもはるかに容易で、かつ急性心筋梗塞ガイドラインではClassⅠ(強い推奨)でもある心臓リハビリテーションの実施率がこれほど低いことは問題です。

一方、患者さんからは心臓リハビリに参加しない理由として、「外来心臓リハビリテーションを実施している病院が近くにない」「担当医師・看護師から外来リハビリテーションを勧められることがなかった」といった声が挙がってきます。施設の中でも手術を担当する外科医とリハビリテーションを担当する医師が異なっているために、そうしたことが生じがちです。また、医学部教育のカリキュラムの中に心臓リハビリテーションが入っていないことも大きな問題点です。もちろん患者さんの側にも「参加したくない」という方も少なからずおられます。

普及が進まない要因の一つに施設基準の問題があります。「循環器科または心臓血管外科の常勤医師が勤務していること」という要件を満たさないと「心臓リハビリテーション」を実施できないようになっているのです。急性期の死亡率がかなり高かったころ、万一の時に集中治療室に運び込めるようにという考え方の名残といえるでしょう。ですから厚生労働省に対して、常勤医師ではなく、「心臓リハビリテーション実施時間帯にのみ、循環器科医師が勤務していればよい(非常勤医師)」へ要件の緩和を要望しているところです。幸いこの要望は、平成28年度の診療報酬改定で認められることになったので、今後心臓リハビリ実施施設が増えることが期待されます。

また、急性心筋梗塞を治療する急性期病院から退院後に「外来心臓リハビリテーション施設」へと紹介し、日常の診療は「かかりつけ医」が診るというように、それぞれの施設が得意分野を生かして連携し情報を共有しあう「地域連携パス」を実施している率は全国でも10%で、脳卒中治療施設の57%と比べて格段に低いことも明らかになっています。これは、脳卒中の「地域連携パス」については診療報酬点数が加点されるのに対し、心筋梗塞の「地域連携パス」では加点されないからです。これについても点数が加点されるように要望しているところです。

心臓リハビリテーションの新しい考え方として、心疾患患者の二極分化に対応したアプローチを行っていくべきだと考えています。一つは「低リスク患者」(若年・心機能良好・残存狭窄なし)に対しては2次予防を重視し、禁煙・メタボ是正・在宅運動などを外来リハビリで指導していくことが柱になります。一方、「高リスク患者」(高齢・心不全・合併疾患保有)に対しては死亡率低下よりも再入院の防止とQOLの向上を目標とし、多職種で疾病管理を行う。このような外来心臓リハビリテーションプログラムのシステムを構築していきたいと考えています。

 

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