インタビュー

心筋梗塞にはカテーテルかバイパス手術か 手術術式選択のガイドライン

心筋梗塞にはカテーテルかバイパス手術か 手術術式選択のガイドライン
南雲 正士 先生

池上みなみ内科クリニック 院長、川崎市立川崎病院 心臓血管外科 元担当部長、医療法人社団健育会...

南雲 正士 先生

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この記事の最終更新は2015年09月08日です。

心臓の筋肉が死んでしまう心筋梗塞。心筋梗塞の治療は大きく分けてカテーテル治療とバイパス手術がありますが、命に関わる心筋梗塞が発症した時、治療方法の選択はどのように行うのでしょうか。心臓病の専門病院・石川島記念病院の院長の南雲正士先生にうかがいました。

心筋梗塞の中でもST上昇型の緊急性の高いものについては、基本的に「ST上昇型心筋梗塞は時間との勝負。心筋梗塞の治療ガイドライン」の記事で示したガイドラインに従って、時間優先で行うべきです。つまり、病院到着から90分以内に治療を済ませることが望ましいので、素早く行うことができるPCI(カテーテル治療)が基本になります。

ただし、心筋梗塞の中にはカテーテル治療では非常に難しい場合があります。それは患部が心臓の血管の中でもとりわけ急所の部分、左前下行枝(LAD)の分岐部だった場合などです。患部がこうした部分の場合や、病変のある冠動脈が何本もある場合、カテーテル治療では予後が悪い(再発や生存できる期間が短いとか追加治療が必要など)のです。そのため、こうした場合は、ST上昇型の心筋梗塞であっても、必要最低限の処置を行って血液の循環を補助することで命をつないで、緊急でバイパス手術を行うことがあります。

またST上昇型の心筋梗塞であっても、緊急性がそこまで高くない場合や、非ST上昇型心筋梗塞の場合は、カテーテル治療だけでなく、バイパス手術も選択肢に入ってきます。

カテーテル治療とバイパス手術、どちらを選択すべきかという点についても、現在はガイドラインが定められています。原則としてはこのガイドラインにのっとりながら、患者さんの状態を考慮しながら判断していくことになります。

クラスⅠ:手技・治療が有効,有用であるというエビデンスがあるか,あるいは見解が広く一致している.
クラスⅡ:手技・治療が有効,有用であるというエビデンスがあるか,あるいは見解が一致していない.
Ⅱa:エビデンス,見解から有用,有効である可能性が高い.
Ⅱb:エビデンス,見解から有用性,有効性がそれほど確立されていない.
クラスⅢ:手技・治療が有効,有用でなく,時に有害であるとのエビデンスがあるか,あるいはそのような否定的見解が広く一致している.

出典:「虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン(2011年改訂版)」 p.11

心筋梗塞には1枝病変、2枝病変、3枝病変がありますが、たとえば3枝病変のバイパスについてはガイドライン上、PCI(カテーテル治療)とCABG(バイパス手術)を比べるとバイパス手術のほうが有効であるエビデンスが高い(科学的な根拠がある)ということになります。だからこの場合、バイパス手術を選択することになります。

ガイドライン上、左前下行枝(LAD)の病変があるかないかで治療方針が変わってくるのは、心臓の血管(冠動脈)のうち、左前下行枝がとりわけ重要であるからです。冠動脈は大きく左右の2つに分かれていて、右が1本、左が2本、合計3本で3系統に分かれています。3系統というのは右の冠状動脈、左の冠状動脈の前下行枝、回旋枝の3枝ですが、じつは心臓全体の血液の6割は左前下行枝が還流しているのです。

このため冠動脈の中でもとりわけ左前下行枝(LAD)が最も大切です。極端なことを言えば、左前下行枝だけが機能していれば心臓の機能の半分くらいは果たすことができるので、右冠状動脈も左回旋枝も心筋梗塞になって心筋が壊死してしまっていても、人間は生きていられるのです。

だから左前下行枝(LAD)が心臓のクリティカルゾーンであり、とりわけ入口部だったら血管の根本なので、急所です。基本的に、治療方針は左前下行枝(LAD)に病変があるかどうかで大きく変わってきます。

病変のある場所がクリティカルであればあるほど、また病変のある箇所が多ければ多いほどカテーテル治療で対処することは難しく、バイパス手術を適用したほうがよい、といえるでしょう。

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    東京都立多摩総合医療センター 副院長(前循環器内科部長)

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