インタビュー

ST上昇型心筋梗塞は時間との勝負。心筋梗塞の治療ガイドライン

ST上昇型心筋梗塞は時間との勝負。心筋梗塞の治療ガイドライン
南雲 正士 先生

池上みなみ内科クリニック 院長、川崎市立川崎病院 心臓血管外科 元担当部長、医療法人社団健育会...

南雲 正士 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

この記事の最終更新は2015年09月07日です。

心臓の筋肉が死んでしまう心筋梗塞。その症状があらわれた時、治療は一刻を争います。どんな時にどんな治療が選択されるのか、心臓病の専門病院・石川島記念病院の院長の南雲正士先生にうかがいました。

一般に「心筋梗塞」という病名はよく知られていますが、その治療方法はST上昇型と非ST上昇型(心電図波形のST部分が上昇しているかどうか)で大きく分かれます。

心筋梗塞よりもより広い概念として、急性冠症候群というものがあります。急性冠症候群は、心筋梗塞や狭心症など、心臓に酸素や栄養を送っている冠動脈の血流障害によって、心臓に酸素が足りなくなって、傷んだり心筋細胞が壊死してしまう病気全体のことを指します。

急性冠症候群は貫璧性の、つまり心臓の筋肉の壁が内側から外側まで全て死んでしまっているST上昇型の急性心筋梗塞(狭義の、いわゆる心筋梗塞)と、壁の内側のみが死んでいる非ST上昇型の心筋梗塞(心内膜下心筋梗塞)、そして不安定狭心症に分かれます。ひとくちに心筋梗塞といっても「ST上昇型」かどうかで治療の戦略は異なるのです。

心筋梗塞の治療には大きく分けて、薬物治療、カテーテル治療(PCI)、バイパス手術(CABG)があります。治療方法の選択については、日本のガイドラインに則って行うことが大原則となっています。

特に、心臓の内側から外側まで、心臓筋肉の壁が全層で死んでしまうST上昇型の(貫壁性の)心筋梗塞の場合は、「発症からの時間」によって治療方法のガイドラインが決まっています。ST上昇型の心筋梗塞は治療までの時間が命なので、心筋のダメージを小さくして、いかに早く冠血流を再開することができるかが、機能回復のために最も重要なのです。

ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版) では、狭義の心筋梗塞ST上昇型の心筋梗塞の場合、とにかく早く病院へ行き、発症から原則12時間以内(できれば3時間以内)、そして病院に到着してから1時間半以内に治療をすますことが一番よいと示されています。

ガイドライン上は、病院到着から90分以内に行えるのであればPCI(カテーテル治療)でもCABG(バイパス手術)でもどちらでもよいと記載されています。バイパス手術は、準備に時間がかかるため、90分以内に済ませるということは非常に難しいのが現状です。このため現実の医療現場では、ST上昇型の心筋梗塞の場合は、その原因となった病変に対して、すみやかにカテーテルの治療を行うというのが、現在のスタンダードになっています。

    関連記事

  • もっと見る

    関連の医療相談が25件あります

    ※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

    「心筋梗塞」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください