疾患啓発(スポンサード)

心筋梗塞とは? 発症する前に早めの対策が重要――狭心症との違いやリハビリテーションについて

心筋梗塞とは? 発症する前に早めの対策が重要――狭心症との違いやリハビリテーションについて
本江 純子 先生

菊名記念病院 循環器センター センター長

本江 純子 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

日本人の死亡原因で2番目に多い心筋梗塞(しんきんこうそく)。発症すると心臓の筋肉が時間とともに壊死(えし)して命に関わる恐れがあるため、できるだけ早く治療を受け、再発予防や体力回復に向けたリハビリテーションにも取り組むことが大切です。

今回は、心筋梗塞の概要や症状、検査、治療、リハビリテーションなどについて、菊名記念病院 循環器センターセンター長 本江 純子(ほんえ じゅんこ)先生にお話を伺いました。

心筋梗塞とは、心臓に酸素や栄養を届ける冠動脈が血栓(血の塊)などで完全に詰まり、心臓に血液が流れなくなって、心臓の筋肉が壊死を起こした状態のことを指します。

PIXTA
提供:PIXTA

狭心症――冠動脈が詰まりかけている状態

前のページでも述べたように、狭心症が悪化すると心筋梗塞に至ることがあります。狭心症は、冠動脈が狭くなることで心臓に供給される血液が不足し、胸の痛みや息苦しさといった症状が引き起こされる病気です。冠動脈は狭くなっていても完全に詰まっているわけではなく、ある程度血液は流れています。

心筋梗塞――冠動脈が詰まった状態

心筋梗塞は、冠動脈が完全に詰まっており、命に関わることのある病気です。心筋の一部が壊死すると心臓にダメージが残り、心臓のはたらきが低下するため、心不全などの合併症が生じることがあります。また、心臓に血液が供給されなくなることによって致死性不整脈(緊急の治療を必要とする危険性の高い不整脈)などが発生して突然死を招く恐れもあり、迅速に治療を受けることが重要となります。

心筋梗塞は基本的に、動脈硬化(血管の壁にコレステロールが付着する状態)が進行して引き起こされる病気です。冠動脈が徐々に狭くなって最終的に詰まるというケースもありますが、多くの場合、冠動脈がある程度まで狭くなった段階で急に血栓が生じ、血管を塞ぐことによって発症すると考えられています。

動脈硬化により起こる狭心症では、血液中の余分な脂質の蓄積によりプラークという塊ができ、徐々に血管の内側が狭くなっていきます。こうして冠動脈の動脈硬化が進み75%以上狭くなると症状が出てきますが、半分程度の詰まり具合では胸痛などの症状はほとんど出ません。しかし、プラークの表面に傷がつくなど何らかのきっかけで動脈硬化のプラークが破綻すると血栓が作られ(プラーク破綻)、血管内部を塞いで完全に詰まってしまうことがあります。このようにして、何の前触れもなく突然心筋梗塞に至る例は多くみられます。

狭心症が悪化して心筋梗塞が起こることがあるため、狭心症になりやすい方は心筋梗塞にもなりやすいといえるでしょう。狭心症になりやすい方の特徴としては、動脈硬化が進みやすい条件である糖尿病の方、高血圧症の方、コレステロールの数値が高い方(脂質異常症)、尿酸値が高い方、喫煙者、ストレスが多い方、男性、高齢の方などが挙げられます。前のページでも述べたように、生活習慣の見直しをはじめとした狭心症の治療に取り組むことが大事です。

また心筋梗塞は、夏場には水分が不足することで血液が固まって血管が詰まるために発症することがあります。冬場には寒暖差による血圧の急激な変動で心臓の負担が増えたり、年末などで忙しく身体に無理がかかったりすることでも発症しやすい傾向があります。1週間のうちでは月曜日午前中の発症が多く、大きな震災後に発症数が増えるため、ストレスと関連しているとも考えられます。

心筋梗塞の症状として、胸やみぞおちの痛みや圧迫感、息苦しさ、胸骨の裏側が締め付けられるような感覚などが挙げられます。これらの症状は狭心症でも起こることがありますが、心筋梗塞の場合は一般的に次のような点が特徴となります。

  • 胸の痛みなどの症状の程度が強い
  • 冷や汗や顔面蒼白を伴う
  • 症状が30分以上続く
  • 症状が短時間で治まり、繰り返す

また、糖尿病の患者さんの場合は痛みを感じる神経が鈍くなっていることがあるため、痛みは感じないものの、やけに息が上がるというケースもあります。

症状から心筋梗塞が疑われる場合は、すぐに心電図検査を行います。心筋梗塞であれば心電図検査で診断がつくことがほとんどですが、補助検査として血液検査も行うことが一般的です。

ただし、心筋梗塞の場合は血管が完全に詰まって酸素の供給が不足し、その状態が長く続くと心筋が完全に壊死してしまいます。できるだけ早く治療を開始して血液の流れを再開させ、心筋のダメージを最小限に抑える必要があるため、血液検査の結果を待っている余裕はありません。そのため、症状や心電図検査で心筋梗塞の診断がつけばすぐに治療の準備を始めます。

さらに、治療にあたってどの血管がどの程度詰まっているのかを調べるために、カテーテル検査を行います。この検査では、カテーテルという細い管を心臓まで入れて造影剤を流し、血管の状態を確認します。

心筋梗塞では、カテーテル治療を行うことが一般的です。カテーテル治療は、カテーテル検査と同じようにカテーテルを心臓まで通して、バルーン(風船)やステント(金属の筒)を用いて詰まった血管を広げる治療です。発症から6時間以内に血流が再開できれば、心筋が完全に壊死するのを防げる可能性があります。そのため、6時間以内にできるだけ早く治療を行うことで、後遺症の軽減が期待できます。

また、治療後には血液が固まるのを抑える薬の服用が必要となります。

当院では、心筋梗塞を含めた心臓病の再発予防や、治療後の見通しの改善、生活の質(QOL)の向上などを目的に、心臓リハビリテーションを実施しています。

PIXTA
提供:PIXTA

心筋梗塞の再発予防に関しては、危険因子をコントロールするための指導を行います。禁煙、塩分制限をはじめとした食生活の改善、心臓に関わる持病に対する服薬などが挙げられます。高血圧症糖尿病といった生活習慣病は心筋梗塞のリスクを高めるため、血圧やコレステロール値をコントロールすることがとても大事です。

また、早く日常生活に適応できるよう、必要に応じて運動も取り入れていきます。心筋梗塞を発症した場合、以前は長期間の入院と安静が必要とされていましたが、長期間寝たきりでいると身体の機能や筋力がどんどん落ちてしまうため、心臓のダメージに気を遣いながらも筋力を維持していく必要があります。

もちろん、患者さんによって心臓のダメージの程度や、機能の回復度合いが異なるため、状態によって適切な運動メニューを選択します。そのため、まずは負荷試験という検査を行い、適切な運動量を見極めながら実施していきます。こちらは医師よりも作業療法士や理学療法士といったスタッフがメインで関わることが多いです。また、退院後も引き続き生活習慣に注意し、食事療法や運動療法をできる範囲で続けていただきます。

心筋梗塞の予防や早期発見のためには、定期的に健康診断を受け、少しでも異常があった場合は早めに受診することが大切です。特に血圧や血糖値、コレステロールについて指摘があった場合は、まずはかかりつけ医に早めに相談しましょう。必要に応じて薬による治療が開始されれば、狭心症や心筋梗塞の予防にもつながります。また、胸の痛みや苦しさといった気になる症状がある場合も、我慢せずに受診することを検討してください。

受診について相談する
  • 菊名記念病院 循環器センター センター長

    本江 純子 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    「心筋梗塞」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。

    なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。