概要

何らかの原因によって腎臓に炎症が起こることを腎炎といいます。炎症が起こっている場所によって腎盂腎炎(じんうじんえん)、糸球体腎炎、間質性腎炎とよびます。

腎盂は、腎臓と尿管をつなぐ部分を指します。糸球体(しきゅうたい)は、1つの腎臓に約100万個存在し、腎臓に流れ込んだ血液を濾過(ろか)して体に不要な老廃物を排出しています。尿細管は、糸球体で濾過された尿から体に必要な水分やブドウ糖やアミノ酸、ナトリウム、カリウム、リンなどを再吸収する重要な役割があります。糸球体や尿細管を除いた腎組織のことを間質(かんしつ)とよびます。

また、腎盂腎炎、糸球体腎炎、間質性腎炎は、それぞれ発症の仕方や炎症が続く期間によって急性か慢性かに分けられます。一般的に、短い期間で発症するものを急性、長い期間症状が続くものを慢性と考えます。たとえば、急性腎盂腎炎や急性糸球体腎炎など、急性の中には治る病気も含まれています。ただし、急性の病気が慢性の病気へと移行したりすることもあるので注意が必要です。

種類

腎炎を部位別と時間別に分類すると以下のようになります。

部位

腎盂腎炎

腎臓の中で、腎臓と尿管をつなぐ部分を腎盂とよびますが、本来は菌が存在しないと考えられています。しかし、尿道から細菌が入ってきて、尿管を通って腎盂まで達すると腎盂腎炎を引き起こします。腎盂腎炎は、細菌が血液中に入って全身に広がる敗血症(はいけつしょう)を起こすことがあり、命に関わる可能性もある病気です。

糸球体腎炎

腎臓に流れてきた血液を濾過し、体にとって不要な老廃物を排出する役割のある糸球体に炎症が起きる病気を糸球体腎炎とよびます。糸球体腎炎は、病気の主体が腎臓そのものにあると考えられる場合には原発性、何らかの全身の病気の存在によって引き起こされている場合には続発性と分類されます。原発性の糸球体腎炎の原因は分からないことも多いですが、何らかの免疫の異常が関わっているのではないかといわれています。原発性の糸球体腎炎には、IgA腎症や膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、微小変化型ネフローゼ症候群などが含まれます。続発性の糸球体腎炎は、関節リウマチ全身性エリテマトーデスのような膠原病(こうげんびょう)や血管炎、クローン病のような炎症性腸疾患、悪性腫瘍(しゅよう)などによって起こります。

間質性腎炎

糸球体や尿細管を除いた腎組織のことを間質とよび、間質に炎症が起きる病気を間質性腎炎とよびます。薬の副作用によるものが多いといわれていますが、サルコイドーシスシェーグレン症候群IgG4関連疾患など、自己免疫の異常によって起こることもあります。

時間

急性

急性の腎臓の病気は、症状が急に出て、時間や日という短い期間で悪化します。たとえば、急性糸球体腎炎では、数日間で腎機能が悪くなり、尿がまったく出なくなることもあります。また、症状が急激に進行し、命の危険を伴うような合併症を起こす腎炎もあり、速やかな治療介入が望まれます。

慢性

慢性の腎臓の病気は、数年、数十年など長い期間をかけてゆっくり進行します。自覚症状が出ないことも多く、症状が出たときには腎臓の機能がほとんど末期の状態まで低下している場合もあります。慢性の腎炎の早期発見のためには、定期的な健康診断で尿検査や血液検査をすることが大切です。慢性の腎炎は、自分自身の腎臓では本来の機能を果たせない慢性腎臓病へ移行することも多いです。

原因

腎盂腎炎

腎盂腎炎の原因として、基礎疾患や尿路の異常などが挙げられます。基礎疾患には、神経因性膀胱糖尿病などが含まれます。尿路の異常には、前立腺肥大症尿路結石、尿路悪性腫瘍(膀胱がんや尿管がんなど)、尿道カテーテル留置、また膀胱尿管逆流のような膀胱にたまった尿が尿管や腎臓に戻りやすい生まれつきの病気が含まれます。さらにステロイドなどの免疫抑制作用をもつ薬を服用している場合も感染しやすくなります。基礎疾患や尿路の異常がなくても尿道から細菌が侵入して腎盂腎炎を引き起こすことも多く、女性のほうが発症しやすいといわれています。

糸球体腎炎

糸球体腎炎の原因は、感染症や膠原病、血管炎、悪性腫瘍などのさまざまなものが考えられます。原因が特定できないことも多い原発性糸球体腎炎の場合では、何らかの免疫異常が関わり、糸球体に炎症が起きるのではないかといわれています。

間質性腎炎

急性間質性腎炎の原因のほとんどは、薬の副作用やアレルギー反応、感染症と考えられています。膠原病の合併症として、急性間質性腎炎が起こることもあります。慢性間質性腎炎も同様に薬剤や膠原病が原因となることが多いです。慢性間質性腎炎のそのほかの原因としては、環境有害物質などが挙げられます。

症状

腎盂腎炎

急性腎盂腎炎の場合には、発熱、全身倦怠感、腰や背中の痛み、悪心、嘔吐、頻尿、排尿時痛、残尿感などの症状がみられます。細菌が全身に広がる敗血症になると、意識障害や血圧低下によるふらつきなどの症状が出ることがあります。

慢性腎盂腎炎の場合には、自覚症状がないことも多いといわれています。症状が出る場合には、微熱や軽い腰痛、食欲低下などです。

糸球体腎炎

糸球体腎炎の症状は、原因となる病気によって症状が異なります。たとえば、急性糸球体腎炎で代表的な溶連菌感染後急性糸球体腎炎では、扁桃炎などが治ってから10日前後経過すると、むくみやだるさ、息苦しい、血尿などの症状が出ます。慢性糸球体腎炎に含まれるIgA腎症の場合には、自覚症状がないものの健診などでタンパク尿や血尿などを指摘されて気付くことが多いです。一方で、膜性腎症や巣状糸球体硬化症の場合には、手足のむくみやだるさ、体重の増加などの症状が起きることがあります。

間質性腎炎

急性間質性腎炎の症状は、発熱、皮疹、関節の痛みなどですが、全て現れることは比較的まれです。慢性間質性腎炎の場合には、自覚症状がないことが多いといわれています。

検査・診断

腎盂腎炎

腎盂腎炎の検査には、尿検査や血液検査、超音波検査、造影CT検査などがあります。尿の中に白血球や細菌が含まれている場合には、腎盂腎炎の可能性が高く、症状や血液検査と併せて診断します。超音波検査や造影CT検査では、尿路の異常や腎臓の炎症の状態などを把握できます。

糸球体腎炎

糸球体腎炎の検査には、尿検査、血液検査、超音波検査、CT検査、腎生検などがあります。糸球体腎炎では、血尿やタンパク尿という尿所見の異常が出ることが特徴です。腎生検は、糸球体腎炎の原因を特定し、腎炎の状態を正確に把握できる検査方法です。腎生検では、腎臓に直接、細い針を刺し腎臓の組織を採取し、顕微鏡で観察します。

間質性腎炎

尿検査や血液検査、超音波検査などを行い、病歴なども考慮して診断します。タンパク尿は軽度なことが多く、血液検査では腎機能低下を認めます。確定診断のためには腎生検が必要です。

治療

腎盂腎炎

腎盂腎炎は細菌による感染症なので、抗菌薬の内服または注射によって治療します。全身の状態が悪い場合や、十分な水分が取れない場合には入院での治療が必要になります。

糸球体腎炎

糸球体腎炎の原因によって治療方針は異なります。一般的な治療法の1つとして、日常生活では塩分制限、加えて腎機能が低下している場合にはたんぱく質制限といった食事制限が推奨されます。糸球体腎炎の原因にもよりますが、薬物療法では高血圧やタンパク尿を改善する薬の服用やステロイド薬、免疫抑制薬などが検討されます。膠原病や悪性腫瘍などが原因で糸球体腎炎が引き起こされている場合には、原因となる病気の治療も併せて行う必要があります。

間質性腎炎

急性間質性腎炎の場合には、原因となっている病気を治療することが腎炎の治療になります。たとえば、薬の副作用による急性間質性腎炎の場合には、薬を中止して経過を見ます。アレルギー反応による腎炎が疑われる場合には、炎症を抑える目的でステロイド薬を使用することもあります。慢性間質性腎炎の場合にも、原因となっている病気の治療を行いますが、診断された時点ですでに腎機能低下が進んでいることも多いです。腎機能低下の程度に合わせて、生活指導や降圧薬、利尿薬の内服などの対症療法を行います。

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