概要
サルコイドーシスとは、全身臓器、眼、皮膚、神経など、全身のさまざまな部位に炎症が生じ、乾酪壊死(壊死の一種でチーズのような見た目をしている)を認めない類上皮細胞肉芽腫という結節(しこり)ができる原因不明の病気です。
類上皮細胞肉芽腫によって正常な機能が障害されるため、眼症状、皮膚症状、胸部症状、全身症状など、出現部位に応じて多彩な症状が現れます。命に関わることはまれで、多くは自然に治りますが、肉芽腫の発生部位によっては早急な治療が必要です。
サルコイドーシスの日本での罹患率は人口10万人あたり約1人で、男性よりも女性の発症者がやや多く、好発年齢は20~30歳代と50~60歳代といわれています。
種類
肉芽腫が発生する部位は人によって異なりますが、胸部のリンパ節、肺、眼、皮膚に見られることが多いとされています。頻度は少ないものの、心臓、肝臓、腎臓、筋肉、骨、神経などにも見られ、あらゆるところに現れる可能性があります。
サルコイドーシスは、全身に類上皮細胞肉芽腫を形成する病気を指しますが、病変の部位によって名称が異なります。たとえば肺に発生した場合は肺サルコイドーシス、眼に発生した場合は眼サルコイドーシス、心臓に発生した場合は心臓サルコイドーシスと呼び、それぞれが区別されます。
原因
サルコイドーシスの原因はまだ明らかになってはいませんが、何らかの抗原物質に対してTh1型細胞免疫反応(IV型アレルギー反応)が誘発されることで、全身に肉芽腫が形成されると考えられています。原因となる抗原については、ニキビの原因菌であるアクネ菌などの微生物が候補に挙げられています。
なお、サルコイドーシスは一般的に遺伝せず、ほかの人に感染させることもありません。また、がんのような悪性の病気でもありません。
症状
サルコイドーシスを発病しても約3~4割の人には自覚症状がなく、健康診断によって見つかります。症状がある場合には、眼の症状をきっかけに発見されることが多く、皮膚症状、胸部症状なども時々見られ、病変の部位によって症状が異なります。また、病変の部位にかかわらず、発熱や体のだるさ、痛みなどの全身症状が現れる場合もあります。
肺サルコイドーシス
肺に肉芽腫ができた場合、咳や胸痛、息切れなどの胸部症状が見られることもあります。
眼サルコイドーシス
眼サルコイドーシスでは、ほとんどが眼のぶどう膜に炎症が生じます(ぶどう膜炎)。これによって、霧視(視界が霧がかったようにかすむ)、羞明(まぶしく見える)、飛蚊(視界に蚊のような浮遊物が見える)、視力の低下などの症状が現れます。
皮膚サルコイドーシス
皮膚サルコイドーシスでは皮膚症状が見られます。顔や手足、背中、お腹、お尻の皮膚に症状が現れることが多く、皮膚症状の中でもっとも多いのが痛みやかゆみを伴わない紅斑(赤い斑点)です。皮疹ができたり、皮下にコリコリとしたコブが触れたりする場合もあります。
心臓サルコイドーシス
心臓に肉芽腫が発生した場合には不整脈を起こすことがあります。重症になると動悸や息切れ、心不全が生じ、命に関わる場合もあります。サルコイドーシスの死因のうち、日本では半数以上が心臓病変によるものとされています。
神経サルコイドーシス
神経サルコイドーシスでは、肉芽腫が発生する神経によってさまざまな神経症状が現れます。たとえば顔面神経に発生した場合には、顔面神経麻痺が起こることがあります。手足のしびれ、体の痛み、多尿なども見られます。
そのほか
筋肉サルコイドーシスはふくらはぎの筋肉に発生することが多く、ほとんどは筋肉に腫瘤(コブ)が見られます。骨では手や足の指に痛みを伴うことが多いといわれています。そのほか、肝臓や脾臓、胃などに発生する場合もありますが、このような臓器においては無症状であることがほとんどです。
検査・診断
サルコイドーシスがもっとも高頻度に見られる臓器は肺および胸部のリンパ節で、健康診断などで行う胸部X線検査によって異常が見つかる場合が多いです。このように胸部X線検査で異常が見つかった場合や、症状からサルコイドーシスが疑われる場合には、胸部CT検査やガリウムシンチグラフィーなどの画像検査、血液検査、尿検査、呼吸機能検査、眼科検査、心電図検査、内視鏡検査などを行い、総合的に診断します。
最終的には、病変の組織を一部採取して顕微鏡で調べる生検によって、サルコイドーシスに特徴的な乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を証明することで診断を確定します。ただし、生検が難しい場合や、肉芽腫がなかなか見つからないような場合には、各種検査などから確定診断することもあります。
治療
日本人の場合、サルコイドーシスが命に関わることはまれで、約6~7割は自然に治るため、多くは治療をせずに経過を観察します。ただし、眼や皮膚の症状がある場合には、副腎皮質ステロイド点眼薬や軟膏で治療を行うことがあります。
また、重症な眼病変では失明の危険があり、心臓病変や脳神経病変では命に関わることもあるため、早急な治療が必要となります。治療は副腎皮質ステロイドホルモンの全身投与が一般的です。
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