概要
IgG4関連疾患とは、血液中のIgG4抗体というタンパク質が増え、IgG4を産生する形質細胞*が著しく増えることで、唾液腺や涙腺、膵臓など全身のさまざまな臓器が腫れたり硬くなったりする病気です。
影響が及ぶ臓器によって、目や口腔の乾燥、喘息、糖尿病症状、腎機能障害など多様な症状が現れます。このような症状は同時にみられることもあれば、時期をおいて現れることもあります。
IgG4関連疾患の発症原因は分かっておらず、難病指定を受けている病気の1つです。患者数は推定8,000~15,000人、平均発症年齢は約60歳で比較的中高年に多いといわれています。
IgG4関連疾患の治療では副腎皮質ステロイド薬を内服し、効果が乏しい場合などには免疫抑制薬を用いることがあります。
*形質細胞:白血球の一種であるBリンパ球が成熟した細胞。体内に侵入した異物などを攻撃する抗体というタンパク質を作る。
原因
IgG4関連疾患の原因はまだ解明されていませんが、何らかの免疫異常が関係していると考えられています。
私たちの体には病原菌などを攻撃する免疫グロブリンという抗体があります。免疫グロブリンにはIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があり、血液中にもっとも多く含まれるのがIgGです。IgGはIgG1からIgG4まで4つのタイプに分かれています。健康な方の血液中に存在するIgGの中ではIgG4の量がもっとも少ないのですが、IgG4関連疾患では何らかの原因によってIgG4が血液中に増加します。
症状
IgG4関連疾患では、主に唾液腺や涙腺、膵臓に病変がみられ、そのほか胆管や肺、腎臓、眼窩(眼球が入る骨のくぼみ)、リンパ節、下垂体、甲状腺、後腹膜(胃や腸などを包む腹膜の背中側)などさまざまな臓器に影響が生じます。これらの臓器でIgG4を作る形質細胞が集まり塊を作ることから、現れる症状は以下のように臓器によって異なります。
- 唾液腺や涙腺……腺腫大による上眼瞼(上まぶた)の腫れ、口の渇き、ドライアイ
- 肺……咳や息切れ
- 膵臓・胆管……黄疸、腹痛、吐き気、糖尿病症状(口の渇き、体のだるさ、体重減少)
- 腎臓……むくみや体のだるさ、尿関連症状(尿量の低下、夜間尿、頻尿)
- 下垂体……頭痛、視野狭窄、疲れやすい、食欲不振、脱毛、女性では無月経
- 眼窩……眼球の突出、目の周りの腫れや痛み
- 後腹膜……側腹部や背中の痛み、水腎症(尿の通る管を圧迫されて起こる病変)に伴う排尿障害
など
検査・診断
IgG4関連疾患の診断は、以下のIgG4関連疾患包括診断基準をもとに行います。
- 1つもしくは複数の臓器に腫れている部分がある
- 血液中のIgG4が異常高値を認める
- 組織にIgG4陽性形質細胞が増える。花筵様線維化や閉塞性静脈炎を認める
など
上記を確認するために、血液検査や画像検査(超音波、造影CT、MRI、アイソトープ検査*など)、生検などを行います。
*アイソトープ検査:微量の放射線を出すRI(ラジオアイソトープ)という放射性医薬品を投与し、臓器や組織に集まった放射線をガンマカメラで検出することで臓器の機能や病気の有無を確認する検査。RI検査とも呼ばれる。
治療
IgG4関連疾患は、副腎皮質ステロイドの内服による薬物療法を行います。
IgG4関連疾患におけるステロイドの反応性はよく、通常、ステロイドを2~4週間続けることで症状がかなり改善するといわれています。
ステロイドの中でも“プレドニゾロン”と呼ばれるものを使用して初期治療を開始します。 初期量として体重1kgあたり0.6mg程度の内服を2~4週間続け、少しずつ減量していきますが、再発防止の観点から多くの場合は低用量の服用を続けます。
長期間ステロイドを使用する必要があることから、副作用を予防するために胃薬、骨粗しょう症や感染を防ぐ薬などを併用することが多くあります。
ステロイドの効果が乏しい場合などでは、代替薬として免疫抑制薬(アザチオプリン、ミコフェノール酸 モフェチル、タクロリムスなど)や分子標的治療薬のリツキシマブが有効との報告があります。しかし、リツキシマブは欧米では一般的に用いられていますが、現在のところ日本ではIgG4関連疾患に対するリツキシマブの使用は保険適用外となっています。
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