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インタビュー

新たな医療機器の開発-国立がん研究センターが取り組むことの意義

新たな医療機器の開発-国立がん研究センターが取り組むことの意義
伊藤 雅昭 先生

国立がん研究センター東病院 大腸外科長、 国立がん研究センター/ 先端医療開発センター 手...

伊藤 雅昭 先生

この記事の最終更新は2016年04月08日です。

2013年から国立がん研究センターでは医療機器の開発に取り組んでいます。この取り組みの中心となって動いていらっしゃるのが、国立がん研究センター東病院 大腸外科長ならびに先端医療開発センター 手術機器開発分野長の伊藤雅昭先生です。本記事では、国立がん研究センターが医療機器の開発に取り組む意義と、実際に伊藤先生がどのような活動を行っているのかお話しいただきました。

2013年から、私を主導に国立がん研究センターでは医療機器の開発に着手しました。現在国立がん研究センターには、医療機器開発のグループがいくつかあります。そのなかでも私が携わっているものにNEXTプロジェクト(次世代外科・内視鏡治療開発センター)と株式会社A-Tractionがあります。

私が医療機器の開発に着手した背景には、医師が本当に必要とする医療機器が日本で開発されていないという状況がありました。現在日本で使用されている医療機器のほとんどが海外で開発されたものであり、日本で開発された医療機器が成功した事例はこれまでほとんどありませんでした。診断機器では東芝や日立などメジャーなメーカーも多いものの、手術中に使用される機器(治療に携わる医療機器)においては日本で開発されたものはほとんどありません。

日本で医療機器開発がうまくいかない理由は、医療機器開発のシステムが構築されていないことだと考えています。たとえばシリコンバレーでは、医師がこのような医療機器が欲しいと考えた時には、医師と投資家とエンジニアが組んでベンチャー企業をつくり医療機器の開発を行います。医師が欲しいと考える、そして世の中が変わるような医療機器をつくる流動的なシステム(=エコシステム)があるのです。このようなシステムがアメリカではうまく働いていますが、日本では残念ながらない状況です。

日本ではどのように医療機器が開発されるのかというと、医療機器の開発は基本的に中小企業が中心です。中小企業が自分たちの技術でつくれる医療機器を開発し、それを医師に提案し、医師が実際に使ってみるという仕組みです。このような開発は多くが失敗すると考えています。

なぜなら、実際に医療機器を使用する医師の意見がない状態で開発された医療機器は、多くの医師のニーズになりうるものではないからです。医療機器の開発で非常に重要なのは、その医療機器が一般的なニーズ(世界的なニーズ)、普遍的なニーズであるのかという点です。このようなニーズを医療機器の開発前から吟味する必要があると考えています。現場で使う人間が開発に携わらない状態で、本当に必要とされる、将来も使用される医療機器が開発できるとは考えにくいのです。このようなことを考え、私は3年前から医師と日本の工学士と一部の企業と組んで医療機器を開発する「NEXTプロジェクト」をゼロから始めたのです。

NEXTで開発しているものは高度の医療機器だけではなく、練習用の縫合糸や医師の手術中の疲労を軽減する「サージカルニーレスト」などの医療周辺機器も含まれます。現在までに10案件以上の医療機器の開発を行っており、実際に製品になったものもあります。製品になったもののひとつに「サージカルニーレスト」があります。サージカルニーレストは、手術中立ち続ける医師の負担を軽減するために開発されたひざ専用の椅子です。京新工業と共同して開発し、製品化しました。テレビで取り上げられたり学会などで展示していますが、非常に評判はよいと感じています。

ほかにも、肛門ドレーンがあります。直腸がんの手術では、がんの切除後に腸と腸をつなげます。しかし、腸と腸がうまくつかないリスクが1割程度あり、そのつなぎ目から便が漏れると、腹膜炎になり命を落とす危険性がでてきます。これを回避するために一時的に人工肛門をつけるケースがあり、人工肛門によって吻合部が守られます。ところが現在、人工肛門に代わるものとして、管をお尻から入れて腸の内容物を管から排出し、吻合部を安静にするという方法が行われています。その際に使用する肛門専用のドレーン(管)を村中医療器株式会社と開発しており、2016年中には製品になる予定です。製品が完成したのちは、全国の患者さんに対して開発した肛門ドレーンの臨床試験を行い、有効性を示す段階となります。私たちのグループは、これらの製品の有効性を示すところまでが役割であると考えています。

国立がん研究センターが医療機器を開発するメリットは、医師の真のニーズに合ったものを開発できることももちろんですが、開発したものが患者さんにとって有効であるかを確かめるところまで責任をもってできるという点です。患者さんに届けるところまで責任をもつことが非常に重要であり、国立がん研究センターが関わることの大きな意味であると考えています。

株式会社A-Tractionは国立がん研究センターの認定ベンチャー企業です。ロボットを用いた手術には、「ダ・ヴィンチ手術」があります。現在保険適応となっているのは前立腺がん腎臓がんのみであり(前立腺がんは2012年、腎臓がんは2016年4月から保険適応)、有用性や費用面を考えるとすべてのがんや患者さんに適応となるのには時間がかかると考えられます。

また大腸がんにおいては、腹腔鏡手術でカバーできる部分が多くあるのです。そのほかにも、ダ・ヴィンチ手術は3人の医師が必要となり、これは腹腔鏡手術に必要とする人数と同じです。ロボット手術の意義としては、人手を減らすことができる、腹腔鏡手術よりもレベルの高い手術が行えることではないかと考えています。ですから、これらを踏まえて株式会社A-Tractionでは今後必要とされるロボット手術の開発を行っています。

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  • 国立がん研究センター東病院 大腸外科長、 国立がん研究センター/ 先端医療開発センター 手術機器開発分野長 、株式会社A-Traction 取締役、日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会 ストーマ認定士

    伊藤 雅昭 先生

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