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胃がんのステージはどうやって決まるの? ステージ別の症状、生存率、治療法とは

胃がんのステージはどうやって決まるの? ステージ別の症状、生存率、治療法とは
大圃 研 先生

NTT東日本関東病院 消化管内科・内視鏡部 部長

大圃 研 先生

目次
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ステージ(病期)とは、がんの進行度を示す言葉です。胃がんのステージは、日本では日本胃癌学会の分類にしたがって大まかにI~IVの4段階に分けられることが一般的です。

がんの状態によってステージが決まり、ステージごとに推奨される治療方法があるため、ステージを理解することでがんという病気や治療方針についても理解することができます。そこで、ここでは胃がんのステージ分類やステージ別の症状、生存率、治療方針について解説します。

胃がんのステージ決定にはTNM分類が用いられ、“T:がんの深さ(深達度)”、“N:領域リンパ節への転移の有無”、“M:遠くの臓器への転移(遠隔転移)の有無”という3つのカテゴリーの組み合わせで決まります。

がんが胃壁のどの深さまで達しているかを表します。胃壁は上から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜で構成され、がんが深い層にあるほど進行しています。

胃がんでは一般的にT1は早期がん、T2以降が進行がんとされています。深達度の詳細は下表のとおりです。

がんの進達度

周囲のリンパ節に転移しているかを表します。領域リンパ節とは胃の近くにあり、がんが転移しやすいリンパ節のことです。

リンパ節は胃の入り口にあたる噴門(ふんもん)から腹部大動脈周囲にかけて数多く存在し、がん細胞がリンパ管に入り込んでリンパ節に転移することがあります。リンパ節への転移個数が多いほど進行していると捉えることができます。

  • N0:領域リンパ節への転移がない
  • N1:領域リンパ節への転移個数が1~2個
  • N2:領域リンパ節への転移個数が3~6個
  • N3a:領域リンパ節への転移個数が7~15個
  • N3b:領域リンパ節への転移個数が16個以上

領域リンパ節以外のリンパ節や胃から離れた臓器に転移しているかを表します。転移する臓器としては肝臓がもっとも多いとされています。

  • M0:遠隔転移がない
  • M1:遠隔転移がある

胃がんのステージは、大まかにI~IVの4段階に分類されます。その中で、ステージI~IIIについてはIA~B、IIA~B、IIIA~Cに分かれるため、詳細には8段階に分類されます。

がんが深いほど、リンパ節への転移個数が多いほど進行しており、遠隔転移がある場合はがんの深さや領域リンパ節への転移の有無にかかわらずステージIVとなります。

胃癌のステージ

たとえば、がんの深さがT2(固有筋層まで達している)、領域リンパ節への転移がN1(領域リンパ節転移1~2個)、遠隔転移がM0(遠隔転移なし)の場合、ステージはII(IIA)となります。

早期の胃がんでは、胃の不快感や胸やけ、吐き気、食欲不振といった症状を自覚する人もいますが、早期に症状が現れることはほとんどありません。進行がんにおいては体重の減少、つかえ感、胃痛、嘔吐、貧血、吐血、血便などが代表的です。ただし、かなり進行しても自覚症状がない場合もあります。

なお、これらの症状は胃がん特有のものではありません。胃ポリープ胃潰瘍慢性胃炎などの胃の良性疾患でもみられることがあります。そのため、症状だけで胃がんかどうかの判断やステージを断定することはできません。

がんの治療成績を示す指標に生存率があります。これは、がんと診断されてから一定期間たった時点で生存している患者さんの割合のことで、主に5年生存率が用いられています。また、生存率には死因に関係なく全ての死亡を計算に入れた“実測生存率”と、がんのみによる死亡を計算した“相対生存率”があります。

国立がん研究センターが公表している2010~2011年のデータによると、胃がんの5年実測生存率はステージIで81.3%、ステージIIで58.6%、ステージIIIで40.0%、ステージIVで7.9%です。

5年相対生存率においてはステージIで94.7%、ステージIIで67.6%、ステージIIIで45.7%、ステージIVで8.9%となっています。

胃がんの主な治療に内視鏡治療、手術、化学療法があります。ステージによって治療方針が異なり、ステージIで内視鏡治療または手術、ステージII~IIIで手術、ステージIVで化学療法が中心となります。

ごく早期のステージIAでリンパ節転移の可能性が極めて低い場合において、内視鏡治療が適応となります。内視鏡治療とは、先端にカメラを備えた内視鏡を口から挿入して、特殊な器具で病変部だけを切除する治療方法です。

内視鏡での切除が難しい場合には手術が検討されます。手術の方法として、お腹に小さな穴を開けてそこから腹腔鏡という手術器具を挿入して行う腹腔鏡下手術と、お腹を20cm程度切開して行う開腹手術があり、ステージIでは体への負担が少ない腹腔鏡下手術ができる場合があります。

ステージII~IIIでは開腹手術が基本となります。お腹を20cm程度切開して、医師が胃の中を直接目で見ながら胃を切除し、同時にリンパ節も切除します。また、胃を切除すると食物の通り道がなくなってしまうため、食物の通り道を作り直す再建手術も行います。

胃の切除範囲はがんがある部位やがんの深さ、リンパ節への転移などによって異なります。胃の上部に生じたがんが小さい場合には胃の下部を残せることがありますが、がんの範囲が広い場合には胃を全て切除する必要があります。

ステージIVでは抗がん剤を用いた化学療法が中心です。

通常、抗がん剤を1種類または2~3種類を組み合わせて投与し、効果や副作用を見つつ治療の継続やほかの薬剤に変更するかを検討しながら治療を進めていきます。

ステージIVでも転移の程度が軽い場合には、まず化学療法を行い、がんが小さくなって切除可能になれば手術を行うこともあります。また、放射線療法や緩和医療で症状の軽減を図る場合もあります。

胃がんの推奨される治療法は基本的にステージによって決まります。しかし、ステージIでも内視鏡治療が適応になる場合とならない場合があったり、ステージIIやIIIでは胃の部分切除でよい場合と全摘が必要になる場合があったりと、治療方法はがんの状態によって変わってきます。

また、治療方法は患者さんの希望も考慮して選択されるため、納得して治療に臨めるよう担当医と十分に話し合うことが大切です。

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参考文献

  1. がん情報サービスウェブサイト.胃がん(閲覧日:2020年9月28日)
  2. がん情報サービスウェブサイト.院内がん登録生存率集計(閲覧日:2020年9月28日)
  3. 胃癌治療ガイドライン 医師用 【第5版】.日本胃癌学会.2018年1月(閲覧日:2020年9月28日)
  4. がん情報サービスstomach C16 PDF
  5. 独立行政法人労働者健康安全機構関西ろうさい病院ウェブサイト.胃がん(閲覧日:2020年9月28日)
  6. 京都大学医学部付属病院消化管外科ウェブサイト(閲覧日:2020年9月28日)

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