【疾患啓発(スポンサード)】

クリップする
URLを入力して
記事をクリップしましょう
指定された URL のページが見つかりません
S664x430 野原先生 1
胃がんの腹腔鏡手術とは-開腹手術との違いや適応条件
医療技術が進歩し、早期に発見されたがんは治る可能性がある時代になりました。がんが治る可能性がある時代に入ったことで、手術後も不都合なく生活を送ることができるような治療法への期待が高まっています。...
クリップに失敗しました
クリップ とは
記事にコメントをつけて保存することが出来ます。検索機能であとで検索しやすいキーワードをつけたり、読み返し用のメモを入れておくと便利です。
また、記事を読んで疑問に思ったこと、わからないことなどをコメントに書き、「医療チームのコメントを許可する」を選んで頂いた場合は、医師や看護師が解説をメールにてお送りする場合があります。
※ クリップ内容は外部に公開されません

胃がんの腹腔鏡手術とは-開腹手術との違いや適応条件

公開日 2017 年 05 月 12 日 | 更新日 2018 年 09 月 20 日

胃がんの腹腔鏡手術とは-開腹手術との違いや適応条件
野原 京子 先生

国立国際医療研究センター病院 外科医師

野原 京子 先生

医療技術が進歩し、早期に発見されたがんは治る可能性がある時代になりました。がんが治る可能性がある時代に入ったことで、手術後も不都合なく生活を送ることができるような治療法への期待が高まっています。低侵襲で、退院や社会復帰までの期間の短縮を望める腹腔鏡手術は、現代のニーズに則した手術法といえます。日本人に多い胃がんに対する腹腔鏡手術の方法や適応について、国立国際医療研究センター病院外科医師の野原京子先生にお伺いしました。

胃がんの腹腔鏡手術とは?開腹手術との違いや方法

腹腔鏡(ふくくうきょう)とは、お腹の内部(腹腔)の治療に使用する小さなカメラがついた内視鏡です。

胃がんの腹腔鏡手術とは、お腹に作った小さな傷口から腹腔鏡や鉗子類を入れ、お腹の中の様子を映し出したモニターを見ながら胃を切除する治療法のことです。整容性に優れているうえ、出血量も少ないといわれています。

このような体への負担が少ない手術は、低侵襲(ていしんしゅう)手術と呼ばれることもあります。しかしながら、全身麻酔を用いるという点においては、双方の手術による負担は変わらないと考えられます。

腹腔鏡(ふくくうきょう)による治療のイラスト

二酸化炭素ガスで腹腔を膨らませ、モニターを見ながら手術を行う

胃がんの標準的な治療は開腹手術ですが、大規模な臨床試験により限られた進行度の患者さんに対して腹腔鏡手術の安全性が証明されたことから、胃がんに対する腹腔鏡手術の件数は増加傾向にあります。

胃がんの腹腔鏡手術と開腹手術のメリットとデメリット

国立国際医療研究センター病院では、腹腔鏡手術を行う患者さんに対して、必ず開腹手術との違いや、メリット・デメリットをご説明しています。

腹腔鏡手術傷のメリット

一般的な胃がんの腹腔鏡手術では、手術器具を挿れる0.5mm~1cmほどの傷を4か所、切除した胃を取り出す3cm~4cmほどの傷を1か所作ります。

このように傷が小さいため、相対的に術後の痛みが減少し、術後の回復や社会復帰までの期間が早くなることもあります。

腹腔鏡治療の切開範囲と治療器具

手術後の見た目(整容性)が保たれる

切除した胃を取り出す傷を作る部位は、当院ではおへその真上を通過するように縦長に切開を加えています。

これは、おへその構造が、脂肪層や筋膜が重なる他の腹壁に比べてシンプルな構造をしており、腹腔内に到達しやすいためです。さらに、おへそが窪んでいるため、傷が目立ちにくくなくなりやすいことも特徴です。

また、丁寧に縫合することにより、傷が治癒したあとにはやや縦長のおへそとなるため、見た目の美しさの維持という面でもメリットがあると考えています。

胃がんの腹腔鏡手術のデメリット

ただし、患者さんにとってメリットとなる小さな傷は、医師にとってもメリットとなるわけではありません。

開腹手術の場合、自身の手で病変(腫瘍がある部分)をダイレクトに確認し、がんの深さをある程度推測することができますが、腹腔鏡手術の場合はそれが難しいというデメリットがあります。

また、手術中の操作によっては、解剖に忠実に従うための工夫を加えながら切除を進める必要も出てきます。

さらに、腹腔鏡手術とは使用する器械も多い治療法であり、その準備や受け渡しなどにも時間がかかります。

胃がんの腹腔鏡手術で用いる鉗子類

胃がんの腹腔鏡手術で用いる鉗子類 全体像

胃がんの腹腔鏡手術で用いる鉗子類

胃がんの腹腔鏡手術で用いる鉗子類 用途により先端の形が異なる

このような理由から、トータルの手術時間は開腹手術に比べて長くなる傾向があります。

また、腹腔鏡手術に限りませんが、患者さんの個体差による影響が生じることもあります。

胃がんの腹腔鏡手術で出血量が減るもうひとつの理由

腹腔鏡手術に使用するモニターには、二次元のものと三次元のものがあり、当院では両方を使用しています。いずれのモニターにも、細い脈管や腹膜の複雑な層構造が大きく鮮明に映し出されるため、必然的に微細なレベルまで解剖に忠実に切除を進めることができ、出血は最小限になります。

肉眼では確認しにくい細やかな点まで確認できるということも、出血量が減る理由のひとつであると考えます。

なお、二次元モニターを見ながら手術を行う場合は、奥行きを頭の中でイメージしながら操作を進める必要があるため、解剖への理解やトレーニングの積み重ねは欠かせません。

胃がんの腹腔鏡下手術の適応条件-ステージ1Bまでの早期胃がん

腹腔鏡下手術の適応条件

(胃がんの病期分類:日本胃癌学会「胃癌取扱い規約第14版」参考に作成)

当院では、日本胃癌学会のガイドラインに準拠し、日本での大規模臨床試験の結果を受けて、腹腔鏡手術の適応条件をステージ1Bまでの胃がんと定めています。

がんが胃の漿膜下層(しょうまくかそう)という呼ばれる層に及んでいたり、胃の表面に露出している場合は進行胃がんに分類され、開腹手術の適応となります。

なぜ、進行胃がんは腹腔鏡手術の適応外なのか?

医学の基本的な考え方-科学的に証明された治療を行う

腹腔鏡手術とは、日本では1991年に1例目が施行され、2000年代頃から手術件数が増えた比較的新しい治療法です。

科学(医学)の世界では、新たな治療が出てきた場合、その治療が患者さんにとって本当に不利益とならないと客観的に証明されることが重視されます。この証明のために行われるものが、ランダム化比較試験(RCT)という客観的評価のための大規模な臨床試験です。

ステージ1B以下の胃がんに対する腹腔鏡手術の安全性は証明されている

ランダム化比較試験により、限られた進行度の胃がんに対する腹腔鏡手術の安全性は証明されたものの、新しい治療法であるために、現時点では5年生存率など長期成績に関する試験結果は出ていません。

ステージ1Bまでの胃がんとは、もともと長期予後のよい胃がんです。したがって、安全性(手術中のトラブルや合併症などのリスクが、開腹手術と同程度であること)が証明されたことで、腹腔鏡手術による治療を行う施設も増加しました。

しかしながら、進行胃がんの場合は、腹腔鏡で手術を行うことにより再発率は上昇しないのか、また5年生存率に悪影響はないのかという別の懸念も生じます。

この点に関しては、現在臨床試験がすすめられており、長期予後に関する研究結果を待っています。そのため、現在のところガイドラインでは腹腔鏡手術による進行胃がんの治療は標準治療となっていません。位置付けとしては臨床試験段階であり、実際には各施設の適応基準に委ねられています。

胃がんに対する腹腔鏡手術の術前検査

大腸がんなどを合併していないか術前に確認する

大腸内視鏡検査

腹腔鏡手術を受ける胃がんの患者さんに対して行う一般的な術前検査は以下のとおりです。

  • 採血検査
  • X線検査(レントゲン検査)
  • 胃カメラによる検査
  • 胃バリウム検査
  • CT検査

また、大腸がんと胃がんは合併することもあるため、大腸内視鏡検査も術前に行っています。

胃がん患者さんの回復を促進させるチームスクラム-国立国際医療研究センター病院の手術前後の管理

麻酔科や歯科の担当医師が胃がん手術前から介入

高齢患者さんの比率が高い当院では、術前検査と並行して、多職種のメンバーで構成されたチームによる術前診察や周術期(手術前後の期間)管理にも力を入れています。たとえば、麻酔科担当医師が入院前の外来診療時に診察を行い、患者さんが全身麻酔に耐えられるかどうかを確認することがあります。

また、歯科・口腔外科の担当医師は、術前だけでなく退院まで携わります。

全身麻酔をかける際には、気道を確保するための気管挿管(きかんそうかん)を行いますが、このときに弱い歯が欠けて気道内へと入ってしまうリスクがあります。そのため、虫歯など欠ける危険の高い歯があれば、事前に抜歯などの処置を行います。

また、周術期から退院まで口腔ケアを行い、高齢者の方に多い術後肺炎などの感染症予防も徹底しています。

高齢者の口腔内をみている医師

薬剤師による入院前の服薬チェック

高齢の患者さんの多くは、胃がん以外にも持病を持っており、複数の病院を受診していることも珍しくありません。そのため、入院前に薬剤師も介入し、専門的な視点から患者さんが服用している薬剤を確認します。

たとえば、手術前には抗凝固薬(こうぎょうこやく)と呼ばれる血液をサラサラにする薬を中止しなければなりませんが、患者さんのなかには自覚なく他施設で処方された抗凝固薬を飲んでいる方もいます。

また、患者さんがお薬手帳を持っておらず、重複投与の危険性があるか否かの確認が難しいケースもあります。このように、医師だけで行うことが困難な薬剤の確認を薬剤師がカバーし、安全に手術に臨めるよう患者さんを取り巻く環境を整えています。

胃がん患者さんに対する手術前後のリハビリテーション-全年齢を対象とする理由

当院の特徴的な取り組みとして、胃がん周術期のリハビリテーションを、高齢の方だけでなく全ての患者さんに行っていることが挙げられます。

高齢の方に対するリハビリテーションは、入院を機に筋力が衰えてしまい、寝たきりになることを防ぐ目的で行います。また、手術で使用する全身麻酔には、肺炎など呼吸器合併症のリスクも伴います。このような合併症を防ぐ目的で、患者さんご自身に呼吸訓練器を購入していただき、入院前からご自宅で肺機能を鍛えることも行っています。

一方、比較的元気な患者さんに対するリハビリテーションとは、筋力の現状維持や精神面のサポートを目的に行っています。

もともと精力的な年代の患者さんでも、入院生活により行動範囲が狭まり、血栓症や肺の合併症が起こるリスクが上昇します。

また、胃がんや食道がんといった消化器官の手術により十分に食事がとれなくなると、脂肪よりも先に筋肉が減少してしまうため、「体力が急激に落ちた」という感覚が強く現れることもあります。これにより、精神的な自信を失ってしまう患者さんもいらっしゃいます。

スポーツジムに行くような感覚で体を動かせる環境があることの意義

こういった事態を防ぐため、当院では術前状態や年齢を問うことなく、全ての患者さんを対象に術前介入を行っているのです。

実際の入院中のリハビリテーションは、スポーツジムをイメージしていただくと理解が進みやすいでしょう。

あらかじめリハビリ室に行く時間を決め、ウォーキングやバイクマシンを漕ぐなど、積極的に体を動かしてもらいます。

もともと元気な患者さんにとって、行動範囲がベッド周りや病院内に限られる入院生活とは、退屈で閉塞的なものです。そのような人にとって、「リハビリ室を使うことができる」という選択肢があることは、大きな支えになると考えられます。

実際に患者さんから「今日はこんなにも歩けた」と報告を受けることも多く、周術期リハビリテーションは精神的なサポートにも繋がっているのではないかと感じています。

医師に元気に話しかける40~60歳くらいの患者さん

胃がんの腹腔鏡手術では全身麻酔と硬膜外麻酔(局所麻酔)を用いる

硬膜外麻酔の目的とは

胃がんの腹腔鏡手術を行うときには、全身麻酔と硬膜外麻酔(こうまくがいますい)を用いています。硬膜外麻酔とは、背中から投与する局所麻酔で、術中だけでなく術後の痛みを和らげる目的で全身麻酔と併用しています。

胃がんの腹腔鏡手術-胃の切除方法

胃がんに対する腹腔鏡手術の手術時間は、冒頭で解説したように、条件や術式により多少の差が生じます。

当院において実際に行っている胃の切除方法は、以下の4種類です。どの方法で切除を行うかは、胃がんのステージではなく、がんが生じた場所や範囲により決まります。

腹腔鏡手術による胃がんの切除範囲

  1. 幽門側胃切除術(ゆうもんそくいせつじょじゅつ):胃の出口側を全体の2/3切除する
  2. 胃全摘術(いぜんてきじゅつ):胃を全て摘出する
  3. 噴門側胃切除術(ふんもんそくいせつじょじゅつ):胃の入口側を全体の1/3切除する
  4. 幽門保存胃切除術(ゆうもんほぞんいせつじょじゅつ):胃の体部のみを切除して入口と出口は残す

このほか、腫瘍が食事の通り道を塞いでいる場合に、胃を切除せずに腸と繋ぐ「バイパス術」を行うこともあります。

胃とは、ご存知のように非常に個性的な形をした臓器です。そのため、術後の生活の質(QOL)や合併症は、切除する部分によって大きく変わることがあります。

胃の3分の2を切除する幽門側胃切除術が一般的

 

幽門側胃切除術の図

胃の出口を幽門(ゆうもん)といいます。幽門側胃切除術は、出口側の胃を切除する方法で、胃がんの腹腔鏡手術のなかでは最も一般的な方法です。

幽門側胃切除では胃の3分の2を切除し、残った3分の1の胃を十二指腸もしくは空腸に繋いで再建します。

噴門側胃切除術のデメリットと進歩する胃の再建方法

胃の入口を噴門(ふんもん)といいます。切除範囲は胃全体の1/3と小範囲ですが、胃と食道の門を切除するため、逆流性食道炎やそれに伴う胸焼けが起こりやすいというデメリットもあります。

ただし、近年では胃の再建方法にも工夫が加えられ、術後の後遺症を予防できるケースも増えています。

幽門保存胃切除術は早期の胃がんに限定して行う

胃の出口と入口を残す幽門保存胃切除術は、術後の体重減少やダンピング症候群(※)が少ない切除方法です。

※ダンピング症候群とは、食事中や食後に動悸やめまい、低血糖などの症状が現れる胃切除後症候群のこと。

そのため、術後1年など長い目でみると、術前とほとんど変わらない食事量にまで戻せることもあります。

この切除方法は、胃の体部(真ん中)に腫瘍が限局している早期の胃がんに対して行われます。

胃がんの腹腔鏡手術による胃全摘術-ステージ1Bまでに限られる

早期胃がんでも、がんが広範囲に広がっている場合は、胃を全て摘出する必要があります。当院では、ステージⅠBまでの胃がんは腹腔鏡手術で行っています。

腹腔鏡手術では、執刀医の技術だけでなく助手の能力も重要

オペ室で複数の医師が手術を行っている様子

本記事のテーマである腹腔鏡手術を安全に行うには、以下2つの要素が不可欠であると考えます。

  • 一定の経験のある外科担当医師がいること
  • 助手やカメラマン(腹腔鏡を持つ助手)などチーム構成員の能力が一定以上の水準であること

腹腔鏡手術は4~5か所の小さな傷口に、助手やスコピストがそれぞれの担当する手術器具や腹腔鏡を挿れ、執刀医が別の傷口から器具を挿れてがんの切除を行うという治療法です。したがって、チーム構成員皆が自分の役割をより高いレベルで果たすことで、腹腔鏡手術の成績はよりよいものになると考えられます。

このような理由から、腹腔鏡手術を行うチームの構成員には、一定以上の経験と技術が求められます。

執刀医以上に助手のほうが難しいと思われる要素もあるため、私が若手医師に腹腔鏡手術を教えるときには、必ずどちらの視点も得られるよう、助手と執刀医双方のポジションを経験させるよう意識しています。

胃がんの腹腔鏡手術、術後経過

手術の翌日に離床・歩行を開始する

ベッドから降りようとする患者さん

当院では、入院患者さんに対しクリニカルパス(入院診療時の計画書)を用意しており、術後もこのスケジュールに従って動いています。

【胃がんの腹腔鏡手術後のスケジュール】

術後1日目:離床、歩行を開始する

術後2日目:水分摂取を開始する

術後4日目:食事を開始する

食事は流動食から開始し、三分粥、五分粥という順で固形食へと戻していきます。

胃がんの手術、退院後の栄養指導

胃がんの手術後は、胃が物理的に小さくなったことで食べられる量が減るだけでなく、先述したダンピング症候群によって食事を摂りにくくなることもあります。手術から間もない時期は、術前の半分の量しか食べられないという患者さんもおられます。

そのため、術後には退院後どのような食材をどのように摂ればよいのか、栄養士による指導を行い、帰宅後の適切な栄養管理のサポートに努めています。

家事を担当しているご家族にも外来で食事指導

術後の栄養指導は、希望があれば入院患者さんだけでなく退院後の患者さんにも行っています。

また、特に高齢の方や男性の患者さんの場合、ご家族が調理を担当していることも多いため、術後の栄養指導は対象を患者さんのみに限定せず、聞きにこられたご家族を含めて実施しています。
 

胃がんなど上部消化器外科領域の腹腔鏡手術を専門とする。消化器外科手術後の食生活の質の維持などを考慮し、一人ひとりの患者さんにとって最も適した選択肢を提供することを信条としている。高い技術で手術を行うだけでなく、術前から退院までの患者さんのケアも重視する広い視野を持っており、多くの患者さんから信頼を集めている。

関連記事