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胃がん患者さんの回復を促進させるチーム医療——国立国際医療研究センター病院の手術前後の管理

胃がん患者さんの回復を促進させるチーム医療——国立国際医療研究センター病院の手術前後の管理
野原 京子 先生

国立国際医療研究センター病院 外科 鏡視下領域手術外科医長

野原 京子 先生

目次
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前のページで解説した胃がんの手術を安全に行い、患者さんの順調な回復を促進させるためには、さまざまな診療科・職種が連携し、チームとして治療に携わる仕組みの構築が重要です。国立国際医療研究センター病院食道胃外科では、がん患者さんに対して、医師・看護師・薬剤師などの多職種のメンバーで構成されたチームによるケアを行っています。胃がんの治療も例に漏れず、多科・多職種からなるチーム医療が一人ひとりの胃がん患者さんをサポートしています。胃がん治療におけるチーム医療とその取り組みについて、同院外科医師の野原(のはら) 京子(きょうこ)先生にお話しいただきました。

“チームスクラム(SCRUM)”とは、患者さんに、より分かりやすく、より安全に手術を受けていただくことを目的に考えられたプログラムです。チームスクラムの特徴としては、医師や看護師だけでなく、栄養士や理学療法士、歯科・口腔外科医といったさまざまな分野の専門家が連携して、一人ひとりの患者さんに多様な支援を行っている点が挙げられます。外来では、このチーム医療をベースにした術前術後の流れや治療の内容などを記載したパンフレットをあらかじめ患者さんにお渡しして、入院前から理解を深めていただけるようにしています。当院の食道胃外科では胃がん食道がんの患者さんにこのプログラムを使いながら手術前後の治療に取り組んでいます。

チームスクラムが誕生した背景には、患者さんの年齢層が比較的高くなっていることや、糖尿病高血圧などの合併症を抱える患者さんも多く、手術リスクに対してさまざまなケアが必要になるケースが見られたということがあります。

病院主導でチームスクラムを立ち上げたことで、総合病院である利点を生かし、スムーズな多職種連携による治療が実現したのです。

チームスクラム

歯科・口腔外科の担当医師は、術前だけでなく退院まで携わります。

全身麻酔をかける際には、気道を確保するための気管挿管(きかんそうかん)を行いますが、このときに弱い歯が欠けて気道内へと入ってしまうリスクがあります。そのため、虫歯などで欠ける危険性が高い歯があれば、事前に抜歯などの処置を行います。

また、周術期から退院まで口腔ケアを行い、高齢の方に多い術後肺炎などの感染症予防も徹底しています。

高齢の患者さんの多くは、胃がん以外にも高血圧などの持病を抱えており、複数の医療機関に通院されていることも珍しくありません。そのため、入院前に薬剤師も介入し、専門的な視点から患者さんが服用している薬剤を確認します。

たとえば、手術前には抗凝固薬(こうぎょうこやく)と呼ばれる血液を固まりにくくする薬を中止しなければなりませんが、患者さんが他施設からの処方薬を把握されていないと、外来医師はすぐに方針が立てられません。また、患者さんがお薬手帳を持参されていなければ、限られた診療時間の中で、全ての処方薬を把握することは困難です。このように、医師だけで行うことが困難な薬剤の確認を薬剤師がカバーし、安全に手術に臨めるよう患者さんを取り巻く環境を整えています。

当院の特徴的な取り組みとして、胃がん周術期のリハビリテーションを全ての患者さんに行っていることが挙げられます。

高齢の方に対するリハビリテーションは、入院を機に筋力が衰えてしまい、寝たきりになることを防ぐ目的で行います。また、手術で使用する全身麻酔には、肺炎などの呼吸器合併症のリスクも伴います。このような合併症を防ぐ目的で、患者さんご自身に呼吸訓練器を購入していただき、入院前からご自宅で肺機能を鍛えていただくよう指導を行っています。

一方、比較的元気な患者さんに対するリハビリテーションは、筋力の現状維持や精神面のサポートを目的に行っています。

もともと精力的な年代の患者さんでも、入院生活により行動範囲が狭まり、血栓症や肺の合併症が起こるリスクが上昇します(エコノミークラス症候群)。

また、胃がんや食道がんといった消化管の術後はどうしても食事量が低下します。その結果、急激に体重が低下し、「体力が急激に落ちた」という感覚が強く現れることもあります。回復のためには、筋力の低下を防ぎ、退院後も早く元の生活に戻れるように工夫することが大切だと考えています。

スポーツジムに行くような感覚で体を動かせる環境があることの意義

こういった事態を防ぐため、当院では術前状態や年齢を問うことなく、全ての患者さんを対象に術前介入を行っています。

実際の入院中のリハビリテーションは、スポーツジムをイメージしていただくと理解が進みやすいでしょう。

あらかじめリハビリ室に行く時間を決め、自分のベッドから離れて、積極的に体を動かしてもらいます。

なかでも、もともと元気な患者さんにとって、行動範囲がベッド周りや病院内に限られる入院生活とは退屈で閉鎖的なものです。そのような方にとって、「リハビリ室を使うことができる」という選択肢があることは支えになると考えられます。

高齢の患者さんを多く診療している当院では、無事に手術が終わっても、看護や介助が必要なために、ご家族の事情によっては自宅への退院が難しくなり、転院または介護施設へ入所となるケースもあります。このような場合、ソーシャルワーカーが積極的に患者さんと各施設の間に入り、必要に応じて在宅医療や転院に向けた調整や環境整備を行っています。

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  • 国立国際医療研究センター病院 外科 鏡視下領域手術外科医長

    野原 京子 先生

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