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肥満外科手術(減量手術)のメリットとデメリット——リバウンドや合併症の危険性は?

肥満外科手術(減量手術)のメリットとデメリット——リバウンドや合併症の危険性は?
野原 京子 先生

国立国際医療研究センター病院 外科 鏡視下領域手術外科医長

野原 京子 先生

目次
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肥満外科手術(減量手術)は、糖尿病などを合併する重度肥満症の患者さんが健康に長生きできることを目指した治療です。内科的治療ではコントロールが難しかった方への治療選択肢となる一方で、デメリットも少なくないといいます。引き続き、国立国際医療研究センター病院 外科の野原(のはら) 京子(きょうこ)先生に、肥満外科手術のメリットとデメリット、注意点についてお話しいただきました。

肥満症で問題になるのは、糖尿病などの肥満に起因もしくは関連する健康障害です。肥満外科手術のメリットは、内科的治療のみではコントロールが難しい健康障害を持つ患者さんの生命予後を改善できる可能性があることで、患者さんに対する治療選択肢の1つになると考えています。

肥満外科手術のデメリットは、生活習慣を見直さなければ減量できない、あるいはいったん減量してもリバウンドする可能性があることです。

現在の日本で主に行われている“腹腔鏡下(ふくくうきょうか)スリーブ状胃切除術”は、胃を切り取って容量を小さくする技術ですが、栄養の吸収そのものを抑えるものではないため、必要以上に食べすぎてしまった場合はそのぶん体重が増えてしまいます(リバウンド)。つまり、手術をして痩せても、退院後に元の食習慣に戻ってしまった場合は治療の効果が得られにくくなってしまいます。楽に痩せるための手術ではないことをご認識いただきたいと考えます。

手術後、一時的に減量できていたとしても、生活習慣によってはリバウンドしてしまうこともあります。手術をしたら自然に痩せるというよい結果ばかりをイメージしていた場合、精神的なダメージを深く負ってしまうことになりかねません。肥満症の原因ときちんと向き合い、術後も生活習慣の改善を心がけることが大切です。

手術を行っても減量の効果がみられない場合、糖尿病のコントロールが悪い場合、また胃食道逆流や通過障害をきたした場合は、バイパス術などの修正手術(revision surgery)を考慮することがあります。

肥満であることにより、全身麻酔や手術そのもののリスクが高くなります。エコノミークラス症候群に代表される塞栓症(そくせんしょう)肺炎無気肺といった呼吸器合併症には特に注意が必要です。肥満の方は、ご自身に自覚がなくても睡眠時無呼吸症候群をお持ちの方も多くいらっしゃり、この場合はさらにリスクが高くなります。

また、肥満外科手術の中でも、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術で生じる可能性のある主な合併症は以下のとおりです。

  • 縫合不全*
  • 出血
  • 胃食道逆流症
  • 通過障害
  • 腸閉塞(ちょうへいそく)
  • 栄養障害
  • ダンピング症候群
  • 塞栓症
  • 肺合併症

など

*縫合不全:縫合部の創の治りが遅れて組織間が癒合せず、縫合部の一部または全部が解離すること。

肥満外科手術は、肥満症治療の一部にすぎません。手術後は自分自身の行動変容によって体重をコントロールする努力が必要です。退院後に元の生活習慣に戻って暴飲暴食を続ければ、体重は元に戻ってしまいます。さまざまな注意が必要な、日本では比較的新しい治療ですから、肥満外科手術を希望される方に対し、本記事で説明してきた手術の注意点、リスク、デメリットなど、非常に細かい部分までを事前にしっかりとご説明することが非常に重要だと考えています。さまざまなリスクと注意点があることをご理解いただき、それでも肥満外科手術を希望される方のみに手術を行っています。

また、当院では肥満外科手術を通じて患者さんの予後の改善を目指すために、外科医、内科医、管理栄養士、公益社団法人日本看護協会認定の糖尿病看護認定看護師、臨床心理士など、多職種からなるチームで多角的に患者さんを見守る体制を構築しています。1人の患者さんに対して、多職種からなる肥満外科治療チームを作り、手術適応や術後の経過、患者さんの精神面などを定期的に協議しながら総合的にサポートを行っているところは当院の強みだと思っています。

2021年1月現在、当院では、一定の基準を満たす肥満症かつ糖尿病の患者さんを対象にした肥満外科手術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除術)の臨床研究も実施しています。

当院における肥満外科手術は、現在のところは自費診療となっております。その費用(患者さんの自己負担額)は、以下の料金となります。

  1. 減量と精密検査を目的とした術前内科入院の費用(保険診療)
  2. 肥満外科手術を実施する場合の外科入院の手術費用(約25~30万円*、保険外診療)

※その他、フォーミュラ食にかかる費用がかかります(当院を通した通信販売価格および当院売店で購入した場合、1食あたり600円+税)。1食置き換えの場合、1か月あたりのフォーミュラ食にかかる費用は約2万円です。

※外科治療の前に必ず内科入院をしていただき、その結果を見て最終的な手術適応を決めます。

※外科入院の費用は入院期間や症状によって異なります。

*外科入院費用は今後変更の可能性があります。

次のページでは、当院で行っている腹腔鏡下スリーブ状胃切除の特徴と、術前準備から手術、術後のフォローまでに至る治療の流れについてご説明します。

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