新型コロナウイルス感染症特設サイトはこちら
疾患啓発(スポンサード)

肥満外科手術(減量手術)の具体的な流れ――術前入院から術後のフォローまでを紹介

肥満外科手術(減量手術)の具体的な流れ――術前入院から術後のフォローまでを紹介
野原 京子 先生

国立国際医療研究センター病院 外科医師

野原 京子 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

こちらのページでは、肥満外科手術(減量手術)におけるさまざまな注意点をご紹介しました。国立国際医療研究センター病院では、その適応基準を満たした方へ腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を施行しています。同院における肥満症治療の特徴は、肥満症の患者さんを身体面・精神面・栄養面などのあらゆる面から評価し、術後も長期的にフォローアップできるチーム医療体制を整えていることだといいます。本記事では、同院で実際に行っている肥満外科手術の流れについて、同院外科の野原(のはら) 京子(きょうこ)先生にお話しいただきました。

当院では、6か月以上の内科的治療によっても、十分な効果が得られないBMIが35以上の肥満症で、糖尿病、高血圧または脂質異常症のうち1つ以上を合併している方を対象としています。さらに、一定の登録基準を満たす肥満症・糖尿病の方を対象に、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の臨床研究も実施しています。ご興味のある方は、当院肥満外来までお問い合わせください。

肥満外科手術後の患者さんをフォローするには、外科医と内科医による定期診察のみでは不十分です。総合病院である当院には、管理栄養士や公益社団法人日本看護協会認定の糖尿病看護認定看護師などのコメディカルがチームに在籍し、先陣を切って治療に励んでいます。この強みを生かし、術前から術後外来でのフォローまで、多職種連携体制による治療を実現していることが特徴です。具体的には、管理栄養士は肥満症治療専任の担当として一人ひとりに適切な食事療法を提案し、栄養管理を全面的に行っています。糖尿病看護認定看護師は、手術後もこまめに患者さんとのコミュニケーションを図り、患者さんが何らかのSOSを出している場合には速やかにそのサインを察知しチームに共有するなど、医療者と患者さん間での意思疎通に非常に重要な役割を果たしています。

当院の場合、術前に内科に約2週間入院していただき減量を行います。その後、その経過を含めて適応を協議した結果、手術が妥当と判断されればあらためて外科へ入院していただきます。手術後は約1週間~10日間の入院となります。ただし、後述する術前減量のペースや術後の状況によって入院期間は大きく異なります。

肥満外科手術をご希望の患者さんには、まず当院の肥満外来で内科医師の診察を受けていただきます。そのうえで、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の適応の可能性があると思われる患者さんには減量を目的とした入院をしていただき、同時に各種検査を行い、全身状態を確認します。術前検査の段階で何らかの異常が発見された場合は手術の適応外となることもあります。

入院中は管理栄養士や臨床心理士とも面談を行い、食習慣などに関する質問票や心理面の評価も行います。

その後、それらの結果を踏まえて、肥満外科手術チームによる多職種カンファレンスを行います。この術前カンファレンスでは、管理栄養士や精神科、内科、外科など各分野から見解を出し合い、この手術が患者さんに適切であるかを総合的に評価していきます。

検査と並行して、体重の5%減量を目指してダイエットを行います。この段階から、後述するフォーミュラ食を導入します。5%減量が達成できなければ、原則的には手術を実施しません。

当院で術前の5%減量を条件としている最大の理由は、安全に手術を行うためです。肥満症の方の手術が難しい理由の1つに、手術中の視野が悪いということがあります。脂肪肝で肝臓が肥大している場合、それによって胃が見えづらくなってしまうのです。減量すると肝臓の肥大が改善して、より安全な手術が可能になります。また、減量を達成できるような自己管理能力のある患者さんであれば、術後の小さくなった胃に適した食生活が送れると考えています。

5%減量を達成し、チームカンファレンスで手術が可能と判断されたら、後日あらためて外科入院となり、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を行います。

手術後は1日ICU(集中治療室)に入院し、その翌日から一般病棟に戻ります。入院中の食事は流動食となり、退院後から徐々に半固形食とフォーミュラ食の併用を開始します。

なお、術後すぐに職場復帰を希望している方には、仕事中の食事をフォーミュラ食に置き換えられる場合には職場復帰可能とお伝えしています。

フォーミュラ食とは? 必要栄養素を補給するための低カロリー代替食

フォーミュラ食とは、糖質および脂質を極力カットする一方で、食事制限によって不足しがちなたんぱく質、ビタミン、ミネラルを豊富に含んだ代替食です。

手術後は胃の容量が極端に小さくなっているため、個人差がありますが、術後1か月ほどまでは通常食を取ることができません。手術翌日は水、ジュース、具なしスープを少量ずつ摂取し始め、数日後から固形食に戻るまでの期間は、1日3食のうち1~2食を半固形食、残りをフォーミュラ食に置き換えていただきます。

退院後は内科・外科双方への定期的な外来通院でフォローアップを継続します。

ご自身でも生活習慣を把握していただくため、体重や血糖、食事内容は全てノートに記録していただきます。ノートは外来通院時に糖尿病看護認定看護師が確認し、患者さんの直近の状況をヒアリングします。また、ノートの内容をもとに肥満症治療専任の管理栄養士が栄養指導を行います。外来通院の頻度は個々の患者さんの状況によって異なりますが、栄養指導のなかで患者さんにご申告いただく食事内容と減量のペースが明らかに異なる場合や、内科的・外科的に問題が見られる場合は、高頻度に来院いただくこともあります。

当院における肥満外科手術の費用(患者さん自己負担額)は、以下の料金を合計した値となります。

  • 術前減量を目的とした内科入院の自己負担金(術前入院、約14万円、保険診療)
  • 外科入院の自己負担金(手術入院、約25~30万円*、保険外診療)
  • フォーミュラ食にかかる費用(当院を通した通信販売価格および当院売店で購入した場合、1食あたり600円+税)

※外科治療の前に必ず内科入院をしていただき、その結果を見て最終的な手術適応を決めます。

※外科入院の費用は入院期間や症状によって異なります。また、個室代が別途必要です。

※1食置き換えの場合、1か月あたりのフォーミュラ食にかかる費用は約2万円です。

*外科入院費用は今後変更の可能性があります。

日本では、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が保険収載されて以降、徐々に手術件数が増加しています。しかしながら、外来通院のペースやチーム医療を支えるスタッフの職種、栄養士から受ける栄養指導の内容など、細かい治療の流れは施設によって多少異なるのが現状です。今後、エビデンスに基づいたチーム医療の形態などが明確に示されればよいと考えています。

当院は、肥満外科手術を導入するには多職種連携(外科医、内科医、集中治療医、精神科医、リハビリテーション医、看護師、管理栄養士、臨床心理士、社会福祉士など)によるチーム医療が必須だと考え、かなりの時間をかけて慎重に準備を進めてきました。今後も手術の安全性を優先し、本当にこの治療が必要な重度肥満症の患者さんに対してのみ、慎重に治療を行っていきたいと考えています。

当院では、医師、栄養士、看護師などからなるチームが一丸となって、肥満外科手術を受ける患者さんをサポートします。ただし、治療を成功させるためには患者さん自身の行動変容が必要不可欠です。手術後も定期通院を欠かさずに、栄養士や看護師と食事内容について相談しながら、私たちと一緒に、健康で長く生きられる体を作っていっていただきたいと考えています。

受診について相談する
  • 国立国際医療研究センター病院 外科医師

    野原 京子 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    「肥満症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。

    なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。