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胃がんにおけるロボット支援下手術

胃がんにおけるロボット支援下手術
北上 英彦 先生

恵佑会札幌病院 ロボット・内視鏡外科センター センター長

北上 英彦 先生

目次
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かつて、胃がんの手術は開腹手術しか選択肢がありませんでしたが、現在は開腹手術のほか、腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)やロボット支援下手術も保険適用となり選択肢が増えました。

恵佑会札幌病院 ロボット・内視鏡外科センター センター長 北上 英彦(きたがみ ひでひこ)先生は、「ロボット支援下手術は開腹手術の利点と腹腔鏡下手術の利点を合わせた方法だと感じている」とおっしゃいます。では、具体的にロボット支援下手術はどのような方法で行われ、どのような特徴・利点を持つのでしょうか。北上先生に詳しくお話を伺いました。

ロボット支援下手術とは、手術用のロボットを医師が操作して行う手術方法です。腹腔鏡下手術と同様、ロボット支援下手術も開腹手術よりも傷は小さく済みます。また、ロボットアームに装着する鉗子(かんし)とよばれる部分には、人間の手首のような関節機能があるため、腹腔鏡下手術と比較してより操作性が高く繊細な操作が実現できます。

(c)2021 Intuitive Surgical, Inc.
(c)2021 Intuitive Surgical, Inc.

加えて、人間の手で手技を行う際にはどうしても細かな手ぶれが起きてしまいますが、ロボットには手ぶれ補正機能があるため、より正確な操作が可能です。

(c)2021 Intuitive Surgical, Inc.
(c)2021 Intuitive Surgical, Inc.

胃の切除方法は主に3種類あります。開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術のいずれの方法であっても、がんが発生している部位やその大きさ、進行具合などをふまえて術式を決定するという点は変わりません。

胃がん手術の種類

また、いずれの術式においても胃の切除を行った後は、食事の摂取ができるよう消化管の再建(消化管をつなぎ合わせる処置)を行います。

一方で、術式ごとに術後にどのような影響が現れやすいかといった点は異なります。たとえば胃全摘術の場合には体への侵襲が大きくなるため、ほかの術式と比較して回復に時間がかかることが予想されます。また、噴門側胃切除では逆流性食道炎が問題になるといった特徴もあります。

胃がんに対するロボット支援下手術は、患者さんごとに検討して適しているか判断すべきです。そのため、適応に関して一概にはいえませんが、現在当院では、早期の胃がんに対しては特に積極的にロボット支援下手術を実施しています。また、ロボット支援下手術は腹腔鏡下手術よりも複雑な動きができるため、進行がんであっても開腹手術を避けられる可能性があります。そのため、進行がんでも切除できる可能性がある場合にはロボット支援下手術をおすすめすることもあります。

基本的には全ての患者さんに対して、開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術全ての方法のメリット・デメリットの説明を行い、選択肢としてご提示するようにしています。将来的にはロボット支援下手術を希望した患者さんに対しては、どのようなステージであっても実施ができるよう準備を進めています。

胃がんに限らず、一般的なロボット支援下手術のメリットとして以下が考えられます。

  • 出血が少ない(輸血の必要性が少ない)
  • 合併症のリスクが少ない
  • 傷が小さいため回復が早くなる(入院期間が短く済み、日常生活への復帰も早まる)

また、手ぶれ補正機能や鉗子に関節があること(多関節機能)によって、がんの切除率や治癒率が上昇するのではないかと期待されています。しかし、胃がんのロボット支援下手術が保険適用となったのは2018年とまだ日が浅く、明確にメリットと言い切れるだけのエビデンスがそろっていないということも事実です。手ぶれ補正機能や多関節機能によってより精密な動きが実現できることは確かですが、これによって開腹手術や腹腔鏡下手術よりも“がんを正確に取り切る”ことができているかどうか(切除率や治癒率が上昇しているかどうか)は、これからさらに多くの症例が集まって初めて比較できることです。

ただ、医師が行いたい動きが手術支援ロボットによってより正確に実現できている、あるいは手術がより実施しやすくなっていることは事実です。難しい手術、やりにくい手術はそれだけリスクも高まります。そのため、手術を実際に行う医師自身が手術を実施しやすいと感じていることが、最終的に手術の安全性につながるのではないかと考えています。

胃がんのロボット支援下手術では、胃摘出後の消化管再建時にも手術支援ロボットの利点が生かせます。

ロボット支援下手術はロボットアームの先端についたカメラを用いて3Dの映像を見ながら手技を行うため、画面を通してではなく直接自分の目で見ているように認識できます。さらに、この3D映像は必要に応じて拡大することができるのも特徴です。また、ここに手ぶれ防止機能と多関節機能が加わることで、拡大された視野の中でも全く手先が震えることなく、まるで自身の手で縫合しているかのように繊細な感覚でロボットを操作することが可能です。

術者としては、これらの機能のおかげで非常に手術がやりやすいと感じています。胃がん手術で注意すべき合併症の1つに縫合不全がありますが、ロボット支援下手術でより精緻な手技を行うことで、縫合不全の数を抑えることができるのではないかと期待しています。

どのような術式で手術を行っても胃がんの手術後は一時的に食事量が減少します。これにより体重が大幅に減少すると、術後の薬物治療が困難になったり生命予後自体が悪くなったりする可能性があるので注意が必要です。

薬物治療の完遂率の高さは生命予後に相関があるといわれており、具体的には、術後の体重が術前の体重の15%以上減ってしまうと薬物治療の継続率は約40%となります(15%以下の減少にとどめることができれば継続率は約70%)。大幅な体重減少を避けるため、食事の回数を増やす、食べ物の種類を考えるなど栄養士と相談して食事方法を考えることも有効です。

日本においてロボット支援下手術は前立腺がんへの適応を皮切りに、徐々に適応疾患を増やしてきました。すでに前立腺がんにおいては、多くのケースでロボット支援下手術を実施するようになってきています。今後、胃がんのロボット支援下手術の症例数が増え、エビデンスに基づくメリットなどが明確になることで、前立腺がんと同様にロボット支援下手術が選択される場面が増えてくるのではないかと考えています。

まず、読者の方々には胃がんに対してロボット支援下手術という選択肢があるのだということを知っていただきたいと考えています。全ての手術の選択肢をきちんと知り、それぞれのメリット・デメリットなども理解したうえで納得のいく治療を受けていただきたいのです。

当院では、毎週火曜の午前中に食道がん・胃がん・大腸がんのロボット支援下手術についてご相談いただける専門外来を設けています*。本外来は、紹介状などは必要ありません。「ロボット支援下手術を受けたいが、可能なのか」「まずはとにかくロボット支援下手術について詳しく話を聞いてみたい」など、気軽に話を聞きに行くような気持ちでお越しください。患者さんが納得のいく治療を受けられるよう、少しでも力になれればと思っています。

*2020年12月現在。最新の情報は恵佑会札幌病院のwebサイトなどで確認してください。

当院は、ダヴィンチの製造販売会社であるインテュイティブサージカル社より胃がんのロボット支援下手術症例見学施設として認定されており、ロボット支援下手術の見学を受け入れています。これからロボット支援下手術を習得したいと考えている先生方はもちろん、患者さんにロボット支援下手術について説明する必要がある、単にロボット支援下手術に興味があるという先生方でもぜひ見学に来ていただければと思います。

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