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インタビュー

胃がんの予後-手術法や止血方法の進歩

胃がんの予後-手術法や止血方法の進歩
清水 伸幸 先生

国際医療福祉大学 医学教育統括センター 教授、国際医療福祉大学 健康管理センター長

清水 伸幸 先生

目次
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この記事の最終更新は2016年02月02日です。

胃がんは我が国における死亡数が肺がんに次いで第2位となっており、多くの方が気にされる病気のひとつではないでしょうか。胃がんにおける治療方法は日々進歩しており、患者さんの寿命(予後)に大きく貢献しています。また、術式のみならず手術における止血方法も同様に進歩しています。山王病院副院長 外科部長の清水伸幸先生は、新たな止血方法の開発に携わっておられます。本記事では新たな止血方法の開発について、胃がんの予後について解説いただきます。

腹腔鏡や内視鏡に限らず、手術を行う場合は組織を切り取りますので出血が生じます。従来は、止血するために縫合やレーザー、高周波での熱凝固(熱を加えて焼き固め、出血を止めること)を行っていました。縫合などによる止血の場合、患部を糸で縫い合わせるため、癒着(皮膚・膜などが炎症などのためにくっついてしまうこと)が生じることが珍しくありません。また熱凝固による止血を行う場合、組織が死滅する範囲を処置が必要な部位だけに限局するのが難しいのが現状です。現時点では動物実験の段階ですが、マイルドプラズマ照射を行う方法で癒着を防ぎ、かつ、周囲の健常な組織を傷つけない・熱変性によるダメージを極力与えない方法を、産業技術総合研究所や名古屋大学工学部などと共同で開発しています。

 

プラズマ止血装置の開発

(画像:国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)提供)

ここでは簡素に述べますが、物質にエネルギーを与えると固体から液体、そして気体へと変化していきます。さらに強いエネルギーを加えると、原子を構成する陽イオンと電子にわかれて各々が活動するようになります。これがプラズマです。身近な存在として雷やネオンサインなどもプラズマのひとつですが、すべてのプラズマが雷などのように強いエネルギーを持っているわけではありません。

低温プラズマ(原子を構成する陽子と電子が離れて、さほど強力に活動していない状態)は、雷のような強力なエネルギーを持ち得ません。私たちは、大気圧下で発生させたマイルドなプラズマを使用して止血を行う装置を開発しました。マウスを使った実験においては、従来のレーザーや高周波熱凝固と異なり、出血を起こしている部位だけに作用するメリットが確認されています。そのため、止血による周囲の正常な細胞の損傷を最低限にとどめることができますが、そのメカニズムについては今後研究を行い解明していく必要があると考えています。

胃がんの進行については、以下のように定義されています。

T0:癌がない

T1a:癌が粘膜にとどまるもの(M)

T1b:癌の浸潤が粘膜下組織にとどまるもの(SM)

T2:癌の浸潤が粘膜下組織を越えているが、固有筋層にとどまるもの(MP)

T3:癌の浸潤が固有筋層を越えているが、漿膜下組織にとどまるもの(SS)

T4a:癌の浸潤が漿膜表面に接しているか、またはこれを破って遊離腹腔内に露出しているもの(SE)

T4b:癌の浸潤が直接他臓器まで及ぶもの(SI)

N0:領域リンパ節に転移を認めない

N1:領域リンパ節の転移個数が1~2個

N2:領域リンパ節の転移個数が3~6個

N3:領域リンパ節の転移個数が7個以上

MX:領域リンパ節以外の転移の有無が不明

M0:領域リンパ節以外の転移が無い

M1:領域リンパ節以外の転移が有る

 

胃がんのステージ(病理分類)

胃がんはできるだけ早期発見、早期治療を行うことで治療効果が高まることがあきらかとなりつつあります。定期的な検査を受けることはもちろん、万が一胃がんが見つかった場合も早期に治療を開始することがきわめて重要といえます。

一口に胃がんといっても、進行状況や発生する部位はさまざまです。また、手術だけで治療成績を上げることが難しいのも現状です。患者さんの病状に合わせて、手術術式を決定したり化学療法などを組み合わせて最良の結果を出す「テーラーメード医療」を確立していくことが非常に重要だと考えています。胃がんの手術で病巣を切除する際に周囲の臓器をある程度損傷してしまうことはどうしても避けられないものですが、(現在は動物実験段階ではありますが)先に示した低温プラズマ止血装置のような新しい止血技術などが開発されることで、患者さんの術後の生活の質(QOL)を高めることができると期待しています。

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    国立がん研究センター中央病院 病院長、元東京大学医学部附属病院 胃食道外科 科長

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