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ピロリ菌とは? 積極的な検査と除菌治療で胃がんの予防につなげよう

ピロリ菌とは? 積極的な検査と除菌治療で胃がんの予防につなげよう
花村 祥太郎 先生

菊名記念病院 消化器内科 部長

花村 祥太郎 先生

目次
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日本における胃がんの原因の98%はピロリ菌関連とされており、日本人全体のピロリ菌感染率は約5割といわれています。そのため、胃がんなどの病気を予防するためにも、検査を受けて感染の有無を確認し、必要に応じて除菌治療を受けることが大事です。

今回はピロリ菌をテーマに、ピロリ菌が原因となる病気、ピロリ菌の検査や治療などについて、菊名記念病院 消化器内科 部長 花村 祥太郎(はなむら しょうたろう)先生にお話を伺いました。

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に生息する細菌です。胃炎胃潰瘍(いかいよう)胃がんの原因の1つとされています。

一般的には胃酸分泌の未熟な幼少期の感染がほとんどで、胃酸分泌が確立されている成人では、たとえ口からピロリ菌が入っても、感染することは少ないとされています。感染経路としては、ピロリ菌に汚染された水の飲用、ピロリ菌感染者からの口移し、食器や箸などの共用などが挙げられます。また、日本人全体の感染率は約5割とされていますが、50歳代以上では約7割が感染している一方、衛生環境の向上などによって、10~20歳代の若い世代の感染率は約1割前後といわれています。

なお、日本人の胃がんの原因の98%がピロリ菌関連といわれていますが、抗生物質の内服治療で比較的簡単に除菌ができるため、除菌治療を前向きに考えていただけたらと思います。

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ピロリ菌が関連する病気には、主に次のようなものがあります。

  • 胃がん
  • 胃炎:胃の粘膜に炎症が起こった状態。
  • 消化性潰瘍(しょうかせいかいよう):胃や十二指腸の粘膜が傷つき、深くえぐれた状態。
  • 胃MALTリンパ腫:胃にできる悪性リンパ腫*
  • 特発性血小板減少性紫斑病(ITP):血小板が減少し、出血しやすくなる病気。

当院で除菌治療を行うのは、慢性胃炎が背景にあるケースが多いです。

*悪性リンパ腫:リンパ球(白血球)ががん化したもの

ピロリ菌の検査方法は、次の項目で説明するように、内視鏡を使う検査(内視鏡を口や鼻から入れ、胃の中を直接見る検査)と使わない検査に大別され、当院では内視鏡を使わない検査が主流となっています。

内視鏡を使わない検査には、以下のようなものがあります。

  • 抗体検査:菌に対抗するためにつくられる抗体の有無を調べる検査。血液検査または尿検査によって行う。
  • 尿素呼気試験:吐いた息を集めてピロリ菌の有無を調べる検査。
  • 糞便中抗原測定:便の中のピロリ菌の有無を調べる検査。

内視鏡を使う検査は、鼻や口からカメラを入れて組織を採取する必要があるため、内視鏡を使わない検査のほうが患者さんの苦痛も少なく、実施しやすい検査ではないかと考えます。ただ、便を取ることに抵抗がある方もいるので、当院ではまず尿検査や血液検査を行うことが多いです。血液検査の予定がすでにある場合は、同時にピロリ菌の検査を組み込むこともあります。

なお、尿素呼気試験は、除菌治療後にピロリ菌が除菌されたかを確認する判定検査の際に行うことが多いです。血液検査や尿検査は抗体の有無を調べるものであり、除菌が完了しても抗体価はすぐに変化せず、判定検査には向いていないためです。

内視鏡を使う検査では、胃の組織を採取した後、さまざまな方法でピロリ菌の存在を調べます。

  • 培養法:採取した組織をピロリ菌が発育しやすい環境で培養する方法。
  • 迅速ウレアーゼ試験:ピロリ菌が持つ酵素(尿素を分解するウレアーゼという酵素)の性質を利用し、特殊な反応液を使って液体の色の変化を見る方法。
  • 組織鏡検法:採取した組織を染色して顕微鏡で探す方法。
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ピロリ菌の検査で陽性が判明したら、まずは除菌治療をおすすめしています。ピロリ菌による胃がん胃潰瘍などのリスクを考えると、除菌をしたほうがよいためです。

除菌治療では、胃薬と抗生物質を7日間飲みます。途中で服用をやめると除菌に失敗し、薬が効かない(耐性を持った)菌が出現することがあるため注意が必要です。その後、4週間以上経過後に尿素呼気試験による判定検査を行い、除菌が成功したかどうかを確認します。

また、薬にはアレルギー反応、下痢症状、味覚障害などの副作用のリスクもあるため、患者さんには事前に丁寧に説明し、異常があれば遠慮なく問い合わせるようにお伝えしています。中でも頻度の高い副作用が下痢症状なので、当院では予防として整腸剤も一緒に処方しています。

そのほか、飲酒や喫煙は除菌の成功率を下げるとされているため、控えるようにお願いしています。

1回目の除菌治療で約9割の方は除菌に成功するとされているため、ほとんどの方は1回の治療で済みます。判定検査で除菌できていないことが分かったら、薬の種類を変えて2次除菌を行います。

それでも失敗してしまうと3次除菌となりますが、ここからは保険が適用されません。しかし、胃がん予防につながるなどの意義がある治療なので、費用は全額自己負担となることなどの注意点を説明したうえで、ご希望があれば3次除菌以降も行っています。なお、当院で実施しているピロリ菌の除菌治療にかかる費用は、3次除菌・4次除菌ともに診察、検査、薬代などを合わせて税込み24,000円~です。処方薬の種類や除菌確認の検査(糞便中抗原測定、尿素呼気試験)などにより若干変動します。

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除菌治療に成功しても、胃がんのリスクが完全になくなるわけではありません。そのため、治療後も定期的に内視鏡検査を行うことが大事です。

当院では、除菌治療が終わった患者さん全員に対し、1年後の内視鏡検査をすすめています。病院のほうから通知がいくシステムになっており、忘れずに検査を受けられるようにしています。

まれに、ピロリ菌に再感染するケースがあります。しかし、成人の場合はそもそも感染のリスクが低く、昔よりも衛生環境が整っているため、水道水から感染するということも少ないでしょう。

もし再感染したとしても、定期的に内視鏡検査を受けていただければ気付くことができる可能性があるので、やはり定期的な検査が大事だと思います。

ピロリ菌の感染は胃がんなどの病気のリスクとなりますが、胃がんは40歳頃までに罹患することはほとんどなく、40歳を過ぎると徐々に罹患者が出始める病気です。内視鏡検査をすればピロリ菌感染の有無も分かるので、40歳までには一度内視鏡検査を受けていただくとよいと思います。

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