【疾患啓発タイアップ】

胃がん再発時における「腹膜播種」のこれからの治療

公開日 2017 年 08 月 28 日 | 更新日 2017 年 10 月 20 日

胃がん再発時における「腹膜播種」のこれからの治療
相馬 大介 先生

国立国際医療研究センター病院 食道胃外科 医師

相馬 大介 先生

記事1では、胃がんの症状や原因などの基礎知識から抗がん剤による化学療法までお話しいただきました。では、今後、効果が期待されている治療にはどのようなものがあるのでしょうか。国立国際医療研究センター病院の相馬 大介先生は、「胃がんの治療では、栄養療法との組み合わせや術前化学療法が重要になる」とおっしゃいます。それはなぜなのでしょうか。引き続き、同病院の相馬 大介先生に胃がんの化学療法の課題や、さらに治療効果を高めるために重要となる取り組みをお伺いしました。

*胃がんの原因や治療法、特に化学療法の種類や抗がん剤については、記事1『胃がんの症状と原因-胃がんの基礎知識と治療における抗がん剤の役割とは?』 をご覧ください。

胃がんの再発時に現れる腹膜播種とは

胃がんの再発時に起こる頻度が高い症状である

ほかのがんと異なり、胃がんの再発で多く見られる症状に腹膜播種(ふくまくはしゅ)があります。腹膜播種とは、腹膜にがん細胞がパラパラと広がることを指します。腹膜播種になると患者さんの状態は大きく悪化し、治療も困難であるといわれています。

ベッドに横たわる入院患者さん

がんが再発し、腹膜播種が起こると、食事をすることができなくなる消化管の閉塞や腹部に水がたまる腹水の原因になるなど、さまざまな弊害が生じます。さらに、腹膜後部の臓器が狭くなった結果、尿管が塞がれ尿がでにくくなってしまうこともあります。このように、腹膜播種は胃がんの患者さんの状態を悪化させる症状なのです。

胃がんの腹膜播種における新しい治療法

腹腔内に直接抗がん剤を投与する腹腔内投与療法

腹膜播種の治療法として近年登場したものが腹腔内投与療法です。これは、直接腹腔内に抗がん剤を投与する治療法を指します。

腹腔内投与療法は昔から実施されていたのですが、安全で効果が期待できる薬剤がこれまでありませんでした。しかし、近年、パクリタキセルという薬剤が有効であることがわかったのです。このパクリタキセルの特徴は脂溶性であり、油にしか解けないという点です。そのため、体内に吸収されることがなく腹腔内に滞留することで、がんに直接効き、大きな治療効果につながっています。

腹膜播種の患者さんのなかでも、肝転移など他の臓器の転移がないがんの方に有効であるといわれており、結果も出ている治療法です。現状では、高度先進医療の段階で保険適用が待たれている治療ですが、腹膜播種に苦しむ患者さんへの有効な治療法として期待されています。当院も、この腹腔内投与療法の研究グループに参加しております。

胃がんの化学療法における課題-食事摂取が困難なこと

胃がんの化学療法における大きな課題として進行期や術後早期に、十分に食事をすることが困難になってしまう例が多いことが挙げられます。特に胃をすべて取り除いてしまう全摘手術では、早期には十分に食べることができない場合が多くみられます。患者さんの食事を可能とするため、できる限り胃を残すような手術を考慮しますが、がんの進行度や発生場所によっては胃をすべて取り除かなければならないケースもあります。

胃のあたりをおさえる高齢者

十分に食事ができないと栄養状態の悪化による様々な障害から、化学療法が困難になってしまうことになりかねません。その場合には、いかに栄養状態を改善し、抗がん剤による治療ができるかが重要になります。

特に、高齢の患者さんには手術後に食事をすることができなくなる患者さんが少なくありません。そのような方への工夫として、私たちの病院では腸ろうを採用することがあります。

腸ろうとは、経口摂取が難しい方に適応される治療であり、腸に穴を開け直接栄養を入れる経管栄養法の1つです。がんの治療において栄養は非常に重要であり、それは胃がんも例外ではありません。たとえば、腸ろうにより栄養をとることができれば、術後の体重減少を防ぐことができ、合併症のリスクを軽減することにつながり、術後の補助化学療法の速やかな導入と副作用の軽減に寄与することが予想されます。

栄養療法の化学療法に対する役割

国立国際医療研究センター病院では栄養療法を積極的に実施

私たち国立国際医療研究センター病院では、胃がん手術患者に対する多職種による周術期管理チームを結成して術後合併症の減少を目指した取り組みを行っています。栄養に関しても術前から積極的な介入を行っており、それにより周術期の合併症が大きく減少したという実績があります。手術侵襲の大きい場合や、術後の経口摂取困難な高齢者の場合には腸ろうを留置して、術後早期から経腸栄養を行っています。

多職種のカンファレンス

以上のような取り組みを行い術後の栄養状態を早く立ち上げることで化学療法の早い段階での開始が可能となり、ひいては患者さまの再発リスクの低下に貢献していると考えています。

今後は胃がんの術前化学療法も重要

術前化学療法は負担の少ない手術につながる

手術が身体に影響を及ぼす手術侵襲というのは術後の予後に大きく関わってきます。そのため、いかに身体に負担の少ない手術を実施することができるかは、非常に重要です。そこで大きな効果が期待できるものに、術前化学療法があると考えています。

術前化学療法によってがんを小さくし、いかに身体に負担の少ない侵襲の小さな手術を実現できるかが、重要になります。

術前化学療法は患者さんの予後の改善につながる

術前の化学療法により腫瘍を小さくすることやダウンステージングができれば、他臓器の合併切除を実施することも少なくなります。他臓器との合併切除は、術後の合併症の確率が高くなり患者さんの予後の悪化につながる可能性もあります。

また、切除することが難しいほどがんが進行している患者さんであっても、がんを取り切ることが可能になるかもしれません。今後、胃がん治療において術前化学療法の役割がお大きくなり、標準治療の一つとなるでしょう。

どんな患者さんであっても諦めない治療を目指す

相馬 大介先生

私たち国立国際医療研究センター病院の胃がん治療は、すでに効果が立証されているガイドラインに忠実に実施しています。昔は、胃がんは手術できなければ治りにくい病気とされてきた時代もありましたが、現在は違います。それほど胃がんにおける化学療法には高い効果が期待できる時代なのです。それは胃がんにおける化学療法では、治療効果が高い多種多様なお薬が登場しているという背景があります。

また、私たち国立国際医療研究センター病院の上部消化管外科では、様々な分野で専門性の高い科の先生が揃っている病院ゆえに、高齢で重度の合併症を併発しているような患者さんもでも積極的に受け入れております。一般的に高齢や他の病気を抱えているため手術をはじめとしたがん治療の適応外とされる患者様でも出来る限り対応させていただいております。ぜひご相談ください。

 

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