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インタビュー

ピロリ菌の治療―除菌について

ピロリ菌の治療―除菌について
森下 鉄夫 先生

山王メディカルセンター院長 国際医療福祉大学臨床研究医学研究センター教授 慶應義塾大学医学部客員教授

森下 鉄夫 先生

ピロリ菌は、それ自体が症状を起こすわけではありませんが、放っておくと胃潰瘍十二指腸潰瘍、場合によっては胃がんのリスクにもなる菌です。ピロリ菌はどのように除菌すれば良いのでしょうか? 再発するリスクはあるのでしょうか? ピロリ菌の除菌について、山王メディカルセンター院長の森下鉄夫先生にお話をお聞きしました。

ピロリ菌の除菌治療が保険適用となっている疾患は以下の通りです。

※ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染胃炎の確認のためには、以下の(1)及び(2)の両方を実施する必要があります。

  1. ヘリコバクター・ピロリの感染を以下の検査により確認します。

迅速ウレアーゼ試験・鏡検法・培養法・抗体測定・尿素呼気試験・糞便中抗原測定(「ピロリ菌の検査いろいろ」参照)

  1. 上部消化管内視鏡検査胃カメラ)により、慢性胃炎がみられることを確認します。

ペニシリンアレルギーの方はアモキシシリン(ペニシリン系)が使えないため、一次除菌ができません。そのため、ペニシリンアレルギーのある方は二次除菌に用いるメトロニダゾールを先に使うことがあります。また、腎機能が落ちている人は慎重に投与していきます。

また、逆流性食道炎の症状がとてもひどいときにも治療を遅らせることがあります。先述したように、ピロリ菌は「ウレアーゼ」によりアンモニアを生み出すので、胃酸を中和する作用があります(「ピロリ菌とは―なぜ危険?感染経路は?」参照)。ピロリ菌を除菌すると胃液の酸度が元に戻るため、胃酸による症状が一時的に悪化することがあります。そのため、ピロリ菌を除菌して5年以内で逆流性食道炎の症状が20%程度の頻度で出現します。

ただ、逆流性食道炎があるからピロリ菌を除菌してはいけないというわけではありません。さらに言えばたとえこれらの症状が出ることがあったとしても、ピロリ菌の除菌には胃がんになってしまうリスクを抑えることができるという大きなメリットがあり、除菌を行うことがあります。

1次除菌・2次除菌については以下の図を参照してください。

ピロリ菌治療・診断の流れ

ピロリ菌治療・診断の流れ

H. pylori 感染の診断と治療のガイドライン 2009 改訂版から引用し、改変

1次除菌で70%以上の方が治癒できます。2次除菌まで行った場合は、全体の90%以上の方が治癒できます。かつては、80%以上が1次除菌で治癒できていました。しかし、最近はクラリスロマイシンへの耐性菌が増えてきたため、少し下がって70%台になってきています。

3次除菌をすることがありますが、まだ研究段階であり保険適用にはなっておらず、自由診療になります。2次除菌で失敗した人のうち「PPI(プロトンポンプ阻害剤)」「アモキシシリン」「レボフロキサシン」という薬剤の組み合わせで43%、PPI、アモキシシリンの高用量で54%が治療できたというデータが出ています。また、PPI、アモキシシリン、シタフロキサシンで70%程度が除菌できると報告されています。

自由診療の注意点は、初診料など含めてすべてが自由診療の料金になってしまうことです。そのため、通常はこの3次除菌には進みません。上部消化管内視鏡(胃カメラ)を年に1回程度行い、経過観察をしていきます。ピロリ菌がいることは承知の上で、早期発見を目指していくことが必要です。3次除菌を希望される方は、専門施設に問い合わせてください。

ランソプラゾールなどのPPIにはピロリ菌に対する静菌作用(細菌の増殖や発育を阻害すること)があります。この静菌作用が4週間は残ってしまうので、実際には除菌されていないのに陰性と判定されてしまう(偽陰性)ことがあります。ただし、現在の指針では4週間あけるとされていますが、2週間あければ良いという意見も3ヶ月あける必要があるという意見もあります。

  • 下痢・軟便 (10~20%程度)
  • 味覚がおかしくなる(味覚異常) (1~8%程度)
  • 肝機能障害 (1~5%程度)

下痢・軟便はそれなりに頻度の多い副作用です。ただし、これが出現したからといって中止することはなく、1週間は続けることがほとんどです。自分自身の経験では、今まで下痢・軟便で薬を中止した例は今までありません。また、アレルギー反応(ペニシリンアレルギーなど)や発熱なども稀に起きることがあります。

除菌後の再発は0.2~2%程度といわれています(ただし、そもそも最初の判定の段階で本当に除菌されていたのかどうかが議論になることもあります)。

また、除菌後にも胃がんが1~2%程度で発見されることがあります。この場合、除菌された時点ではすでにピロリが「胃がんの芽」を作ってしまっているケースであることが考えられます。この「芽」は、胃カメラではみつけられない程度の小さなものです。それが大きくなって発見されるケースや、除菌後もピロリ菌による「萎縮性胃炎」は続くため、それが胃がん発生の母地になっていることも考えられます。

除菌をすれば、胃がんになるリスクを減らせることは確かです。しかし、これは決して除菌後胃カメラによる経過観察を全くしなくていいという意味ではありません。この点に注意してください。

明治乳業のLG21®がピロリ菌に効果があるとされています。抗菌作用はあります。ただし、普通に食べる程度のヨーグルトでは菌の数を減らしていくことはできるかもしれませんが、完全にゼロにすることはできません。

したがって、「これが治療だ」と思ってヨーグルトを食べるのはあまりお勧めできません。そもそもピロリ菌の除菌治療は1週間で終わりますし、特に手術などを必要とするものではないからです。緑茶のカテキンも同様で、菌数を減らす作用はあるとされていますが、完全にゼロにはできません。

治療しなくてもピロリ菌が自然に治るというケースは、時々ではありますが起こります。自身の免疫作用によるものとも考えられますし、たまたま気管支炎など他の理由で飲んだ抗生物質が効いてしまった、ということも考えられます。また、先述したヨーグルトやカテキンとそれらの抗生物質を同時に摂ることにより、ピロリ菌に対する効果が生じたのかもしれませんが、これらは推測でしかありません。
自然に治るケースはあるものの、それを期待しすぎていろいろと試すよりは、1週間で終わる除菌治療をきちんと受けることをお勧めします。

記事1:ピロリ菌とは―なぜ危険?感染経路は?
記事2:ピロリ菌の検査いろいろ
記事3:ピロリ菌の治療―除菌について

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  • 山王メディカルセンター 院長、国際医療福祉大学 臨床研究医学研究センター教授、慶應義塾大学 医学部客員教授

    森下 鉄夫 先生

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