めんえきせいけっしょうばんげんしょうしょう

免疫性血小板減少症

同義語
特発性血小板減少性紫斑病,ITP
最終更新日:
2020年11月09日
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2020/11/09
更新しました
2020/09/15
更新しました
2017/04/25
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概要

特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)とは、血液中の血球のうち血小板だけが減少する病気で、難病に指定されています。

血小板には出血したときに止血するはたらきがあり、不足すると出血しやすく(止血しにくく)なります。特発性とは原因が不明であるという意味で、紫斑(しはん)とは肘や膝などをぶつけたときにできる青あざのことです。ほとんどの場合、自己免疫機序が関与することが分かっているため、免疫性血小板減少症と呼ばれることもあります。

また特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、診断から3か月未満の新規診断、3~12か月の持続期、12か月以上の慢性期に分類されます。

原因

血小板は骨の中の骨髄(こつずい)と呼ばれる場所でつくられます。

体内の免疫反応が過剰になると、自分の血小板を外敵であると勘違いして攻撃することがあります。その結果、血小板が減少してしまいます。しかし、なぜ体内の免疫反応が過剰になってしまうのかについては分かっていません。

新規診断・持続期ITP

新規診断・持続期特発性血小板減少性紫斑病(新規診断ITP<急性ITPとも呼ぶ>・持続期ITP)は、ウイルスに感染したり、予防接種を受けたりした後などに突然発症することがあります。小児に多くみられ、多くの場合は6か月以内に血小板数が正常に戻ります。

慢性ITP

血小板減少が12か月以上持続した場合、慢性特発性血小板減少性紫斑病(慢性ITP)となります。また、はじめから慢性型として見つかることもあります。慢性型は成人に多く、原因が特定できないことがほとんどです。しかし、胃の中に住み着く“ヘリコバクター・ピロリ菌”によって発症するという報告もあり、その場合はヘリコバクター・ピロリ菌を除菌することで血小板が増加することがあります。

症状

主な症状として以下が挙げられます。

  • 軽くぶつけただけで大きな紫斑ができる
  • 何もしなくても皮膚に点状~斑状のあざができる
  • 鼻血が出やすい
  • 口の中に血豆ができやすい
  • 生理が止まりにくい

など

健康診断において偶然、血小板の数値が低いことを指摘され、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断されることもあります。重症の場合は脳や消化管などから出血することがあり、この場合は命に関わります。また、これらの症状は突然起きることがあるので注意が必要です。

検査・診断

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が疑われる場合、血液検査やピロリ菌検査を行います。骨髄検査は必須ではありませんが、白血病など血液のがんと区別が必要なときに行います。

血液検査

血液に含まれる細胞の数や形などを調べます。このとき、自身の血小板を攻撃するような免疫物質(自己抗体)の有無を調べることもあります。

骨髄検査

血液をつくる工場である骨の中の骨髄を一部とって検査します。

うつ伏せの姿勢で局所麻酔を行い、腰骨に針を刺して骨髄を吸引し、顕微鏡を使って骨髄の中で血小板を作る細胞である骨髄巨核球の数や形態をチェックします。また、血小板が減るようなほかの血液の病気がないかどうかも調べます。

ピロリ菌検査

尿素呼気試験や胃カメラなどにより、胃にピロリ菌が感染していないか調べます。

治療

血小板が極端に少ない、重篤な出血の危険性が高い場合には入院治療が必要ですが、ほとんどは外来通院しながら治療を行います。

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)治療の目的は、出血が実際に起きている緊急時は止血すること、そのほかの場合は血小板数を増やし出血の危険を減らすことです。血小板の数値がある程度保たれている場合は、特に治療を行わず外来で定期的に採血を行いながら経過をみることが可能です。

年齢や症状、血小板の数値によって治療方法は大きく異なります。出血の副作用がある内服薬は注意が必要で、服用の際には事前に主治医に確認する必要があります。

ピロリ除菌療法

飲み薬で治療します。抗生物質と胃酸を抑える薬を1日2回、7日間連続で内服します。このとき、軟便や下痢、皮膚に発疹(ほっしん)ができることがありますが、4人に3人はこの治療でピロリ菌を退治できます。

しかし、約4人に1人はピロリ菌を退治できないため、別の治療によってピロリを除菌する必要があります。ピロリ菌を退治すると約6割の方は特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が治りますが、血小板が増えないこともあります。

免疫グロブリン療法

免疫グロブリン製剤を点滴することで、体内にある自分の血小板を攻撃してしまう抗体のはたらきを弱くします。約8割の方に治療効果が期待できます。ただし、効果の持続時間は約2週間と限られているため、この治療で血小板が回復している間にほかの治療を併用する必要があります。また、外科的治療が必要な場合には、一過性であるものの早期に効果が現れる本治療が適応になります。

免疫抑制療法

主に内服ステロイドで、過剰になっている免疫反応を抑えます。反応が早い場合でも血小板が増えはじめるまで内服してから数日かかります。大量のステロイドを服薬する場合には、真菌感染症やウイルス感染症に注意しながら治療が行われます。

この治療方法では不眠が問題になることもあり、特に高齢者では夜間せん妄を起こすことも少なくありません。ステロイドを長期大量服薬すると免疫力の低下、体重増加、気分障害などを合併します。一定期間後に減量されますが、完全に中止すると多くの場合、また血小板が減少します。数か月~数年といった長期間比較的多い量のステロイドを内服する場合は骨粗しょう症高血圧、血糖上昇、感染症などへの注意が必要です。顔が丸くなる(満月様顔貌)など容姿にも影響がでます。

脾摘療法

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)では、誤って自分の血小板を外敵と認識するため、抗体と呼ばれる免疫たんぱく質が血小板にくっつきます。

抗体が付着した血小板は胃の後ろ側にある脾臓(ひぞう)で壊されてしまいます。そのため、手術で脾臓を取り除いてしまうことで血小板が壊されるのを防ぎます。内服薬でコントロールが難しい場合はこの治療が検討されます。

トロンボポエチン受容体作動薬

新たな治療薬として血小板の産生を促すトロンボポエチン受容体作動薬が登場しました。

トロンボポエチン受動態作動薬は、主にステロイド療法や脾摘療法が無効(または行えない)とされる治療抵抗性の慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対して選ばれます。トロンボポエチン受容体作動薬には錠剤と注射剤があり、どちらのタイプも有効率は約80%といわれています。

リツキシマブ

副腎皮質ステロイドと異なる免疫抑制剤です。週1回、4週間の点滴で約6割の患者に血小板を増やす効果を期待できます。脾摘を避ける治療法として、世界で広く使われています。

ただし、過去にB型肝炎に感染した人は注意を要するため、主治医と相談ください。なお、約半数が2年以内に再発しますが、リツキシマブの再投与は可能です。

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