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東京都の認知症施策と東京都医師会の役割
多くの人口を抱える東京都では、多数の高機能病院など医療資源に恵まれている一方で、認知症高齢者の増加にともなう問題においても他の自治体とは異なる課題を抱えています。2025年には認知症高齢者が60...
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東京都の認知症施策と東京都医師会の役割

公開日 2016 年 12 月 28 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

東京都の認知症施策と東京都医師会の役割
平川 博之 先生

医療法人社団博朋会 ひらかわクリニック 理事長・院長/医療法人社団光生会 平川病院(南多摩医療圏認知症疾患医療センター) 理事長

平川 博之 先生

多くの人口を抱える東京都では、多数の高機能病院など医療資源に恵まれている一方で、認知症高齢者の増加にともなう問題においても他の自治体とは異なる課題を抱えています。2025年には認知症高齢者が60万人を超えるともいわれる中、地域の特性に合致した「地域包括ケアシステム」の構築を支援し、地域の抱える課題解決のために東京都の委員会や検討会でも尽力されている、東京都医師会・医療福祉担当の平川博之理事にお話をうかがいました。

東京都における「認知症疾患医療センター」の概要と特色

高齢者

「認知症疾患医療センター」の整備は、国の認知症施策のひとつとしてスタートしたものです。認知症疾患医療センターは、専門職の配置や高度な画像機器の設置など重装備な「基幹型」、人員配置や画像機器の設置等が緩和された「地域型」「診療所型」に類型されます。多くの道府県では、「基幹型」のセンターをひとつ設置し、その周りを「地域型」で固めるという形で進められています。

しかし、東京都は大学病院だけでも13を数え、そのほかにも重装備で高機能病院がいくつもあるため、当初から「基幹型」という総本山的な疾患センターは必要ないという認識がありました。さらに、東京都は人口が密集している上、認知症者の数も膨大です。そのため、1施設を基幹型に指定して東京都全体を統括するという方法では対応できません。

そこで、東京都はあえて「基幹型」は設置せず、都内12医療圏毎に「地域型」の認知症疾患医療センターを設置しました。しかし、当然ながら12か所では東京都全体をカバーできないため、現在は区市町村単位で認知症疾患医療センターを次々に指定しています。あと数か所を残すだけで島しょ地域を除く都内の全ての区市町村に認知症疾患医療センターが設置されます。

東京都の認知症疾患医療センターは「地域拠点型」と「地域連携型」の2タイプがある

東京都は、全区市町村に認知症疾患医療センターを設置していくにあたり、先に指定した12か所の医療センターは、「地域拠点型認知症疾患医療センター」という名称に変え、その後、区市町村毎に指定される施設は「地域連携型認知症疾患医療センター」としました。「地域連携型」には病院のみならず診療所も指定されています。

このように東京都には2タイプの認知症疾患医療センターが存在します。2つを国の類型にあてはめると、「拠点型」「連携型」ともに「地域型」となります。

地域拠点型認知症疾患医療センター(12施設)

【役割】二次保健医療圏の認知症医療の拠点

【機能】認知症疾患医療・介護連携協議会の開催、地域の医療従事者等向けの研修会開催、受診困難者等の訪問支援を行う認知症アウトリーチチームの配置

※地域拠点型は、所在する区市町村の地域連携型の機能を兼ねる。

医療機関名

担当地域

所在地

順天堂大学医学部附属順天堂医院

区中央部

文京区

順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター

区東部

江東区

東京都保健医療公社荏原病院

区南部

大田区

東京都立松沢病院

区西南部

世田谷区

浴風会病院

区西部

杉並区

東京都健康長寿医療センター

区西北部

板橋区

大内病院

区東北部

足立区

平川病院

南多摩

八王子市

国家公務員共済組合連合会立川病院

北多摩西部

立川市

杏林大学医学部付属病院

北多摩南部

三鷹市

青梅成木台病院

西多摩

青梅市

薫風会山田病院

北多摩北部

西東京市

地域連携型認知症疾患医療センター(35施設)

【役割】所在する区市町村における認知症医療・介護連携の推進役

【機能】専従相談員による専門医療相談、鑑別診断、身体合併症、行動・心理症状への対応、認知症医療・介護連携の推進、区市町村の認知症施策への協力

医療機関名

担当地域

三井記念病院

千代田区

聖路加国際病院

中央区

東京都済生会中央病院

港区

東京医科大学病院

新宿区

公益財団法人ライフ・エクステンション研究所付属永寿総合病院

台東区

中村病院

墨田区

荏原中延クリニック

品川区

国家公務員共済組合連合会三宿病院

目黒区

東京女子医科大学附属成人医学センター

渋谷区

あしかりクリニック

中野区

豊島長崎クリニック

豊島区

オレンジほっとクリニック

北区

あべクリニック

荒川区

慈雲堂病院

練馬区

いずみホームケアクリニック

葛飾区

東京さくら病院

江戸川区

武蔵野赤十字病院

武蔵野市

根岸病院

府中市

たかつきクリニック

昭島市

青木病院

調布市

鶴川サナトリウム病院

町田市

桜町病院

小金井市

国立精神・神経医療研究センター病院

小平市

多摩あおば病院

東村山市

国分寺病院

国分寺市

新田クリニック

国立市

福生クリニック

福生市

東京慈恵会医科大学附属第三病院

狛江市

東大和病院

東大和市

複十字病院

清瀬市

武蔵村山病院

武蔵村山市

桜ヶ丘記念病院

多摩市

稲城台病院

稲城市

菜の花クリニック

瑞穂町

奥多摩町国民健康保険奥多摩病院

奥多摩町

※東京都報道発表資料:認知症疾患医療センター一覧(平成28年7月1日現在)より引用(http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2016/06/20q6s401.htm

地域拠点型と地域連携型の違い

病院スタッフ

設置基準の相違点

(1) 人員配置

専門医、看護師、PSW(精神保健福祉士)、保健師等の配置は同じですが、拠点型では専任の臨床心理技術者が必要とされています。

(2) 検査体制

拠点型、連携型(病院)にはCT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)が必置となります。

(3) 病床

拠点型、連携型(病院)にはBPSD(認知症に伴う行動・心理症状)、身体合併症の急性期入院治療を行える一般病床、精神科病床を確保することが原則です。もちろん、連携型(診療所)には入院病床はありません。

機能の相違点

(1) 専門医療相談室

拠点型、連携型(病院)には専門医療相談室が必置となります。連携型(診療所)には専用電話回線を設置し番号公表が求められています。

(2) 認知症疾患医療・介護連携協議会

拠点型には本協議会を設置し、年2回の開催が義務付けられています。連携型には本協議会へ参加協力が求められています。

(3) 人材育成

拠点型には地域の病院勤務者(看護師等)、かかりつけ医向けの研修を年2回以上、多職種協働研修を年1回以上、その他の研修を含めて年6回以上の研修会を主催することが義務付けられています。連携型には研修への参加、講師派遣等への協力が求められています。

(4) アウトリーチ支援

拠点型には圏域内の区市町村から依頼があった場合は、PSW、看護師、医師等が支援対象者宅を訪問して対処するアウトリーチチームの設置が義務付けられています。連携型は区市町村が実施する認知症初期集中支援チーム等の事業に協力することが義務付けられています。

以上のように「地域拠点型」と「地域連携型」の間、さらに「地域連携型」の病院と診療所の間には設置基準と機能に違いがあります。

特に研修会の開催・人材育成、アウトリーチ機能については大きな違いがあります。

地域拠点型には比較的規模の大きな医療機関が多いので、病院スタッフの協力も得やすい環境にあります。ですから、研修会の企画・広報・運営、地域資源の把握、情報収集、多職種との地域連携、専門人材育成などのミッションを受けることができます。

アウトリーチチームについても同様です。チーム編成をしっかりバックアップできる人員配置があってこそ可能な事業です。

両者に共通する最も重要な機能「相談窓口」

認知症疾患医療センターのイメージとしては、認知症の鑑別診断やBPSD、身体合併への対応等が多いと思います。確かにこれらも大切な機能ですが、忘れてならない重要な機能は「相談機能」です。東京都は、認知症疾患医療センター運営補助金を地域拠点型、地域連携型のいずれについても付けていますが、その中には相談対応の専門職の人件費が計上されています。したがって、スタッフの少ない診療所でも相談職員を雇用することができます。

相談窓口ではご本人やご家族からの相談はもちろん、医療機関、介護サービス事業者を問わず間口を広げ、医療のみならず介護、暮らしなど多方面にわたる相談を受け付けています。また、相談を受けるだけでなく、必要なサービスや関係機関にしっかり結びつけるところまで対応することが求められています。

特に「拠点型」は、その圏域の認知症の保健医療福祉にわたる文字通り最後の拠点ですから相談窓口の果たす役割はより重要です。

地域住民の方々が最初に相談する窓口としては、区市町村、保健所等の行政機関、地域包括支援センター、ケアマネジャー、かかりつけ医など様々ですが、ニーズをキャッチできるところはいくつもあってよいと思います。その中で、総合的あるいは包括的に相談を受ける窓口として認知症疾患医療センターの相談窓口が位置づけられています。

ですから、認知症疾患医療センターの相談窓口には、ご本人やご家族のみならず、医療関係者、介護福祉関係者、行政等々の関係者、プロフェッショナルからの相談も数多く寄せられています。こういった相談を受けることで、地域資源の把握や多職種連携の足掛かりを作ることができます。

その延長で地域全体を束ね、しっかりバックアップをしていかなくてはなりません。

認知症の診断や病院探しにも役立つ「認知症ケアパス」とは

東京都は、認知症を理解するための基礎知識、自己チェックリスト、認知症に関わる保健医療福祉資源の利用の仕方などを掲載した「知って安心認知症」という冊子を作製しました。本誌の作成には私も関与させていただきました。現在、各区市町村ではこの冊子に、その地域で認知症に対応可能な保健医療福祉サービスの情報を追加掲載し、認知症の病期あるいは症状ごとに、具体的に地域内のどのような保健医療サービスを利用すべきかを案内する、いわば「認知症ケアパス」的な冊子に改編する作業をしています。

町田市や日野市でも工夫して独自の冊子を作っています。私の地元八王子市でも地域包括支援センターに配置された認知症地域支援推進員を中心に多職種が力を合わせて現在作成中です。

区市町村ごとに作成されている「知って安心認知症(認知症ケアパス)」は地域住民に広く配布することになっています。それを読んでいただくと、それぞれの地域でどんなときにどこに行けばよいのかがわかるようになっています。たとえば、下記のようなケースが考えられるでしょう。

  • この地域ではどの医療機関が認知症の相談に乗ってくれるのだろう?
  • 認知症の診断ができる病院は?
  • 認知症があっても白内障の手術をしてもらえる眼科はありますか?
  • 認知症があっても前立腺肥大の手術をしてくれる病院は?
  • 介護疲れを癒すため、ショートステイを活用したい。どこに行けばいいの?
ケアパス町田(町田市版より引用)
画像:東京都の認知症ケアパス「知って安心 認知症」(表紙)と町田市版の内容より引用

こうした地域密着型、ご当地情報は非常に重要です。目前に迫った超高齢者社会に向けて、国は地域包括ケアシステムの構築を推進しています。このシステムでは、たとえ要介護状態となっても、できる限り住み慣れた町で親しい人たちと共に暮らし続けていくという在宅療養が中心となります。

地域包括ケアシステムでは、皆さんのお住いの家が病院の病室や介護施設の居室となり、家の前の道路が病院や施設の廊下ということになります。お住いの家に医師や看護師、介護士、理学療法士などのリハビリスタッフが訪問し医療介護サービスを届けるというものです。そういった仕組みを概ね中学校区にひとつ作っていくのが地域包括ケアシステムです。地域包括ケアシステムを構築するということは、「ケア付きタウンの構築」、つまり街づくりという側面があります。

そのようなことからも、認知症ケアパスにより地域密着の認知症関連情報を公表することは、極めて重要と考えます。地域のケアパスづくりを支援するのも我々東京都医師会の役目のひとつです。

東京都独自の取り組み、認知症アウトリーチチームとは

東京都では国が定めた「新オレンジプラン」にあげられた施策に取り組むだけでなく、東京都独自のオプションを追加していますが、国の事業と東京都の独自事業が混在しているため、少しわかりにくくなっているかもしれません。

たとえば、国の事業では「認知症初期集中支援チーム」というものがあります。これは「区市町村認知症総合支援事業」として位置付けられており、区市町村に認知症の初期集中支援チームを設置するよう求めています。しかし、東京都ではこの事業が始まる前から「認知症早期発見・早期診断事業」を実施しており、その中に「認知症アウトリーチチーム」というものを作っています。

この両者の違いは微妙で、特に現場においては線引きが難しいところもあります。たとえば事業の目的について比較すると、以下のような違いがあります。

●アウトリーチチーム

認知症の方とご家族が地域で安心して生活できるよう、区市町村が配置する認知症支援コーディネーター等からの依頼に応じて認知症の疑いのある方を訪問し、アセスメント等を実施することによって早期の診断につなげるチーム。また、状態に応じて適切な医療・介護サービスに結び付ける等の取り組みを行う。

●初期集中支援チーム

認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けられるために、認知症の方やご家族に早期に関わるためのチーム。早期診断・早期対応に向けた支援体制を作る。

並べてみても違いが判りにくいと思います。アウトリーチチームは内12か所の地域拠点型認知症疾患医療センター内に設置されチーム編成等も固定的です。一方、初期集中支援チームは区市町村単位で編成され、設置場所も地域包括支援センターや地域連携型認知症疾患医療センターを含む、病院・診療所など様々です。

初期集中支援チームの「初期」とは、認知症の病相期としての初期・中期・後期といった意味ではなく、気付かれていないために「認知症と診断されていない方」、あるいは必要な医療サービスや介護サービスを受けていない方に「初めて」コンタクトをはかるといった意味での「初期」を指します。これに対して認知症アウトリーチチームは、初期の対応は勿論、受診拒否などで介入することが出来ずアウトリーチの支援でなければ対応不可能な方たちを支援します。時にはゴミ屋敷のような地域で問題となっている処遇困難ケースにも出務します。

いずれにせよ、両者の機能はオーバーラップする部分も多く、実際の現場では迅速な対応も求められますから、明確な線引きは難しいかもしれません。

 

東京都の認知症施策(平川 博之先生)の連載記事

公益社団法人日本精神神経科診療所協会の副会長、一般社団法人東京精神神経科診療所協会会長を長年にわたって務め、現在も厚労省の精神保健医療分野の各種調査研究事業やプロジェクトにも参画、研究報告や政策提言を行っている。1995年に老健施設ハートランドぐらんぱぐらんま開設後は、高齢者医療福祉、介護保険の分野も手掛け、公益社団全国老人保健施設協会では研修委員長として活躍。常務理事を経て現在は同協会の筆頭副会長。一般社団法人東京都老人保健施設協会会長。精神科医療、高齢医療福祉分野での実績が評価され2013年に厚生労働大臣表彰。2012年からは公益社団法人東京都医師会理事。東京都認知症対策推進会議委員、東京都認知症疾患医療センター選考委員、東京都介護保険審査会委員など20以上の東京都の委員会、審議会の委員を務めている。厚生労働省関係としては、現在医師需給分科会構成員、看護師需給分科会構成員、外国人介護人材受け入れの在り方に関する検討会委員。

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