インタビュー

認知症とは

認知症とは
橋本 律夫 先生

国際医療福祉大学 教授 国際医療福祉大学病院 神経難病部長

橋本 律夫 先生

報道で2025年問題(2025年頃人口の5人に1人が75歳以上になること)が取り上げられることも多くなり、私たちは高齢者の健康問題をますます真剣に考えなければならない時を迎えています。高齢者を取り巻く認知症治療の新たな課題について、国際医療福祉大学神経内科の橋本律夫先生にお話をうかがいます。

認知症とは

認知症の主たる原因は、異常たんぱく質が神経細胞に蓄積することによって神経細胞が徐々に死滅減少してゆく「変性疾患」と呼ばれるものです。しかし、脳出血や脳梗塞などが原因で神経細胞が損傷され、認知症の症状が出ることもあります。

<変性疾患による認知症>

アルツハイマー病

認知症の半分以上を占める。物忘れ、日時や場所がわからなくなるといった症状が徐々に進行する。脳のアミロイドβたんぱく質とタウたんぱく質というたんぱく質が異常蓄積することと、アセチルコリンという物質が減少することが原因。加齢に伴う自然な物忘れとアルツハイマー病の初期症状としての物忘れの区別は大変難しいとされる。アルツハイマー病はさらに下記に分類することができる。タイプにより病気の進行が異なり、治療方針も異なるために注意が必要。

・辺縁系タイプ・・・海馬萎縮が中心。高齢発症型(80歳以上)に多くアルツハイマー病の1割を占める。進行が遅く症状はもの忘れが中心のため、日常生活に大きな影響が及ばない場合薬物治療を積極的に行わないこともある。

・皮質タイプ・・・皮質萎縮が中心。若年発症型(65歳よりも前に発症)はこのタイプが多く、1~2割を占める。発症年齢や進行が一番早いこと、また症状として失語や失行(道具が使えないなど)、コミュニケーション障害がみられることなどから日常生活への影響が大きいため早期から積極的に薬物治療を行うことが多い。

・混合型・・・海馬と皮質の両方の萎縮がみられる。アルツハイマーのなかでもっとも多く、上記の2つに当てはまらないものはすべてこのタイプに入る。

レビー小体型認知症

認知症全体の約20%を占める。嗅覚障害やREM睡眠期異常行動症が初期症状のことがある。アルツハイマー病に似た症状を示すが、幻覚(特に幻視)や妄想が強いという特徴がある。また、パーキンソン病のように四肢や頸部が固くなって運動障害を起こしたり、血圧変動、排尿障害などの自律神経の障害を起こすこともある。パーキンソン病を長期間(数年~十数年)患っていた方が幻覚・妄想を呈しレビー小体型認知症と類似の症状を呈する場合があるが、この場合は「認知症を伴うパーキンソン病」として臨床的に区別している。「レビー小体」は、もともとパーキンソン病の特徴と考えられていた神経細胞の中にできる小さな塊のことで、α-シヌクレインというたんぱく質が異常蓄積したものである。

前頭側頭葉変性症

2つの異なる病気が含まれます。ひとつはピック病(タウたんぱく質が神経細胞の中で「ピック球」という構造をとって蓄積する)で、もうひとつはFTLD-U/ユビキチン陽性封入体を伴う前頭側頭葉変性症(TDP-43というたんぱく質が蓄積する)です。どちらも物忘れよりも自発性や関心の低下、言語障害、行動の変化などが主な症状。認知症全体としては数%だが、若年発症(65歳以下発症)の認知症の中では10%以上を占めるといわれる。

神経原線維変化型老年認知症

脳にタウたんぱく質だけ蓄積する。認知症全体の数%だが、高齢者になるほど多くなり90歳以上で発症する場合は20%といわれる。もの忘れが症状の中心で、ほとんどが非常にゆっくり進行する。

嗜銀顆粒性認知症

嗜銀顆粒はたんぱく質の異常蓄積の一種で、アルツハイマー病や神経原線維変化型認知症にもみられる。しかし、それらの疾患がないのに嗜銀顆粒だけがたくさん産生され、認知症を引き起こす場合を嗜銀顆粒性認知症とよぶ。頑固、易怒性など性格変化を伴いやすい。

<変性疾患以外の認知症>

血管性認知症

脳血管障害が原因で発症するため、変性疾患が原因ではない。脳血管障害とは、脳梗塞、長時間の脳の血液循環不全、脳出血など。また、軽いアルツハイマー病に脳血管障害が合併して認知症の症状が強く出ることもある。

その

・プリオン病 (クロイツフェルド・ヤコブ、狂牛病)

・感染症(神経梅毒、ヘルペス脳炎など)

・代謝性疾患 (肝脳症候群、アルコール関連障害、甲状腺機能異常、ビタミン欠乏症など)

「脳が変性する=異常たんぱく質が溜まる」とはどういうことか

脳では、産生されるたんぱく質によってさまざまな機能が働いています。そして、その産生されたたんぱく質は蓄積しすぎないようにコントロールされています。しかし、何らかの理由によって本来の蛋白に変化が生じ異常たんぱく質となってそれが蓄積してしまうと、脳の機能を障害することになります。

これは、雪が降って積もる情景にたとえればわかりやすいかもしれません。雪は、「降る雪が多い」か「溶かすことができない」時に積もっていきます。つまり異常蛋白蓄積症は、降る雪が多い(産生される異常なたんぱく質が多すぎる)か、雪を溶かせない(異常蛋白を排除する機能が働かない)かのどちらかの理由によって引き起こされているのです。