ぷりおんびょう

プリオン病

最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

プリオン病とは、感染性を有する異常型プリオンが脳に沈着する結果、脳神経細胞の機能が進行性に障害される致死性の病気です。ヒトにも動物にもみられ、動物のプリオン病としては牛海綿状脳症 (BSE)、いわゆる狂牛病がよく知られています。

ヒトのプリオン病は、孤発性、遺伝性 (家族性)、獲得性の3つに大別されます。孤発性には孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病 (sCJD)、遺伝性には遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病 (GSS)、致死性家族性不眠症 (FFI)、獲得性には医原性プリオン病、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病 (vCJD)、クールー病などが含まれます。

人口100万人あたり年間約1人の確率で発症し、日本においては毎年100~200人の発病が報告されています。地域差や男女差はなく、世界各国で孤発的に発生しています。

原因

プリオン病はその病因により、孤発性、遺伝性、獲得性に分類されます。ヒトのプリオン病の約8割を占める孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病は、2017年現在、原因はわかっておらず、患者さんに家族歴ならびにプリオン蛋白遺伝子の異常は認められません。

遺伝性プリオン病の場合、プリオン蛋白遺伝子 (PRNP) における変異により引き起こされます。常染色体優性遺伝形式をとりますが、遺伝的浸透率が低く、変異遺伝子を持っていたとしても発症しない場合もあります。PRNP遺伝子に変異が起こると、異常な立体構造を持つプリオン蛋白が産生されます。詳細なメカニズムはわかっていませんが、この異常型プリオン蛋白は凝集しやすく、さらには正常型プリオン蛋白に接触して異常型プリオン蛋白へと変換させる結果、脳内に蓄積し発症にいたると考えられています。

獲得性プリオン病は、ヒトからヒトへ感染したり、動物からヒトへ感染したりと二次的に引き起こされます。ただし、通常の接触によってヒトや動物からヒトへと感染することはありません。硬膜移植など医療行為を原因とした医原性プリオン病、牛海綿状脳症 (BSE) に汚染された牛肉の摂取によると考えられる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病などがあります。

症状

孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病の場合、急速に進行する認知症症状、ふらつき、ミオクローヌスという不規則なふるえなどが特徴的な症状として挙げられます。ほとんどの症例において、発症から急速に進行し、3〜4か月で無動性無言の状態になります。その後、全身衰弱・呼吸麻痺・肺炎などにより亡くなります。

遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病の場合、遺伝子の変異部位によって症状が少しずつ異なりますが、孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病と類似した症状を示します。ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)については、進行性の小脳失調を主徴とする病型が日本において多く認められます。

致死性家族性不眠症では、進行性の不眠、幻覚、体温上昇、多汗などの症状が出現し、その後認知症やミオクローヌスが現れ、1年前後で寝たきりの状態となります。発症後およそ2年以内に全身衰弱や肺炎などで亡くなる場合が多く見受けられます。
 

検査・診断

プリオン病の診断時に実施される検査には、脳波検査、脳MRI検査、脳脊髄液検査、遺伝子検査などがあります。孤発性、遺伝性、獲得性とそれぞれ所見が異なるところがあります。

脳波検査では、周期性同期性放電 (PSD) という脳波異常の有無、脳脊髄液検査では、髄液中のNSE、総タウ蛋白、14-3-3蛋白といった値が指標として用いられます。

また、患者さんの血液を用いて行う遺伝子検査は遺伝性プリオン病の診断において必須となります。しかし、現在のところ、プリオン病の確定診断にあたっては、患者さんが亡くなった後に行われる病理解剖にて得られた検体を用いての解析が必要となります。具体的にはウエスタンブロット法、免疫染色などによる異常型プリオン蛋白の同定が行われます。

治療

プリオン病の治療は、2017年現在、対症療法に限られており、進行を抑制することが証明された治療法はありません。正常型プリオン蛋白から異常型プリオン蛋白への構造変化や蓄積を阻害する薬剤、異常型プリオン蛋白の凝集性を抑制する薬剤、細胞変性を抑制する薬剤などさまざまな研究開発が進められています。

しかし、これまでの実施された臨床試験 (治験) において、いまだ明らかな有効性が確認されたものはありません。そのため、ふるえなどの症状を軽減する治療や支持的な治療が行われます。

専門医による治療はもちろんですが、心理カウンセラーや医療ソーシャルワーカー、遺伝性プリオン病の場合には臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーなど、さまざまな専門家との連携をはかり、患者さんとそのご家族に対する社会的支援を行うことも大切です。

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