概要
ビタミン欠乏症とは、その名のとおり体に必要なビタミンが不足する病気です。
主な原因は食生活の乱れなどによりビタミンの摂取量が不足することですが、消化管の障害によりビタミンの吸収が阻害されビタミンが不足することもあります。また、妊娠などによってビタミンの必要量が増加することもビタミン欠乏症の原因となります。
ビタミンには、ビタミンB群やビタミンCなどの水溶性ビタミン9種類とビタミンA、D、E、Kの脂溶性ビタミン4種類があります。ビタミン欠乏症によって現れる症状は、どの種類のビタミンが不足するかによって大きく異なるため、注意しなければならない欠乏症の1つです。
原因
ビタミン欠乏症の主な原因は、食生活の乱れなどによるビタミン摂取量の不足です。私たちの体内ではビタミンを作り出すことはできないため、生きていくうえで必要なビタミンは飲食物から補給する必要があります。特に水溶性ビタミンであるビタミンB群やビタミンCは体内に蓄えることができないため、毎日適量を摂取することが必要です。そのため、極端な食事制限によるダイエット、がんなどの病気による食欲不振、アルコール多飲による食事の著しい偏りなどが生じるとビタミン欠乏症を発症しやすくなります。
また、飲食物から取り入れられたビタミンは胃や小腸などの消化管で体内に吸収されます。そのため、これらの消化管の病気によって吸収能力が低下すると、十分なビタミンを摂取していたとしてもビタミン欠乏症に陥ることがあります。
そのほか、妊娠中などビタミンの必要量が増加する時期にもビタミン欠乏症が起こりやすくなります。
症状
ビタミン欠乏症の症状は、不足するビタミンの種類によって大きく異なります。
具体的には、脂溶性ビタミンであるビタミンAが欠乏すると夜盲症(暗い所で目が見えにくくなる)や皮膚・粘膜の乾燥などの症状が、ビタミンDが欠乏するとカルシウムの吸収量が低下するため骨が脆弱化する“くる病”が引き起こされます。また、ビタミンEの欠乏では貧血や脱毛、ビタミンKの欠乏では易出血性(出血しやすくなる)が現れます。
一方、水溶性ビタミンであるビタミンB1が欠乏すると脳や神経に異常が生じるウェルニッケ脳症や脚気などが、ビタミンB2の欠乏では口角炎や口内炎などが起こりやすくなります。そのほか、欠乏すると貧血や下痢、皮膚炎などを引き起こすビタミンもあります。
また、水溶性ビタミンの一種である葉酸は胎児の神経の発達に必要な栄養素で、妊娠初期に母体が葉酸欠乏状態に陥ると神経の発達に異常が生じ、二分脊椎や無脳症などの神経管閉鎖障害の発症リスクが高くなることが分かっています。
検査・診断
ビタミン欠乏症の確定診断には、血中のビタミン濃度を測定する血液検査が必要となります。また、ビタミン欠乏症の原因を探るため、全身の栄養状態を評価する目的で血中のたんぱく質や脂質量を調べる血液検査や、消化管の異常の有無を調べるために内視鏡検査や画像検査などが行われることもあります。
一方で、ビタミン欠乏症は欠乏するビタミンの種類によって全身にさまざまな症状が引き起こされます。現れた症状の原因を詳しく調べるため、必要に応じて頭部CT検査などが行われることもあります。
治療
ビタミン欠乏症の治療では、欠乏したビタミンを必要な量摂取できるよう食生活の改善を行うことが大切です。軽度な欠乏であれば食生活の改善のみで症状が軽快する場合も多いですが、重症の欠乏症では欠乏したビタミン製剤やサプリメントの内服治療、点滴治療などが行われます。
予防
ビタミン欠乏症を予防するには、栄養バランスのよい食生活を心がけることが大切です。野菜や果物などさまざまな食材を多く取りましょう。
また、妊娠中などビタミンの必要量が増加している時期には食事だけで必要なビタミンを摂取するのが困難なケースもあります。そのような時期にはビタミンが含まれるサプリメントなどを積極的に活用することも大切です。
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