うぇるにっけのうしょう

ウェルニッケ脳症

最終更新日:
2022年08月05日
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2022/08/05
更新しました
2017/04/25
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概要

ウェルニッケ脳症とは、ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって意識障害、失調性歩行、眼球運動障害などが引き起こされる脳の病気です。

アルコール依存症の人や偏食のある人などにみられ、ビタミンB1の欠乏の程度が重度になると、脳の奥のほうに位置する脳幹部、視床、乳頭体といった場所に小さな出血を伴う病巣が生じます。その影響から、意識障害、失調性歩行、眼球運動障害などの症状が急激に現れます。

ウェルニッケ脳症は早期にビタミンB1を大量に投与すれば回復しますが、見逃された場合、昏睡(こんすい)をきたして死に至ることもあります。

死に至らなくても、治療が遅れると記銘力障害や失見当識、作話などを特徴とするコルサコフ症候群に移行します(移行率56~84% )。コルサコフ症候群へ移行後は回復が難しくなるため、ウェルニッケ脳症の段階で早期発見し、早期治療を行うことが重要です。

原因

ウェルニッケ脳症はビタミンB1が重度に欠乏することで発症します。

ビタミンB1が欠乏する主な原因としてアルコール依存症が挙げられ、原因のおよそ半数をアルコール依存症が占めるとされています。アルコール依存症の人は、長期にわたってアルコールを過剰に摂取しているために、ビタミンB1の消化管での吸収や肝臓での貯蔵が妨げられ、その結果としてビタミンB1が欠乏します。また、アルコール依存症の人はバランスの取れた食事をしていない場合も多く、このこともビタミンB1の欠乏の原因になります。

そのほか栄養失調状態にあるとき、ビタミンB1の需要が増えるとき、腸の吸収障害や肝臓の代謝障害があるときにビタミンB1が欠乏することがあります。

アルコール過剰摂取や栄養失調以外の原因には、偏食、消化管切除後、胃バイパス術後、重度の嘔吐(妊娠時のつわりなど)、授乳、激しい運動、高齢者、甲状腺機能亢進症、長引く下痢、肝機能不全、がんエイズ透析、などが挙げられます。

症状

ウェルニッケ脳症の典型的な症状は、意識障害、失調性歩行、眼球運動障害の3つです。発症するとこれらの症状が急激に出現します。ただし、3つの症状が全部そろうのは3分の1以下とされています。

  • 意識障害……錯乱、傾眠など
  • 失調性歩行……ふらつきやしゃべりにくさなど。
  • 眼球運動障害……細かな目の振るえや目の動きの制限

これらのほか、振戦(意思とは関係なく体の一部が規則的に振るえる)、興奮、起立性低血圧、低体温、失神などを起こすこともあります。ビタミンB欠乏による末梢神経の障害(脚気)もみられることがあります。

コルサコフ症候群に移行した場合には、記銘力障害(最近の出来事を忘れる)、作話(覚えていないことを隠そうとして話を作ろうとする)、失見当識(自分が置かれた場所や状況、時間が認識できない)などの症状が現れます。

検査・診断

症状(意識障害・失調性歩行・眼球運動障害)、原因となり得る状態(低栄養アルコール依存症など)から、ウェルニッケ脳症を疑います。

頭部MRIでウェルニッケ脳症に特徴的な脳の変化をチェックし、血液検査でビタミンB1ばかりでなく、ほかの病気との鑑別のために、血糖値、電解質、血算、肝機能などをチェックします。

治療

ウェルニッケ脳症はビタミンB1の欠乏によって生じるため早期にビタミンB1の大量投与が行われます。症状からウェルニッケ脳症の可能性を疑ったら、治療開始が遅れると高率にウェルニッケ・コルサコフ症候群に移行してしまうことから、検査結果を待たずにビタミンB1を大量に静脈注射をすることによってビタミンB1投与を開始します。ウェルニッケ脳症の患者は低栄養になっていることもあるため、ビタミンB1だけでなく、そのほかのビタミンや電解質、糖質などを同時に投与することもあります。原因がアルコール依存症である場合には、飲酒を止める必要があります。

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