概要
コルサコフ症候群は、ビタミンB1(チアミン)が不足することによって起こる病気です。その急性期がウェルニッケ脳症で、慢性期になるともの忘れを主な症状とするコルサコフ症候群へ移行します。これら2つの病気を併せて“ウェルニッケ・コルサコフ症候群”と呼ぶこともあります。
コルサコフ症候群になると、新しいことを覚えられない、自分が今いる場所や日時などが分からない、作り話をするといった症状がみられます。
ウェルニッケ脳症にかかった人の56~84%がコルサコフ症候群へと移行すると考えられています。コルサコフ症候群に至ると回復が難しいため、ウェルニッケ脳症の段階で早期発見し、適切に治療することが大切です。
原因
コルサコフ症候群の原因となる病気であるウェルニッケ脳症は、主にアルコール依存症によるビタミンB1(チアミン)不足によって引き起こされます。
チアミンはブドウ糖の代謝に不可欠な物質であり、不足すると脳の障害を引き起こします。アルコールはチアミンの吸収や活性化を阻害するうえに、アルコール依存症の人は食事を十分に取らず低栄養となる傾向にあるため、チアミンが著しく不足し、ウェルニッケ脳症を発症するリスクが高まります。
そのほか、がんや消化管の手術後、重篤な“つわり”、偏食、不適切なダイエットなどによってチアミンが不足するケースもあります。
症状
コルサコフ症候群の主な症状は以下のとおりです。
- 重度の近時記憶の障害(最近のことが思い出せない)
- 逆行性健忘(昔のことが思い出せない)
- 失見当識(日時などが分からない)
- 作話(もの忘れを取り繕うために意図せずして話を作ろうとする)
また、ウェルニッケ脳症の症状が残ることもあります。
重度の近時記憶の障害・逆行性健忘
コルサコフ症候群でみられる記憶障害は、特に重度の近時記憶の障害が生じることが特徴です。新しいことを記憶する力が損なわれてしまう(記銘力障害)ため、最近の出来事が思い出せなくなります(前向性健忘)。
また逆行性健忘がみられるのも特徴の1つです。病気の発症など、原因となる出来事より前の記憶を忘れてしまいます。
失見当識
いま何時なのか、ここがどこなのか分からないなど、時間や場所などについて自分が置かれている状況が分からなくなってしまうことがあります。
作話
コルサコフ症候群の特徴的な症状として“作話”が挙げられます。作話とは、実際には起きていないことをあたかも事実のように話すことです。記憶障害であることを患者本人が認めず、作話することで周囲とのコミュニケーションを成り立たせている場合があります。
ウェルニッケ脳症の症状
コルサコフ症候群の原因となる病気であるウェルニッケ脳症の主な症状には、意識障害、眼球が細かく震えるなどの眼球の異常な動きや眼筋の麻痺(眼球運動障害)、歩行時のふらつき(失調性歩行)が挙げられます。コルサコフ症候群では、こうした眼球運動障害や失調性歩行が引き続きみられる人もいます。
検査・診断
ウェルニッケ脳症やコルサコフ症候群が疑われる場合は、血液検査によるビタミンB1(チアミン)欠乏の有無や画像検査、問診を行います。
画像検査では頭部のMRI検査を行い、脳の視床内側などにチアミンの欠乏による脳障害を確認します。を確認します。問診では症状や、アルコールの多飲歴などを聞いて診断の参考にします。
治療
コルサコフ症候群を発症すると治療をしても回復が困難なため、原因となる病気であるウェルニッケ脳症を発症した早期の段階で、適切な治療を受けることが重要です。ウェルニッケ脳症の治療法としては、欠乏しているチアミンを投与する補充療法を早期から行います。
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