概要
口角炎とは口角(唇の端)に炎症が起こり、赤く腫れる、皮がむけるなどの症状が現れる病気です。片側の口角に生じる場合と、両側の口角に生じる場合があります。軽度であればかゆみ程度の症状ですが、症状が強くなると口角が裂けてかさぶたができ、痛みを感じることもあります。
口角炎はこのような口角の炎症の総称であるため特定の医学的な病名を指すものではありません。時に細菌やウイルスなどの感染が原因になることもあり、特にカンジダと呼ばれる真菌によるものはカンジダ性口角炎と呼ばれます。
そのほかには口角への刺激、乾燥、栄養不足、アレルギーなどが原因となることがあります。唇は乾燥しやすい部位であるため誰でもかかることがある病気ですが、糖尿病や肝疾患などの病気、免疫を抑制するような薬剤の使用でかかりやすくなることが知られています。
原因
口角炎の主な原因には、乾燥、口角への機械的な刺激(義歯やかみ合わせなど)、細菌、真菌、ウイルスなどの感染、栄養不足、アレルギーなどがあります。また、唇をなめたり触ったりするくせは唇の乾燥や刺激を引き起こし、口角炎を引き起こしやすくします。
常に体内にあるとされるカンジダ菌への感染によるカンジダ性口角炎は、健康な人であればあまりかかることはありません。しかし、加齢や全身性の病気、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤などの使用により免疫力が低下することで起こることがあります。カンジダ性口角炎にかかりやすくなる全身性の病気には糖尿病、肝疾患、HIV感染症などがあり、なかなか治らない口角炎をきっかけにこれらの病気が見つかることもあります。
症状
口角炎の主な症状は、口角の赤い腫れ、びらん(皮がむけること)、裂傷、かさぶたなどです。軽症の場合はかゆみ程度の症状で済みますが、症状が強いと強い痛みを感じることもあります。
カンジダ性口角炎の場合は、口角に白い苔状の病変がみられることがあります。
検査・診断
口角炎は症状に基づいて診断され、治療が始められることが多いです。カンジダ菌やヘルペスウイルスなどの感染が疑われる場合は、真菌の有無を顕微鏡で観察したり、培養検査やウイルスを検出する検査などを行ったりします。また、食品や化粧品などによるアレルギーが疑われる場合はパッチテストやアレルギー検査を行うこともあります。
まれに口角にできた腫瘍が、口角炎のように見えることがあります。腫瘍が疑われる場合は、皮膚の一部を採取して組織を観察する生検が行われることもあります。
治療
口角炎の治療は原因によって異なります。休息や生活習慣の改善、市販薬の使用などのセルフケアで症状が改善することも多いですが、症状がなかなか改善しない場合や、再発を繰り返す場合には皮膚科や歯科口腔外科の専門医による診断や治療が必要になることがあります。
セルフケア
乾燥や皮膚への刺激、アレルギーなどが口角炎の原因になっている場合は、その原因を取り除きます。その後は、辛いものなど口角炎への刺激となる食品を取らないようにしたり、かさぶたを刺激しないようにしたりして患部の安静を保ちます。また、清潔を保つために適度の洗浄を行います。
必要に応じてワセリンなどで病変を保護したり、口角炎に効能・効果がある市販薬を使用したりすることも有効です。
専門医による治療
口角炎の原因となっている刺激を取り除くことを指導したうえで、感染がみられる場合は原因菌に対する抗菌薬を使用します。また、ビタミンなどの栄養不足が口角炎を引き起こしている場合には、ビタミン剤による補充を行うこともあります。口角炎による痛みが強い場合は、痛みを和らげるための保護薬(ワセリンなど)やステロイドの外用剤が用いられることもあります。
長引く口角炎は内科的な病気(糖尿病や肝疾患など)が原因になっていることもあるため、口角炎の原因となりうる病気を診断し、治療を行うこともあります。
予防
口角炎は乾燥、栄養不足、ストレスや疲労、紫外線などのさまざまな原因によって引き起こされることがあります。これらを改善するような生活習慣を心がけ、唇をなめたり触ったりするくせがある場合は意識して改善するとよいでしょう。
なかなかよくならない口角炎は何らかのアレルギーや、内科的な病気が原因になっていることもあります。原因を知るためにも、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
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