概要
義歯とは、いわゆる入れ歯のことで、欠損した歯の機能を補う着脱可能な補綴装置です。補う歯に応じて片顎(上顎もしくは下顎)の歯のすべてを補う全部床義歯(フルデンチャー、コンプリートデンチャー)と一部を補う部分床義歯(パーシャルデンチャー)に分けられます。
また、義歯床の材質によってレジン床義歯と金属床義歯に分けられます。さらに、歯根や歯冠の一部、インプラント体の上を被覆する義歯をオーバーデンチャーと呼び、残存歯の移動や下顎の偏位などにより咬合関係の調和が確保されていない場合、新義歯の製作に先立ち、顎位の修正や咬合の改善を行なう目的で装着する義歯を治療用義歯といいます。
構造
義歯の歯を人工歯、口腔粘膜を覆う部分を床と呼びます。部分床義歯には、義歯が外れないように残存歯に装着するクラスプ(鉤)と呼ばれる維持装置、歯列内の離れた位置にある床と床や維持装置とを連結する大連結子、クラスプを義歯床や大連結子と連結する小連結子があります。そのほか、前歯の切縁にレストのようにかけるフックや前歯の舌面に設置されるスパーと呼ばれる間接支台装置を設置する場合もあります。
クラスプは製作方法によって鋳造鉤(キャストクラスプ)と線鉤(ワイヤークラスプ)に分類され、さらにその形状によって名称がつけられています。
一般的によく用いられるのはエーカースクラスプ(レスト付2腕鉤)で、鉤歯(鉤をかける歯)を抱きかかえる2本の腕と、レストと呼ばれる突起を鉤歯の咬む面にのせた形をしています。大連結子は幅5mmほど、厚さ1.5mmほどのかまぼこ状の断面をしたバーと、バーより幅が広くて厚さ1mmほどのプレートに分けられます。
制作方法
口腔内診査
口腔外診査
正面からみた顔の外形と左右対称性、側面からみた顔の外形、口唇の形態、緊張度、口角びらん、 亀裂、潰瘍の有無などを検査します。また、旧義歯の義歯床の適合状態、形態や大きさ、人工歯の排列状態・色調や形態、咬合関係、舌房、清掃状態、審美性、破損の有無などを診査します。
軟組織診査
顎堤や口蓋粘膜、咽頭、舌、口腔底、頬粘膜の形態異常や炎症症状などの有無を調べます。欠損部顎堤の形態や色調、触診による被圧縮性、骨隆起(口蓋隆起、下顎隆起など)の部位、大きさ、被覆する粘膜の性状を調べます。
残存歯とその歯周組織診査
触診、温度診、打診、エックス線写真検査などにより、う蝕や歯髄疾患の有無と程度を調べます。歯の動揺度、周囲歯肉の発赤・腫脹、プロービングデプス測定、プラークインデックスなどにより、口腔衛生状態、歯周疾患の有無と程度を調べます。垂直的および水平的咬合関係、残存歯の早期接触、咬頭干渉、咬合性外傷の有無などの咬合関係を調べます。また、補綴装置の形態、適合性、審美性なども調べます。
前処置
骨の鋭縁や骨吸収不全、大きな骨隆起やアンダーカットがある場合には歯槽骨を整形します。義歯調整や粘膜調整で改善できない義歯性線維症やフラビーガム、小帯の位置異常、保存不可能な残存歯、残根、粘膜下の異物を必要に応じて除去(切除)します。
部分床義歯では、レストシートの形成、支台歯となる歯のう蝕予防および歯冠形態の改善(維持力、把持力の確保)のため、歯冠補綴をする場合があります。また、早期接触や咬合干渉などの咬合接触異常がある場合には、咬合調整を行います。
印象採得
概形印象採得
顎堤の大きさに準じた既製トレーを選択し、口腔内で試適・修正後、操作性に優れるアルジネート印象材による解剖的概形印象を採る方法と熱可塑性で辺縁形成が可能なコンパウンド印象材による機能的概形印象を採る方法とがあります。
精密印象(最終印象、完成印象)採得
義歯製作のための作業模型を得るために採られる印象であり、一般には、個人トレーを用いて、軟化した辺縁形成用コンパウンド印象材で辺縁形成(筋圧形成)を行った後、流動性のよいラバー系印象材や酸化亜鉛ユージノール印象材で印象採得を行います。また、義歯床や咬合床を用いて印象採得するダイナミック印象や咬合圧印象などもあります。
咬合採得
顎関節を含めて生体の上下顎間の位置関係(顎間関係)を記録することを咬合採得といい、仮想咬合平面の設定、垂直的顎間関係の記録、水平的顎間関係の記録、標準線の記入の順に行います。
ろう義歯試適
上下顎義歯を別々に手圧下で試適し、疼痛の有無を調べた後、義歯床形態、咬合関係、審美性、発語、嚥下などを検査します。
義歯完成
上下顎義歯を別々に試適し、着脱時の障害の有無を調べます。
- 義歯床の床縁の長さ
- 小帯部の形態
- 床翼部の厚さ
- 床後縁と硬軟口蓋境界および翼突下顎ヒダとの関係
- 頬側床縁と頬筋付着部、頬小帯との関係
- 頬側後縁と咬筋との関係
- 唇側床縁と口輪筋の付着部、上唇小帯との関係
- 臼歯部舌側床縁と顎舌骨筋付着部との関係
- 上顎義歯頬側後方床翼と筋突起との関係 など
まず中心咬合位での咬合の修正、次いで側方運動、前後運動時の咬合の調整を行います。調整後、中心咬合位でのタッピング運動、側方運動時に義歯が安定することを確認します。
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