概要
咬合性外傷とは、歯周支持組織の負担能力を超えた過度の咬合力や他の力によって生じる深部歯周組織の損傷のことです。深部歯周組織とはセメント質や歯根膜・歯槽骨のことで、歯周炎野ある部位で咬合外傷を起こした場合これら組織が受けるダメージは、より大きくなります。
原因
咬合性外傷は、原因によって一次性と二次性に分類されます。
一次性咬合性外傷とは、正常な歯周支持組織をもつ歯に対して異常な力が作用して起こる損傷です。
二次性咬合性外傷は、歯周囲炎の進行により正常な歯周支持組織が減少した歯に異常な力が作用して起こる損傷です。二次性咬合外傷は歯に通常の力がかかっただけでも生じることがあります。
症状
咬合性外傷では、歯の動揺の増加、歯の病的移動、歯の咬耗、咀嚼筋群の緊張亢進、歯周膿瘍形成促進、打診音の変化(濁音)、顎関節の変化などの症状が生じます。
検査・診断
まず問診によって、歯の知覚亢進などの不快症状の有無、食片圧入の有無(歯の隙間に食べ物が詰まっていないかの確認)、歯を喪失していれば理由と時期・未処置期間を確認します。このとき、グラインディング(歯ぎしり)、クレンチング(歯の食いしばり)といった習慣の有無も聞きます。
次に口腔外診査として顔貌や姿勢の非対称性を視診し、咀嚼筋・口腔周囲筋の触診で過緊張の有無を評価します。口腔内診査では歯周組織検査として歯の動揺度、プロービングデプス、出血点の有無、付着歯肉幅などを確認します。また咬合状態を評価するためスタディモデルによる模型分析や、口腔内で下顎運動の分析をおこないます。
スタディモデルの分析
- 歯の欠損数
- 歯の大きさ
- 歯列弓の状態
- 接触点の状態
- 位置異常歯
- 咬耗面
- 臼歯部咬合の有無
- 開咬部位
- オーバーバイト(前歯のかみ合わせの深さ)
- オーバージェット(前歯のかみ合わせ状態)
口腔内での下顎運動時の分析
- 早期接触部位
- 前方、偏心運動の様式と干渉
- フレミタス(咬合時の歯の揺れの有無)
- 開口経路
- 最大開口量
またレントゲン上で、歯槽骨や歯根の吸収が認められることも咬合性外傷の診査に重要な所見となります。
以上の多面的な所見から総合的に評価して、咬合性外傷か診断します。
治療
細菌感染や歯周炎などが見られる場合には、これら治療を実施します。歯のグラつきが生じている場合は隣の歯と連結固定したり、不正咬合が原因となっている場合は各種矯正治療を実施したりします。
グラインディングやクレンチングなどが原因の場合には、リラクセーションやリハビリテーションなどを実施して改善を狙います。
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