にぶんせきつい

二分脊椎

最終更新日:
2022年05月27日
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2022/05/27
更新しました
2017/04/25
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概要

二分脊椎(にぶんせきつい)とは、生まれつき脊椎(背骨)の形に異常がみられ、本来脊椎の中の脊柱管にあるはずの脊髄神経(せきずいしんけい)が骨の外に出たり、骨の外の皮下脂肪と連続したりしている状態を指します。構造的に脊椎の一部分が2つに分かれていることが多いことから、二分脊椎という病名がつけられました。

二分脊椎には、皮膚表面から脊椎の異常がみえる“顕在性二分脊椎”と、皮膚表面からは脊椎の異常がみえない“潜在性二分脊椎”の2つのタイプがあります。顕在性では出生時にすでに欠損した皮膚から脊髄が見えますが、中でも脊髄神経が剥き出しになっているものを脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)もしくは脊髄披裂(せきずいひれつ)といいます。

二分脊椎は、脊椎のうち腰からお尻の部分にあたる腰椎(ようつい)仙椎(せんつい)にもっとも起こりやすく、脊髄神経の癒着や牽引、圧迫などによって、下肢の運動障害や感覚障害、膀胱直腸障害など多彩な症状が現れます。そのため、小児科、脳神経外科、整形外科、泌尿器科、リハビリテーション科などによる包括的な治療を要します。

脊髄髄膜瘤は、国の小児慢性特定疾病および難病に指定されている病気で、有病率は分娩10,000件あたり約5件と報告されています。

原因

二分脊椎は胎児が成長する過程で、脳や脊髄などの中枢神経系のもとである神経管が完全に閉じず、開いたままになることで生じます。

神経管の形成異常の主な原因として葉酸の摂取量不足が挙げられ、妊娠前から葉酸サプリメントを十分に摂取することで、脊髄髄膜瘤の発生リスクを70~80%低減できるといわれています。一方、潜在性二分脊椎の発生と葉酸との因果関係は明らかではありません。

そのほか、肥満、糖尿病、妊娠前期の高熱発作、てんかん薬の内服、放射線被ばく、ビタミンAの過剰摂取などの環境要因や、遺伝子異常が原因になる場合もあります。

症状

二分脊椎では、脊髄神経の癒着や牽引、圧迫などによって多彩な神経症状が現れます。ただし、顕在性と潜在性で症状の種類や出方が異なります。

顕在性二分脊椎

出生時に異常のある脊椎部の皮膚が欠損し、そこから脊髄が見えます。また、出生時にすでに下肢の運動麻痺や感覚麻痺、膀胱直腸障害(尿が出にくい・ひどい便秘など)などの神経症状を認め、多くは水頭症やキアリ奇形2型を合併します。

水頭症は脳内に髄液が過剰にたまった状態を指し、脊髄神経が露出する脊髄髄膜瘤では80~90%の症例で水頭症が発生します。水頭症になると嘔吐やけいれん、知的障害、学習障害などが生じる場合があります。

キアリ奇形は小脳の形成異常に関連した奇形です。過半数の患者さんに認められ、無呼吸発作や喘鳴(ぜんめい)といった呼吸障害や、嚥下障害(えんげしょうがい)がみられることがあります。

潜在性二分脊椎

潜在性では脊髄が正常な皮膚に覆われているため、肉眼的に脊髄が見えませんが、異常のある脊椎部に膨らみ(脂肪腫)やくぼみなどの皮膚症状を認めることがあります。

出生時に神経症状がみられることは多くありませんが、脂肪腫によって脊髄の成長が妨げられたり、癒着した脊髄が身長の伸びについていけずに引き伸ばされたり(脊髄係留)して、膀胱直腸障害が次第に現れてきます。中には下肢の運動障害や感覚障害(痛み、しびれなど)、関節変形などが現れる場合もあります。水頭症やキアリ奇形を合併することは基本的にありません。

検査・診断

顕在性二分脊椎では、出生時に欠損した皮膚から脊髄が見えているため、視診によって診断可能です。最近では胎児診断が発達したことから、出生前の胎児超音波検査やMRI検査などによって発見できる場合もあります。

また、出生時には水頭症やキアリ奇形などの合併症の有無を含め、脊髄や脳の状態を正確に把握するためにCT検査やMRI検査が行われます。

潜在性二分脊椎においては、皮膚の上から超音波検査で発見できる場合もありますが、正確に診断するためにはMRI検査が必要です。二分脊椎の程度や範囲を把握するためにCT検査も行われることがあります。

治療

顕在性二分脊椎では出生後すぐに手術が必要で、中枢神経系の感染や露出した脊髄神経の新たな障害を防ぐために、外表に出ている神経を硬膜内に収納する修復術が行われます。

また、水頭症を伴っている場合には脳室腹腔シャント術、キアリ奇形によって呼吸障害がみられる場合に後頭下減圧術が行われます。

潜在性二分脊椎においては、脊髄脂肪腫の切除や脊髄係留の解除を目的とした手術が検討されます。

顕在性も潜在性も下肢の運動障害や変形、膀胱直腸障害、皮膚の潰瘍(かいよう)褥瘡(じょくそう)などに対して、それぞれの症状に応じた治療やリハビリテーションが適宜行われるため、生涯にわたって継続的な診療や経過観察が必要となります。

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