すいとうしょう

水頭症

最終更新日:
2024年05月28日
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2024/05/28
更新しました
2020/02/18
更新しました。
2017/04/25
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概要

水頭症とは、脳や脊髄の表面を流れる“脳脊髄液”の循環や吸収に異常が生じ、脳脊髄液を産生する場である“脳室”に脳脊髄液が溜まって拡大する病気です。

脳や脊髄の表面は、“くも膜”と呼ばれる薄い膜で覆われており、くも膜と脳や脊髄の表面の隙間には“くも膜下腔”という空間があります。くも膜下腔内は脳脊髄液という液体で満たされており、脳や脊髄を外部の衝撃から守る重要な役割を果たしています。脳脊髄液は、脳の中にある脳室という空間で産生され、脳室の狭い通路を取ってくも膜下腔へ流れ込みます。そして、脳や脊髄の表面を循環すると、毛細血管に吸収されていきます。通常、成人では約150ml、小児では約100mlの脳脊髄液が循環し、脳室では1日に約500mlもの脳脊髄液が新たに作られ、古くなった脳脊髄液は次々と新しいものに入れ替わります。

水頭症は大きく分けて2種類あります。1つは脳室内での脳脊髄液の流れが悪くなることによる“非交通性水頭症”、もう1つは脳室を出た後に脳脊髄液の循環や吸収に異常が生じることによる“交通性水頭症”で、それぞれ原因や現れる症状、治療方法が異なります。

原因

水頭症は原因によって非交通性水頭症と交通性水頭症に分けられます。

非交通性水頭症

脳脊髄液は脳室にある脈絡叢(みゃくらくそう)で産生されます。ヒトには4つの脳室があり、脳脊髄液は左右の大脳半球内に対になって存在する“側脳室”と呼ばれる部位で産生されます。側脳室で作られた脳脊髄液は、“モンロー孔”と呼ばれる狭い通路を経て“第3脳室”へ移動し、さらに“中脳水道”を経て“第4脳室”に流れたのち、くも膜下腔へ流れ込みます。

非交通性水頭症は、この経路のうち脳室内で脳脊髄液の流れが悪くなることによって引き起こされる水頭症です。代表的なものでは、中脳水道が生まれつき狭い中脳水道狭窄症、脳室内部の腫瘍や出血などが原因として挙げられます。

交通性水頭症

交通性水頭症は、脳脊髄液の循環経路のなかで、くも膜下腔が狭くなるなどによって脳脊髄液の流れが悪くなることや、くも膜下腔内での脳脊髄液の吸収がうまくいかなくなることによって引き起こされます。

主な原因としては、くも膜下出血髄膜炎脳腫瘍、生まれつきの脳の形態異常などが挙げられます。

症状

水頭症はいずれの種類でも脳室の拡大という共通した現象が現れますが、非交通性水頭症と交通性水頭症では症状の現れ方が異なります。

非交通性水頭症

非交通性水頭症は、中脳水道狭窄症など生まれつきの病気によって発症しやすいタイプの水頭症です。乳児期は頭蓋骨を構成する骨同士が完全にくっついていないため、水頭症を発症すると脳の拡大に伴って頭囲も拡大するのが特徴です。

一方、乳児期以降で頭蓋骨の骨が完全にくっついた後に発症すると、頭囲の拡大は生じず、脳室の拡大に伴って脳圧(脳の中の圧力)が上昇し、頭痛や吐き気・嘔吐、意識障害など“頭蓋内圧亢進症状”と呼ばれる症状が現れます。

交通性水頭症

交通性水頭症は成人に多く見られるタイプの水頭症です。非交通性水頭症と同じく脳室の拡大は生じますが、脳室内の脳脊髄液の循環経路自体は正常であるため、脳圧は非交通性水頭症よりも上昇せず正常値であることが多いといわれています。そのため、頭痛や嘔吐などの症状が現れることはほとんどないとされています。

また、脳圧が正常値の水頭症を“正常圧水頭症”と呼びますが、このタイプでは歩行障害、認知機能障害尿失禁の3つの特徴的な症状が現れます。高齢者に多く見られる水頭症ですが、加齢によって現れる身体的変化と症状が似ているため、発見されずにいるケースも多いと考えられています。

検査・診断

水頭症が疑われるときは次のような検査が行われます。

頭部CT、MRI検査

脳室の拡大を観察するのにもっとも適した検査です。

通常は短時間で簡便に行えるCT検査を行い、脳室拡大の原因が脳腫瘍などであることが疑われる場合にはMRI検査を追加します。また、MRI検査は正常圧水頭症の診断にも有用であるとされています。

頭蓋骨X線検査

乳児期に発症した水頭症では、頭蓋骨を構成する骨同士の離開の程度などを評価する目的でX線検査が行われることがあります。

髄液排除試験(タップテスト)

正常圧水頭症が疑われる際に行われる検査です。

腰から腰椎のくも膜下腔に針を刺して脳脊髄液を30mlほど排除し、数時間~数日後に歩行障害が改善するか否かを調べます。脳脊髄液を排除して症状が改善する場合は、正常圧水頭症の可能性が高いと考えます。

治療

水頭症の治療方法は原因によって異なりますが、基本的には手術が必要となります。

水頭症の多くは、脳脊髄液の循環経路の異常や吸収障害が原因となります。これらの原因を根本的に改善するのは難しいケースが多く、一般的には過剰にたまった脳脊髄液をお腹の中(腹腔)などに流す経路を造る“シャント手術”が行われます。一般的に行われるのは“脳室―腹腔シャント(V-Pシャント)”で、脳室と腹腔(腹膜で囲まれた腹部の空間)を細い管でつなぎ、脳脊髄液を腹腔内に排出させます。小児の場合は、身体の成長に伴って脳室や腰椎と腹腔に通した管の長さが足りなくなるため、成長段階に合わせて再手術を行う必要があります。

また、生まれつきの中脳水道狭窄症などでは、頭蓋内に内視鏡を挿入し第3脳室の一部を拡張することで、脳室内の脳脊髄液の流れを改善する“内視鏡的第3脳室開窓術”が選択されることもあります。

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