にんちきのうしょうがい

認知機能障害

最終更新日:
2024年09月27日
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2024/09/27
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概要

認知機能障害とは、記憶力や注意力、判断力、実行力などの脳のはたらきが低下している状態の総称です。

この状態は認知症だけでなく、脳血管障害統合失調症うつ病など、さまざまな病気によって引き起こされる可能性があります。また、薬剤によって認知機能障害が生じる場合もあります。

主な症状としては、集中力の低下、記憶力の減退、複数の作業を同時に行うことの困難さなどが挙げられます。これらの症状により、仕事や日常生活に支障をきたすことがあります。たとえば、指示や約束を忘れてしまう、作業に集中できない、複雑な作業をこなすことが難しくなるなどの問題が生じます。

認知機能障害の治療では、原因に応じた治療を行うほか、生活の支障を軽減するため認知機能のリハビリテーションも重要です。リハビリテーションによって記憶力の改善や思考の柔軟性向上など、認知機能が改善することが分かっています。

原因

認知機能障害の原因には、認知症脳血管障害、精神疾患、薬剤などがあります。

認知症

神経に異常が生じる認知症は、認知機能障害を引き起こす代表的な病気です。認知症の原因となる主な病気は以下の3つです。

アルツハイマー型認知症

もっとも患者数が多い認知症です。脳内にアミロイドβと呼ばれるタンパク質が蓄積し、神経細胞に変性が生じることで発症します。記憶障害から始まり、徐々にほかの認知機能も低下していきます。初期症状として最近の出来事を忘れやすくなり、進行すると判断力や言語能力の低下、人格の変化などもみられます。

レビー小体型認知症

脳内にレビー小体と呼ばれる異常な構造物が蓄積することで発症します。このタイプの認知症では、日によって症状のよいときと悪いときの波があります。また、現実にはないものが見える幻視の症状が現れるのが特徴的です。そのほか、手足の震えや急に止まれないといったパーキンソン病に似た運動症状や、睡眠中に激しい動きや大声を出すなどの症状が生じます。

前頭側頭型認知症

脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することで発症します。このタイプの認知症の主な特徴は、性格や行動の変化です。たとえば、万引きや盗食(盗み食い)など社会的規範を無視した行動、感情表現が乏しくなる、自発的に言葉を発しにくくなるなどの症状がみられます。記憶障害は初期にはあまり目立たず、性格・行動変化や言語機能の障害が顕著です。

脳血管障害

脳の血管が詰まる脳梗塞(のうこうそく)や、脳の血管が破れる脳出血などの脳血管障害が起こると、神経細胞が破壊されて認知機能障害を発症します。脳血管障害による認知機能障害は突然発症することが特徴です。

精神疾患

統合失調症うつ病などの精神疾患によって認知機能障害が起こることもあります。統合失調症は、脳内で思考や感情を統合する(まとめる)機能が低下する病気です。うつ病はストレスをきっかけに発症することが多く、気分の落ち込みや意欲の低下、集中力の低下などの症状が現れます。

薬剤性

薬剤性の認知機能障害とは、医薬品の使用によって引き起こされる認知機能の低下を指します。さまざまな薬剤によって引き起こされる可能性があり、特に高齢者や複数の薬剤を服用している患者では発生リスクが高まります。抗コリン作用を持つ薬剤や睡眠薬、抗不安薬など脳の覚醒を低下させる薬剤が原因になることが多くあります。

そのほか、ドラッグストアで販売されている風邪薬や花粉症の症状を抑える薬、胃薬、睡眠を助ける薬(睡眠改善薬)など、一般的な薬でも認知機能障害が起こる可能性があります。

そのほか

以下のような原因でも認知機能障害が起こることがあります。

症状

認知機能には、以下のような種類があります。

  • 知覚機能:刺激を記憶と照合し意味づけをする機能
  • 注意機能:さまざまな刺激の中から特定の物事に注意を向ける機能
  • 記憶機能:文字列や言葉の意味、エピソード、手順などを覚えて思い出す機能
  • 実行機能:目標を設定して計画を立て、実現に向けて行動を起こす機能

これらの機能が妨げられることで、日常生活に影響を及ぼすさまざまな症状が生じます。

たとえば、新しく出会った人の名前が覚えられなかったり会話に集中できなかったりして、人間関係の構築が困難になる場合があります。

また、仕事では作業予定を立てる、作業の状況や指示・手順を覚えて実行する、集中力を保つなど、複数の認知機能が求められます。買い出しが必要な物品や家賃・公共料金の支払いを忘れてしまう・実行できなくなるなどして、日常生活に支障をきたす場面もあるでしょう。

検査・診断

認知機能障害が疑われる場合、認知機能検査を行います。認知機能検査は患者や家族への問診や、認知機能を測定する質問への口頭回答により行われます。近年ではタブレットやタッチパネルによる認知機能検査も活用されています。

また、認知機能障害を引き起こしている原因を調べるための検査も行います。具体的には問診のほか、運動機能を評価する神経学的診察、血液検査、頭部MRI検査、脳血流SPECT検査、脳ドーパミントランスポーターシンチグラフィー(DAT scan)、バイオマーカー検査などがあります。

治療

認知機能障害の治療は、原因となる病気や状況によって異なります。認知症の場合は、認知機能障害の薬物療法や認知機能のリハビリテーションを組み合わせた治療が行われます。脳血管障害の場合は、再発予防の治療と日常動作の機能回復訓練が重要となります。うつ病統合失調症の場合は、抗精神薬などを用いた薬物療法や認知機能のリハビリテーションが行われることがあります。薬剤性の場合は、原因となる薬剤の調整や変更が必要となります。

認知機能のリハビリテーション

認知機能改善のためのアプローチには、“認知適応法”と“認知矯正法”があります。患者によってどのような認知機能が弱まっているのか、反対にどのような認知機能は正常なのかといった具体的な症状は異なるため、個人個人に合わせて適切なリハビリテーションを行うことが重要です。

認知適応法

認知適応法は、障害されている認知機能を補うために代替の手段を取るアプローチです。たとえば、覚えておかなければならないことをメモして持ち歩く、作業手順を見える場所に貼っておくなどの方法が考えられます。

認知矯正法

認知矯正法は、認知機能そのものの改善を目指すリハビリテーションです。具体的なトレーニング方法にはさまざまなものがあります。例としては、筆記具またはコンピュータでドリルを解く、特殊なルールのしりとりを行うなどのリハビリテーションが挙げられます。

薬物療法

認知症における薬物療法は、認知機能障害の進行を遅らせ、患者の生活の質を維持するために行われます。主に使用される薬剤には、コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬があり、記憶力低下や判断力減退といった認知機能障害の進行を抑制する効果があります。近年、早期のアルツハイマー型認知症軽度認知障害(MCI)に対しては、従来と異なる治療法としてレカネマブが注目されています。この薬剤は、アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβを直接除去することで、病気の進行を抑えます。そのほか、統合失調症に伴う認知機能障害に対する新薬の開発も進んでおり、今後の治療選択肢の拡大が期待されています。

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