せいじょうあつすいとうしょう

正常圧水頭症

最終更新日
2020年02月14日
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2020/02/14
記事更新

概要

正常圧水頭症とは、脳室(脳の内部の空間)が拡大する水頭症の一種で、脳圧(頭蓋骨の内部の圧)の上昇を伴わないタイプのものを指します。

水頭症は、脳や脊髄(せきずい)の表面に存在する脳脊髄液の吸収がうまく行われなくなったりすることが原因で発症する病気です。脳や脊髄の表面はくも膜と呼ばれる薄い膜で覆われていますが、脳や脊髄との隙間をくも膜下腔といいます。くも膜下腔には、つくり出された脳脊髄液があり、外部からの衝撃を吸収して脳や脊髄を守っています。脳脊髄液は毛細血管から水分が染み出したもので、脳や脊髄の表面を移動しながら再び毛細血管に吸収されていきます。脳室では1日に500mlほどの脳脊髄液が新たにつくられ、常に産生と吸収で入れ替えが行われているといわれています。

正常圧水頭症は、脳脊髄液の吸収がうまく行われなくなることによって引き起こされる水頭症です。正常圧水頭症は原因によって“特発性正常圧水頭症”と“続発性水常圧水頭症”に分けられますが、いずれも歩行障害や記憶障害、尿失禁など特徴的な症状が現れます。

原因

正常圧水頭症は上で述べたように、脳脊髄液がつくり出されて血液中に吸収される過程のなかで、吸収が正常に行われなくなることによって発症する水頭症です。

正常圧水頭症は、特発性正常圧水頭症と続発性正常圧水頭症の2つのタイプに分類され、それぞれの原因は次の通りです。

1.特発性正常圧水頭症(30~40%)

原因がはっきり分からない正常圧水頭症を“特発性正常圧水頭症”と呼びます。高齢な方に多く発症することから、加齢による影響が大きいことが示唆されています。

2.続発性正常圧水頭症(60〜70%)

くも膜下出血髄膜炎、頭部外傷など何らかの先行疾患の後に発症する正常圧水頭症を“続発性正常圧水頭症”と呼びます。

どのようなメカニズムで正常圧水頭症を引き起こすのか明確には解明されていませんが、特にくも膜下出血の発症後1~2か月の間に生じることが多く、その発症率は30%に達するとされています。

症状

正常圧水頭症は脳脊髄液の吸収障害が生じることによって、くも膜下腔や脳室内に脳脊髄液がゆっくりと溜まり、脳室が拡大します。

急激に脳室が拡大する急性水頭症を発症した場合は、脳圧が上昇するため、頭痛や吐き気などの症状が現れます。しかし、この正常圧水頭症は、時間が経過するとともに徐々に脳室が拡大していくので、必ずしも脳内の圧が上がるわけではありません。そのため、頭蓋内圧が正常範囲の状態にあり、頭痛や吐き気などの症状は現れません。

しかし、脳室が大きくなることでさまざまな機能をつかさどる脳自体が圧迫されるため、歩行障害や認知症のような症状や尿意を感じにくいことによる尿失禁といった特徴的な症状が現れるようになります。

検査・診断

正常圧水頭症が疑われる症状が見られるときは、次のような検査が行われます。

頭部CT、MRI検査

正常圧水頭症の症状は、加齢によって引き起こされる生理的な機能低下による症状とも共通しているため、症状の問診だけで診断を下すのは非常に困難です。

診断を下すには脳室が拡大していることを確認する必要があり、頭部CT検査が非常に有用です。また、頭部MRI検査でも脳室の周囲に特徴的な変化が確認できることが分かっているため、CT検査では判断が下しにくい場合にMRI検査を行うことがあります。

髄液排除試験(タップテスト)

正常圧水頭症は、過剰に溜まった脳脊髄液を排除すると、歩行障害などの症状が改善するケースが多いことが知られています。このため、診断の際には、実際に腰椎のくも膜下腔から脳脊髄液を少量抜き取り、その後数時間~2、3日の間に起こる症状の変化を調べる検査が行われることがあります。

この検査は、タップテストと呼ばれ、脳脊髄液をほかの体腔へ導く経路を造る手術(シャント手術)をするか否かなどの治療方針を決めるうえでも重要な検査と考えられています。

治療

正常圧水頭症では基本的に、脳脊髄液のバイパス手術である“シャント手術”が行われます。現在、主に行われているのは“脳室―腹腔シャント”と“腰椎―腹腔シャント”です。

脳室―腹腔シャントは細い管を皮下に通して脳室から腹腔(腹膜に囲まれた体腔)に留置する方法であり、腰椎―腹腔シャントは腰椎のくも膜下腔から腹腔に管をつなげる方法です。そして、体内に埋め込んだバルブで状態に合わせてバルブ圧を変更し、脳脊髄液流量を調節していきます。

このシャント手術は基本的な脳神経外科的手術であり、日本では年間約13,000例の手術が行われています。ほかの手術同様に感染症などの手術合併症を発症するリスクもあるため、超高齢の方や認知症を伴うほかの病気が併存する方の場合などでは、当人や家族と相談しながら手術の適用を注意深く決定します。

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