インタビュー

特発性正常圧水頭症の症状と診断

特発性正常圧水頭症の症状と診断
医療法人慈風会 厚地脳神経外科病院 理事長  厚地 正道 先生

医療法人慈風会 厚地脳神経外科病院 理事長

厚地 正道 先生

認知症においては、早期発見・早期の治療開始が症状の回復に有効です。また、認知症のなかでも特発性正常圧水頭症は回復の可能性の高い病気です。もし身近な方に認知症を疑う症状が現れたら、早めに病院を受診することが望まれます。早期発見のために私たちはどんなことを受診の際の目安にすればいいのか、厚地脳神経外科の厚地正道先生にお話をうかがいました。

特発性正常圧水頭症の症状

特発性正常圧水頭症では、特徴的な症状として歩行障害、認知症、尿失禁の三徴候がみられます。

a. 歩行障害

歩行障害は発症早期から現れやすい症状です。特徴は、歩幅が小さくなったり(小刻み歩行)、足を上げづらくなったり(magnet gait)、足を広げて歩くようになったり(開脚歩行)します。またバランス能力が低下しやすくなり、転びやすくなります。障害が強くなってくると、最初の一歩が出しにくくなる「すくみ足」が起きたり、立っている状態を保持することが困難となります。

歩行障害は患者さんの生活の質に最も大きく関わる症状です。徐々に体重を支えるための介護量が増え、家族の介護負担が増していきます。

b. 認知症

特発性正常圧水頭症における認知症の症状は、アルツハイマー病やレビー小体病とは異なり、忘れっぽさよりも意欲・活気の低下、自発性や集中力の低下が目立ちます。さらに進行すると、呼びかけに対する反応が悪くなり、終日ボーっとしているなど元気がなくなってきます。特発性正常圧水頭症に認知症様症状がみられる場合、それが共存するその他の認知症の影響が強いのか否か考察することが大切になります。

c. 尿失禁

頻尿傾向や尿失禁(トイレに間に合わない、我慢できない)がみられるようになります。排泄の問題は、日常生活では本人・家族双方にとって精神的にきつい介護負担となります。

特発性正常圧水頭症の診断

a. 臨床症状(三主徴:歩行障害、認知症、尿失禁)の確認をします。

b. 画像診断

頭部CT/MRIで脳脊髄液貯留の有無を確認します。近年日本で行われた臨床前向き試験である、SINPHONIやSINPHONI-2において脳室拡大以外にDESH所見(頭頂部の脳脊髄液スペースが見えなくなる、不均一な髄液貯留)がみられると手術治療により臨床症状の改善可能性が高くなることが示されています。

左:DESHの状態、右:DESHでない状態 縦切りの断面

 

左:DESHの状態、右:DESHでない状態 横切りの断

 

c. 髄液排除試験(タップテスト)

老人性認知症でも脳萎縮に伴い脳室の拡大が認められることがあり、鑑別診断のために髄液排除試験(タップテスト)が行われます。腰椎穿刺を行って頭蓋内圧(正常値は80〜180mmH2O)を測定した後、約30mlの髄液を排除して症状が改善するか否かを評価します。水頭症がほとんど影響していない患者さんではタップテストを行っても症状は改善されませんが(心身機能が衰えすぎている人では症状改善はみられにくく、慎重な判断が要求されます)、タップテストで症状の改善が認められれば水頭症が悪さをしていると判断され、水頭症手術の適応があると考えます。