にょうしっきん

尿失禁

同義語
尿失禁症,失禁
最終更新日
2020年12月02日
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2020/12/02
掲載しました。

概要

尿失禁症(尿失禁)とは、自分の意志とは関係なく尿が漏れ出てしまう病気のことです。

尿失禁が引き起こされる原因はさまざまであり、膀胱や排尿をつかさどる神経の機能が加齢などによって低下することが原因のケースもあれば、前立腺がんなど深刻な病気が原因のケースもあります。治療法も原因によって異なり、加齢などの生理的な機能低下が原因の場合は明確な治療方法がない場合も少なくありません。

尿失禁という症状自体は命に関わるものではありません。しかし、日常生活に大きな支障をきたすことも多く、精神的なダメージや社会性の低下を伴う場合もあるため、適切な治療や対策が必要となります。

原因

尿失禁の原因は多岐にわたります。

尿は腎臓で生成され、膀胱に蓄えられます。膀胱は伸縮性のある筋肉でできているため、成人であれば500mlほどの尿をためることが可能です。そして、一定以上の尿がたまって膀胱の筋肉が伸展すると、その刺激が脊髄(せきずい)から脳に伝わって尿意が引き起こされます。しかし、ヒトは尿意を感じたとしても、すぐに排尿が生じるわけではありません。尿意を感知した脳からは“尿意を我慢する”よう尿の流出を防ぐ司令が膀胱や尿道に伝えられます。

尿失禁はこれらの仕組みに何らかの異常が生じることによって引き起こされる病気です。

具体的には次のような原因が挙げられます。

骨盤底筋の緩み

膀胱や尿道など排尿に関わる器官は骨盤底筋と呼ばれる筋肉に支えられています。加齢による筋力の低下、肥満や妊娠などによる筋肉へのダメージなどが生じて骨盤底筋が緩むと、咳やくしゃみをしたり、重たい物を持ったりして腹圧がかかった際に尿失禁が生じることがあります。

膀胱や神経機能の異常

加齢などによって膀胱の機能が低下し、膀胱が過剰な収縮を生じることで突然強い尿が生じ、尿失禁を引き起こすことがあります。

また、脳梗塞(のうこうそく)パーキンソン病など神経の病気によって、排尿をコントロールする神経に異常が生じると突然尿が生じて尿失禁につながることも少なくありません。

排尿障害

前立腺肥大症前立腺がん糖尿病などによって排尿障害が生じると、膀胱内に多量の尿がたまるようになるため、たまった尿が少しずつ漏れ出るように失禁することがあります。

身体機能・認知機能の低下

加齢などによる身体機能や認知機能の低下は、移動に時間がかかってトイレまで間に合わない、適切な場所で排尿することができないといった症状を引き起こすため、尿失禁の原因になることがあります。

症状

尿失禁は、自分の意志とは関係なく尿が漏れ出る“尿失禁”が生じる病気です。

尿失禁が生じる原因は上でも述べたように多岐にわたり、症状の現れ方も原因によって異なります。

骨盤底筋の緩みが原因の場合は、お腹に力が入ったタイミングで前触れなく尿失禁が生じます。前触れがないため、自分の意志で排尿を制御することは困難です。

一方、膀胱や神経の機能異常による尿失禁は、少量の尿しかたまっていないにもかかわらず膀胱が過度に収縮するため、突然の強い尿意が生じる“尿意切迫感”を伴うことが特徴であり、尿の回数も増加します。

また、排尿障害による尿失禁は、残尿感(尿が出切らない感覚)や排尿の勢いの低下などの症状を伴い、少量ずつじわじわと尿が漏れ出ます。そして、身体機能や認知機能の低下による尿失禁は、排尿に適さない場所や状況で排尿行為が生じることが特徴です。

検査・診断

尿失禁の原因は多岐にわたり、加齢や病気による後遺症など改善が困難な原因が背景にあるケースも少なくありません。

しかし、一般的には尿失禁が疑われる場合は膀胱や前立腺などに何らかの異常がないか調べるために次のような検査が行われます。

尿検査

尿の成分を顕微鏡などで詳しく調べ、尿の中に細菌や血液、がんの細胞などが含まれていないか評価する検査です。尿失禁を引き起こす病気の有無を簡易的に評価することができます。

画像検査

膀胱や前立腺などに病気がないか調べるため、CTやMRI、超音波などを用いた画像検査が行われることが一般的です。その結果、尿道や膀胱に何らかの病気が疑われた場合は、尿道から内視鏡を挿入して尿道・膀胱の内部をさらに詳しく観察する膀胱鏡検査や、膀胱内に造影剤を注入して膀胱造影検査を行うことがあります。

尿流動態検査

尿道から膀胱に水を注入し、膀胱の大きさや膀胱に水分が蓄えられている際の感覚などを調べる検査です。体への負担を伴う検査ですが、膀胱の機能を評価するのに優れています。

パッドテスト

骨盤底筋のゆるみによって生じる尿失禁の有無を調べるために行う検査です。

水分を摂取した後に60分間所定の動作を行います。検査前に装着した尿パッドにどれだけ尿が漏れ出ているか調べることで、診断をしたり重症度を判定したりすることができます。

治療

前立腺がんなどの病気が原因の場合は、それらの病気の治療が優先的に行われます。

一方で、尿失禁は加齢による生理的な機能低下や病気の後遺症などによって引き起こされるケースも多く、さらに原因が分からないこともあるため明確な治療法がない場合も少なくありません。しかし、尿失禁は生活の質を下げる症状でもあるため、それぞれの原因に適した治療やトレーニングが行われています。

骨盤底筋のゆるみによる尿失禁には、骨盤底筋を鍛えるトレーニングが有用とされていますが、セルフケアのみでは症状が改善せず日常生活に大きな支障をきたしているような場合には、骨盤底筋を支えるメッシュなどの医療機器を挿入するための手術が行われることもあります。

一方、尿意切迫感を伴う尿失禁には抗コリン薬などの薬物療法も有用ですが、尿意を我慢する“膀胱訓練”なども行われています。

予防

尿失禁の原因は多岐にわたり、なかには明確な予防法が確立していないものもあります。

しかし、女性によく見られる骨盤底筋のゆるみによる尿失禁は骨盤底筋を鍛える運動を行い、肥満の場合は減量することで発症を予防することが可能です。膀胱や神経の機能低下による尿失禁にも効果がある場合もありますので、日ごろからトレーニングを取り入れるとよいでしょう。

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