概要
レビー小体型認知症とは、異常なタンパクの蓄積による“レビー小体”が脳の広い範囲(大脳皮質)にたまることで、記憶や動作などに障害が現れたり、見えないものが見える“幻視”などの症状が現れたりする病気です。
アルツハイマー型認知症、血管性認知症とともに“三大認知症”と呼ばれていて、認知症の中ではアルツハイマー型認知症に次いで患者数が多いといわれています。
またレビー小体が引き起こす病気として、レビー小体型認知症以外にも“パーキンソン病”が知られています。パーキンソン病とは、レビー小体が脳の“脳幹”という部分にたまることによって、手足のふるえや筋肉のこわばり、動作がゆっくりになるなどの症状がみられる病気です。
レビー小体型認知症やパーキンソン病など、レビー小体によって起こる病気を総称して“レビー小体病”と呼ぶこともあります。
原因
レビー小体型認知症は、脳の大脳皮質という部分に異常なタンパクの蓄積によって生じる“レビー小体”が原因となって発症します。このレビー小体が発生してしまう主な原因は、脳の年齢的な変化であると考えられています。
レビー小体の増加とともに脳の神経細胞が減っていき、記憶にかかわる“側頭葉”や視覚情報を処理する“後頭葉”に問題が生じることにより、幻視などのさまざまな症状が現れるといわれています。
症状
レビー小体型認知症の症状の程度には個人差がありますが、前提として日常生活に支障をきたすような認知機能の低下がみられます。また、初期には目立ちにくい傾向がありますが、進行とともに記憶障害が現れます。
レビー小体型認知症の症状は、特有の“中核的特徴”と、高齢者にみられやすく診断の一助となる“支持的特徴”に分けられます。
中核的特徴
認知機能の変動
レビー小体型認知症では、物忘れや“いつ”“どこ”などの状況の把握ができなくなる、会話の理解が難しくなるなどの認知機能の低下がみられます。ただし、物忘れの症状は病気の初期段階では目立ちにくい場合もあります。
また、レビー小体型認知症による認知機能の低下は調子にムラがあることが特徴で、1日や1週間などの短い期間の中でも調子がよいときと悪いときがあります。
幻視
レビー小体型認知症に特有の症状で、初期段階から現れやすいものとして“幻視”が挙げられます。この症状は高頻度に繰り返し現れる傾向があり、ほかの認知症では初期段階にみられないことから、病気の区別に役立つことがあります。
レビー小体型認知症における幻視の症状は夜間に起こりやすく、“(実際にはいないのに)知らない人がそこに立っている”“壁に虫がたくさんいる”“物が人の姿に見える”など、具体的な内容であることが特徴です。
レム睡眠行動障害
レム睡眠行動障害とは、睡眠時に夢を見て大きな声を出す、暴れるなどの異常行動がみられることをいいます。人間の睡眠は、夢を見る“レム睡眠”と大脳を休める“ノンレム睡眠”を繰り返しますが、この異常行動はレム睡眠のときに起こることが特徴です。
レビー小体型認知症の患者の中には、認知機能の低下などが認められる前にレム睡眠行動障害が生じる人もいます。
パーキンソン症状
パーキンソン症状とは、パーキンソン病でみられるような運動障害のことをいいます。具体的には、体が固くなり動きにくくなる、動きが鈍くなる、手足にこわばりやふるえが生じるなどの症状が挙げられます。ただし、高齢になると目立たないことがあります。
支持的特徴
そのほか、以下のような症状がみられる人もいます。
- 抗精神病薬が強く効きすぎてしまう
- 姿勢が不安定になる
- 転倒を繰り返す
- 失神
- 一時的にボーッとして無反応になる
- 自律神経障害(便秘、立ち上がった際の立ちくらみ、尿失禁)
- 過眠
- 嗅覚が鈍くなる
- 幻覚
- 妄想
- 無気力で何もする気がない(アパシー)
- 不安
- うつ状態
検査・診断
レビー小体型認知症の診断には、一般的に“レビー小体型認知症(DLB)の臨床診断基準”が用いられます。これには、症状の項で述べた中核的特徴や支持的特徴のほか、検査で分かる特徴に基づく診断基準が明確に記されています。
実際に行われる検査としては問診のほか、以下のようなものが挙げられます。
MRI検査・CT検査
脳の形状を観察し、脳梗塞や萎縮がないかどうか確認します。萎縮がみられた場合には、その部位や程度についても確認します。
脳血流SPECT・糖代謝PET(FDG-PET)
脳がきちんとはたらいているかどうかを確認する検査です。脳SPECT検査では脳の血流の低下を確認でき、症状のみでは診断の難しい初期の認知症を診断できる可能性があります。
また、糖代謝PET検査(FDG-PET)では放射能やブドウ糖を含む薬剤を投与し、特殊なカメラで撮影することによって、脳内の糖代謝の状態から脳の機能低下を確認します。ただし、認知症に対するFDG-PETは保険適用ではありません。
これらの検査では、同じ認知症でもアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症で画像に違いがみられるといわれています。
ドパミントランスポーターシンチグラフィ検査
ドパミンと呼ばれる神経伝達物質をうまく取り込めているかどうかを確認する検査です。薬剤を注射し、頭部の撮影を行います。レビー小体型認知症のほか、パーキンソン病の診断でも行われることのある検査です。
MIBG心筋シンチグラフィ検査
心臓の筋肉(心筋)を支配する交感神経がしっかりとして(はたらいて)いるかどうかを確認する検査です。薬剤を投与し、2回にわたって特殊なカメラで撮影を行います。
アルツハイマー型認知症との区別にも役立つ検査方法です。
治療
レビー小体型認知症には、病気を根本的に治療する方法はまだありません。そこで、症状に応じた非薬物療法や薬物療法を組み合わせて行うことが一般的です。
たとえば、認知機能障害に対してはコリンエステラーゼ阻害薬などの薬物療法を中心に行い、また睡眠衛生指導、リハビリテーション、環境の整備や患者の状況に合わせたケアなどの非薬物療法を併せて行っていきます。
レビー小体型認知症の患者は、抗精神病薬における反応が過敏になることがあります。そのため非薬物療法は重要であり、気になることがあれば医師に相談しながら治療を進めていくことが大切です。
医師の方へ
レビー小体型認知症の概要、診断方針、治療方針をまとめて確認することができます。
「レビー小体型認知症」を登録すると、新着の情報をお知らせします