れびーしょうたいがたにんちしょう

レビー小体型認知症

脳

目次

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概要

認知症とは、物忘れや時間・場所がわからなくなり、徐々に身の回りのことができなくなる病気ですが、その種類は多岐に渡ります。代表的な病気ではアルツハイマー型認知症が有名であり、認知症のおよそ半数を占めています。

レビー小体型認知症とは、認知症の原因疾患として変性性認知症の中では、アルツハイマー型認知症に続き、2番目に多い認知症です(認知症の原因として約20%と報告されています)。アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症に脳血管性認知症を加えた3つは、三大認知症といわれています。

レビー小体型認知症は、主に65歳以上の高齢者に多くみられますが、30〜50歳代で発症する場合もあります。また、アルツハイマー型認知症は女性に多く、レビー小体型認知症は男性に多い傾向があります。

原因

レビー小体型認知症は、レビー小体と呼ばれる異常な構造物が脳のさまざまな部位に蓄積することが原因として発症します。レビー小体とは、α−シヌクレインという線維性のタンパク質が凝集した円形の構造物であり、レビー小体が脳に蓄積すると、神経細胞の変性が起き、神経細胞脱落が生じます。

レビー小体型認知症は認知症症状に加えて、幻視、レム睡眠行動異常症、パーキンソニズムなどが現れる病気ですが、レビー小体の蓄積する分布・程度や合併するアルツハイマー病理変化(アミロイドβやリン酸化タウ)のステージに応じて、さまざまな臨床症状が引き起こされていると考えられています。

脳の表面に広がる神経細胞の灰白質の薄い層である大脳皮質は、物事を考えたり視覚したり認識したりすることにとても重要なはたらきをしています。合併するアルツハイマー病理変化が強ければ、認知機能低下は顕著となりますが、レビー小体型認知症に特徴的な臨床症状がみられにくくなります。

またレビー小体の病理変化が強く、アルツハイマー病理変化が弱ければ、レビー小体型認知症に特徴的な幻視やパーキンソニズムなどの臨床症状がわかりやすく現れます。中枢神経系におけるレビー病理変化は脳幹部や嗅球からはじまると考えられていますが、脳幹部は、脳の中でも呼吸や血液循環といった生命の基本活動を担っている部位でもあり、手足などの運動を円滑に行うための機能を有する細胞も位置していることから、レビー小体型認知症におけるさまざまな自立神経症状やパーキンソニズム、レム睡眠行動異常症を説明することができます。

レビー小体が脳に蓄積する原因のひとつに遺伝的な要因が挙げられます。レビー小体のもととなるα−シヌクレインに関するSNCA遺伝子に何らかの異常(ミスセンス変異及び重複変異)があり、健康な方に比べてα−シヌクレインができやすい体質である場合があります。しかし、この機序からレビー小体型認知症を発症する方は現在のところ、一部であると考えられています(2019年2月時点)。

症状

レビー小体認知症では、以下の4つの症状が中核的特徴です。

  • 注意や明晰さの著明な変化を伴う認知機能の変動
  • 繰り返し現れる構築された具体的な幻視
  • 認知機能の低下に先行することもあるレム睡眠行動異常症(RBD)
  • 特発性のパーキンソニズムの以下の症状のうちひとつ以上:動作緩慢(どうさかんまん)寡動(かどう)、静止時振戦(しんせん)、筋強剛

認知機能の動揺とは、認知機能が時間経過とともによくなったり悪くなったりを繰り返すことをいいます。頭がはっきりしているときと、していないときの差が激しく、調子がいいときには通常通りの会話が成立しますが、頭の機能が鈍くなると集中力や注意力が低下することになります。

虫や人などの幻視の症状を見ることも特徴です。知らない人が隣に座っている、床に水が流れているなど、実際にありえてもおかしくはない幻視を訴えることがあります。これに関連して、見間違えなどの錯視を起こすこともあり、被害妄想や思い違いをすることもしばしばです。

2017年の臨床診断基準からは、レム睡眠行動異常症(RBD)が中核的特徴のひとつにあげられるようになりました。睡眠中に悪夢を見て大きな声で寝言を言ったり、怒ったり、暴れたりなどの行動をとることがあります。

また、パーキンソニズムを認めることがあります。具体的な運動症状としては、必須症状としての運動緩慢に加えて、寡動、筋肉が硬くなる筋強剛、安静時振戦などの症状がありますが、レビー小体型認知症はパーキンソン病と比較して安静時振戦や左右差が少ないといった特徴があります。症状が強くなると、姿勢保持障害が現れ、関節可動域の低下や歩行困難、寝たきりになることもあります。

そのほか、うつの症状が出たり、失神や便秘などの自律神経症状をみたりすることもあります。また、さまざまな睡眠障害は、アルツハイマー型認知症より高頻度に認めると報告されています。また、嚥下(えんげ)機能の低下から誤嚥性肺炎をきたすこともあります。

検査・診断

レビー小体型認知症は、上記のような特徴的な臨床症状から病気の存在が疑われます。またレビー小体型認知症では、アルツハイマー型認知症と同様に実際に症状が現れる前の時期から、脳の中での病理変化が生じていることが判っています。

中核的特徴に加えて、指標的バイオマーカーを用いることにより、臨床診断をつける一助とすることができます。レビー小体型認知症では、SPECT(スペクト:単一光子放射断層撮影)またはPET(ペット:陽電子放射断層撮影)で示される大脳基底核でのドパミントランスポーターの取り込み低下を認め、アルツハイマー型認知症との鑑別が可能です。しかし、進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症などのパーキンソン関連症候群との鑑別はできません。また、レビー小体型認知症では自律神経障害も生じやすく、MIBG心筋シンチグラフィ検査で、心臓交感神経のはたらきが低下していることを確認できます。

支持的バイオマーカーとしては、頭部CT、MRIで側頭葉内側部の萎縮が軽く、SPECT、PET検査による後頭葉の機能低下を認めることがあります。また、脳波上における後頭部の著明な徐波活動も特徴のひとつです。

治療

レビー小体型認知症の脳病変の進展過程そのものを根本的に治療する治療法は、現在のところ確立されていません(2019年2月時点)。そのため、症状にあわせた対症療法が中心となり、アルツハイマー型認知症と同様に薬物療法と非薬物療法に大別されます。

薬物療法としては、認知機能改善、幻視などのBPSDの改善にコリンエステラーゼ阻害薬の効果が期待できると考えられています。また、パーキンソニズムに対しては、一般的には抗パーキンソン剤で治療することが多いですが、薬剤性の意識障害や幻視を誘発させてしまうことがあり、低用量からゆっくり漸増していきます。

非薬物療法としては、ケアや環境調整が重要です。認知機能が低下しそうなときには1人で歩かせずにそばにいたり、幻視を起こしにくいように室内の明るさを統一したりすることも効果が期待できます。また、パーキンソニズムでは転倒をしやすくなるため、環境中からつまずきやすいものは排除することが必要です。

いずれにしても、多職種協働連携の中でご本人及びご家族を各種介護サービスを利用しながらサポートしていくことが必要になります。