インタビュー

レビー小体型認知症の診断-レビー小体型認知症をとりまく環境

レビー小体型認知症の診断-レビー小体型認知症をとりまく環境
(故)小阪 憲司 先生

横浜市立大学医学部 名誉教授

(故)小阪 憲司 先生

この記事の最終更新は2016年02月04日です。

レビー小体型認知症の患者さんは推計でおよそ90万人以上いると考えられていますが、専門医の不足や医師の間でのこの病気の知名度が低いということも影響し、正確な診断がなされていない現状があります。本記事では、レビー小体型認知症をとりまく環境について述べていきます。

※本記事は、レビー小体型認知症の発見者である、横浜市立大学医学部名誉教授 小阪 憲司先生にご監修いただいております。

レビー小体型認知症の患者さんは推計でおよそ90万人以上いると考えられており、18万人いるパーキンソン病の患者数を大きく上回っています。しかし、知識を持つ医師がまだまだ少ない現状があり、そのためレビー小体型認知症のことを世間の人々だけでなく、医師をはじめとした医療従事者にももっと啓発していく必要があります。2013年に行われた厚生労働省の研究班によれば、レビー小体型認知症と診断されたのはわずか4.3%でした。これはいくつかの認知症疾患医療センターに基づくデータですが、実際はおおよそ20%と推定されるので、いかに医師が診断できていないかがわかります。 

レビー小体病とは、脳の神経細胞の中に「レビー小体」という特殊な物質が多くみられる病気の総称で、レビー小体型認知症パーキンソン病認知症を伴うパーキンソン病などが該当します。レビー小体が多く出現する脳の部位が異なっているため、このような分け方がなされています。 しかし、この3者を具体的に区別する診断基準には未だに不備があり、その線引きがはっきりとなされていない現状があります。 

認知症を伴うパーキンソン病とは、パーキンソン病患者さんのうち、認知症に移行してしまう場合のパーキンソン病のことですが、特にこの認知症を伴うパーキンソン病とレビー小体型認知症の違いがはっきりしていません。さらに、進行したパーキンソン病とパーキンソン症状を示すレビー小体型認知症とでは、症状の上でも共通した特徴が多いことから、両者を同じ疾患だと考えるのが最近の考え方です。 

一方、これらを別の病気として定義づけた方が良いとする考え方もあります。 これらの疾患は初期症状に違いがあります。レビー小体型認知症の初期症状は幻視が中心になるのに対し、パーキンソン病では、振戦や歩行障害、転倒しやすくなるといった症状が出ます。このように初期の症状が大きく異なることから、これらが別の疾患であると考える医師も少なくありませんが、最近はこれらをまとめてレビー小体病と呼ぶようになっています。 

画像診断において、レビー小体型認知症では特徴的な画像所見を認めることがわかっています。そのひとつに心臓の交感神経機能を検査するMIBG心筋シンチグラフィ検査というものがあります。レビー小体型認知症の患者さんでは、病早期より始まる心臓交感神経の変性により心臓のMIBGの集積が低下するのです。これに幻視、自律神経障害、レム睡眠行動障害などの症状と組み合わせることで、レビー小体型認知症と診断できます。 

また、イオフルパンといわれる放射性医薬品を用いたSPECTを利用した診断方法も有用です。SPECTでは、体内の血流量や代謝機能の情報が得られるため、認知症などの脳の機能が低下し、血流が低下する疾患において、診断の一助となります。例えば、幻視などの視覚認知障害があるレビー小体型認知症やパーキンソン病では、後頭葉の血流低下がみられ、診断上、参考になります。脳のどの部位の血流が低下しているかを調べることができるので、認知症のうち、アルツハイマー型認知症なのか、レビー小体型認知症なのか、脳血管性認知症なのかといった、認知症の種類も特定できる可能性があるのです。

パーキンソン病やレビー小体型認知症では、黒質線条体といわれる脳の部位に存在する神経が変性・脱落し、線条体のDATの密度が低下することが知られています。イオフルパンを用いることで、線条体におけるDATの密度を確認することができます。 また、レビー小体型認知症では脳内にレビー小体といわれる物質が蓄積するといった特徴的な所見が認められますが、このレビー小体の構成物質であるα–シヌクレインを画像化する試みが現在行われています。これが実用化されれば、レビー小体型認知症がより診断しやすくなると考えられます。 

  • 横浜市立大学医学部 名誉教授

    (故)小阪 憲司 先生

    レビー小体型認知症の発見者として世界的に有名な認知症疾患のスペシャリスト。長年、認知症治療や研究の第一線で活躍し、レビー小体型認知症の家族会を開催するなど、家族のサポートにも力を注いできた。「認知症治療には早期発見と早期診断、さらには適切な指導と薬剤選択が欠かせない」とし、現在も全国各地で講演やセミナーなども行い、認知症の啓発活動に努めている。

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