概要
レム睡眠行動障害とは、睡眠中に悪夢に対応する形で大きな声を出す、怖がる、隣で寝ている人を蹴るなどの行動が出てしまう病気のことです。
睡眠には、寝ている間も脳ははたらいている“レム睡眠”と脳が休息している状態の“ノンレム睡眠”があり、レム睡眠とノンレム睡眠を一定の割合で繰り返すことで脳や体を休ませています。
レム睡眠中は、通常生理的には筋肉は動きませんが、レム睡眠行動障害の人は筋肉を動かすことが可能であり、夢に反応してさまざまな行動が現れてしまいます。
レム睡眠行動障害では、無意識のうちにさまざまな行動を取ることから、本人がけがをするだけではなく身近にいるパートナーに危害が及ぶ可能性もあります。
また、レム睡眠行動障害がパーキンソン病やレビー小体型認知症などの神経疾患の初発症状として、初老期から老年期に現れることがあります。そのため、適切な診断のもと対応策を講じることがとても重要です。病気の存在が疑われる場合には、早期に医療機関への受診を検討することが大切です。
原因
レム睡眠行動障害は、脳の中でも睡眠をつかさどる部位に異常が生じることを原因として引き起こされると考えられています。
通常、レム睡眠中に夢を見ることが知られ、レム睡眠中は同時に筋肉の動きも抑制され脱力状態になっています。そのため、レム睡眠中には身体の運動ができないように調整されています。
しかし、レム睡眠行動障害では、脳の異常を基盤としてレム睡眠中における筋肉の動きが正常に抑制されていません。そのため、レム睡眠中にも体が動いてしまい、夢の中の行動が現実の行動となって現れてしまいます。
症状
レム睡眠行動障害では、レム睡眠中に大きな声を上げる、怒鳴りつける、手足をばたつかせるなどの行動が見られます。レム睡眠中には夢を見ており、こうした夢(特に悪夢)に反応する形で体が動いている状態が確認されます。
レム睡眠行動障害では、こうした行動をもとにして本人がけがをすることがあります。また、同じベッドに寝ている人にも危害が及ぶ可能性もあります。
レム睡眠行動障害で見られるこうした行動異常は、一晩の間に何度か見られることがあります。他人から目を覚ますように促されると、患者さんは容易に目を覚まします。この際、どのような夢を見ていたのかを確認すると、誰かに追いかけられていた、恐怖を感じるような内容であったなどと述べることができるのが典型的といえます。
レム睡眠行動障害は、パーキンソン病やレビー小体型認知症などの神経疾患の初期症状として、初老期から老年期に現れることがあります。睡眠時の異常を見る際には、時間経過とともにこれらの病気に特徴的な症状(動きが鈍くなる、手の震えが見られる、物忘れなど)が明らかになることもあります。
検査・診断
レム睡眠行動障害では、まず問診によって症状の項目で記載したような内容がないかどうかを確認することが大切です。目を覚ました後に夢の内容を確認し、恐怖や不安を感じるようなものであったなどの内容は、レム睡眠行動障害を考慮するうえで大切な情報であるといえます。
また、レム睡眠行動障害の確定診断では、睡眠ポリグラフ検査と呼ばれる検査が必要となります。脳波を用いた睡眠段階の評価、呼吸状態、筋肉の動きの評価とともにビデオを用いて睡眠中の行動様式を観察することで特有の所見を確認します。これは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群などによって類似した症状を呈することがあり、除外する必要があるからです。
さらにレム睡眠行動障害では、経過中にパーキンソン病やレビー小体型認知症といった病気が明らかになることがあります。定期的に病状を観察し、これら病気が疑われる際には、さらなる画像検査が追加されることもあります。
治療
レム睡眠行動障害では、本人やベッドパートナーがけがをする可能性もあるため、まずは危険を回避するための対策を行います。具体的にはけがを起こすようなものを寝室からなくす、クッションをおいてけがをしにくくするなどの環境づくりが挙げられます。
症状はストレスや過度の飲酒、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の合併を原因として増悪することもあるため、ストレスを軽減するリフレッシュ方法を日常生活に取り入れる、飲酒量を減らすなどの適切な対応を心がけることも重要です。また、増悪因子が改善された後もけがをするリスクが高い場合や睡眠に支障をきたす場合には、薬物療法が検討されます。
レム睡眠行動障害は、経過中にパーキンソン病などの神経疾患の発症を見ることもあります。必ずしも発症するわけではないのですが、ストレスの軽減を心がけるとともに定期的に医療機関を受診することも大切です。
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