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インタビュー

レビー小体型認知症とはどんな病気? 発症のしくみから治療まで

レビー小体型認知症とはどんな病気? 発症のしくみから治療まで
山田 正仁 先生

金沢大学 医薬保健研究域医学系 教授

山田 正仁 先生

目次
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レビー小体型認知症は、認知症の原因となる病気のひとつです。脳の神経細胞に“レビー小体”というものが出現してさまざまな症状を引き起こす病気をレビー小体病とよびます。レビー小体病の中で認知機能の障害が症状の主体となっているものをレビー小体型認知症といいます。

今回は、レビー小体型認知症とはどのような病気なのか、金沢大学医薬保健研究域医学系教授、金沢大学附属病院脳神経内科長の山田(やまだ) 正仁(まさひと)先生に伺いました。

レビー小体型認知症は、脳の神経細胞にレビー小体という異常構造物が出現することで、認知症になる病気です。認知機能の障害を主体として、そのほかに運動症状や自律神経症状、睡眠障害といったさまざまな症状が現れます。どのような症状が出てどのように進行していくのかは患者さんによって異なることが特徴です。

多様な症状があることから、どの診療科で統計を取るかによって患者さんの数は異なると考えられますが、一般的には認知症全体の5~20%程度だろうと考えられています。

認知症には、アルツハイマー病血管性認知症など複数の種類があり、それぞれ発症のしくみや症状が異なります。レビー小体型認知症の場合、原因であるレビー小体が脳の特定の場所に出現することが、この病気に特徴的な症状を引き起こします。それでは、レビー小体とはどのようなものなのでしょうか。

レビー小体は、私たちの神経細胞にあるα-シヌクレイン(alpha-Synuclein)というたんぱく質が集まり、固まってできた異常構造物です。α-シヌクレインは、神経細胞と神経細胞のつなぎ目であるシナプスというところに存在しており、何らかの理由で異常に集まって固まってしまうと、レビー小体になります。このレビー小体によって神経細胞が傷つけられ、神経細胞が壊れると、認知症が引き起こされます。レビー小体は加齢に伴って生じやすくなり、65歳以上の高齢者の3分の1は脳にレビー小体を持っているとされています。

ただし、レビー小体がなぜ出現するのかは、まだ完全には明らかになっていません。通常のレビー小体型認知症では、遺伝的因子と環境的因子が絡み合って出現しやすくなるのだと考えられており、原因について盛んに研究が進められています。

異常

レビー小体が脳のどの部分に出現するかによって、引き起こされる症状が異なります。脳の中でも大脳のほうにレビー小体が多く生じれば認知症が引き起こされ、その場合はレビー小体型認知症と呼ばれます。中脳の黒質という部分に多く生じれば、筋肉が硬くなったり動きが緩慢になったりする運動症状が引き起こされ、その場合はパーキンソン病と呼ばれます。そのほかにも、レビー小体が出現する場所によって、睡眠障害が目立つ場合、立ちくらみなどの自律神経症状が目立つ場合などがあります。

このようにレビー小体が原因となる病気を総称して“レビー小体病”といいます。そのうち、主に認知機能の障害が症状の中心として起こっているものを“レビー小体型認知症”と呼びます。

レビー小体型認知症は、認知症を中心として、以下に挙げる四つの特徴的な症状(中核的特徴)が見られます。

認知機能の変動

日によって、あるいは時間によって認知機能の状態が変わるという特徴が見られます。たとえば、“昨日は調子がよかったのに、今日は会話も難しい”といったように、ご自身の置かれている状況が分かる時期と、混乱している時期とが交互に現れます。

繰り返す具体的な幻視

そこにいないはずの人物、動物、虫などが、あたかも目の前に存在するかのように浮かんで見えるという、詳細な幻覚が繰り返し現れます。

パーキンソニズム

先述したように、中脳の黒質という部分が傷つけられることにより、“動作がゆっくり”(動作緩慢)、“動きが少ない”(寡動)、“静かにしているときに手足が小刻みに震える”(静止時振戦)、“筋肉がこわばる”(筋強剛)といった症状が現れます。

レム期睡眠行動異常症

レム睡眠*中に鮮明な夢を見て、それに影響を受けて体を動かしてしまう、睡眠の障害です。通常、人が夢を見ているときは体が動かないように調整されていますが、レビー小体型認知症の患者さんは、眠っていても激しく体を動かすことがあります。たとえば、悪夢を見たときに暴れるように手足を動かし、体をどこかにぶつけたり、隣で眠っている人にけがをさせてしまったりすることがあります。

*レム睡眠:急速な眼球運動と筋肉の活動低下を特徴とする睡眠段階のひとつ

先述した認知機能の変動、繰り返す具体的な幻視、パーキンソニズム、レム期睡眠行動異常症のほかにも、さまざまな症状が現れ(支持的特徴)、診断の参考となります。

精神症状

不安、妄想、うつ症状などの精神症状も見られることがあります。

自律神経症状

レビー小体型認知症の原因となるレビー小体という物質は、脳だけでなく、皮膚や消化管に存在する自律神経*にも出現します。それにより、起立性低血圧**、便秘などの自律神経症状も見られることがあります。

*自律神経:自分の意思とは関係なく刺激に反応して体の機能を調整する役割を担う神経

**起立性低血圧:立ち上がるときに生じる急激な血圧の低下

レビー小体型認知症では、認知症の主要な原因であるアルツハイマー病で見られる脳の変化も一緒に起こることが多いです。

レビー小体型認知症は脳ばかりでなく全身に分布する神経の広い範囲に病変が起こり、病変の進行の仕方が患者さんによってさまざまなので、症状の出方はその人により異なります。

前述のように、大脳皮質にレビー小体が発生して認知機能の低下が起こる場合、レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)と呼びます。一方、中脳の黒質にレビー小体が発生して運動機能の障害から始まる場合、パーキンソン病となりますが、レビー小体の分布が大脳のほうに進展して大脳全体に広がると、認知機能の障害が出てくることがあります。この場合、臨床的にはレビー小体型認知症ではなく、認知症を伴うパーキンソン病(Parkinson's disease with dementia:PDD)と呼びますが、レビー小体病のバリエーションのひとつです。

また、においが分からなくなる嗅覚障害や、立ちくらみなどの自律神経症状から病気が広がっていく場合もあります。

レビー小体型認知症の診療における問題点は、このようにさまざまな病態のバリエーションがあるため、将来的な進行の予測が難しい点にあります。

ただし、レム期睡眠行動異常症、幻覚、パーキンソニズムなどの特徴的な症状が複数見られ、検査でも異常が認められた場合には、レビー小体が広範囲に広がってきており、レビー小体型認知症が進行していく可能性が高いと考えられます。

レビー小体型認知症を確実に診断するためには、脳や自律神経のどこかに"レビー小体が存在している"ということを、直接的に示す必要があります。しかし、現在のところ、そのような検査方法はまだ確立していません(2020年3月時点)。

そのため、レビー小体型認知症の診断では、基本的には症状とその経過を把握し、脳神経系を含めて全身を丁寧に診察し、さらに補助的に画像検査などを用いることで診断精度を高めています。

レビー小体型認知症の診断において役立つ画像検査には、次のようなものがあります。このうち、診断において特に重要視される検査方法(指標的バイオマーカー)は、ドパミントランスポーターシンチグラフィ(DATスキャン)、123I-MIGB心筋シンチグラフィ検査、睡眠時ポリソムノグラフィ(睡眠時ポリグラフ検査)の三つです。

DATスキャン
レビー小体型認知症(DLB)の患者さん(右)の脳では、健常者(NC)(左)と較べて、中脳の黒質ドパミン神経の変性に伴い線条体におけるドパミントランスポーターの取り込みの低下が見られる(矢印)

レビー小体型認知症では、中脳の黒質という部分にあるドパミン神経(ドパミンニューロン)が傷ついて減り、神経伝達物質のドパミンが不足することで、症状としてパーキンソニズムが出てくることがあります。そこで、ドパミン神経の終末部分の状態を見るドパミントランスポーターシンチグラフィ(DATスキャン)という検査で、ドパミン神経の障害があるかどうかを調べます。

レビー小体型認知症(DLB)の患者さん(右)では健常者(NC)(左)と比べて心臓交感神経終末へのMIBGの取り込み低下が見られる(矢印)
レビー小体型認知症(DLB)の患者さん(右)では健常者(NC)(左)と比べて心臓交感神経終末へのMIBGの取り込み低下が見られる(矢印)

レビー小体型認知症では、中枢神経系ばかりでなく末梢の自律神経系も障害を受けます。そのため、心臓の交感神経を調べることが、診断に役立ちます。金沢大学脳神経内科を中心に全国の研究者が共同研究を行い、有用性を確立した検査方法で、2017年から指標的バイオマーカーのひとつとなっています。

睡眠時における脳波や眼球運動、筋肉の動きなどを記録する検査です。レム期睡眠行動異常症の出現に対応する異常を検出するための検査として用います。

レビー小体型認知症はアルツハイマー病と違って、CT検査やMRI検査などで、脳の海馬(かいば)という部分の萎縮が目立たないことが多いのが特徴です。また、脳血流を見る脳血流SPECTや脳内の糖代謝を見るFDG-PETで脳の機能を調べ、後頭葉の代謝・血流低下といったレビー小体型認知症で見られるパターンの異常がある場合、レビー小体型認知症の診断に役立ちます。

α-シヌクレインを直接的に見る検査方法はまだ確立していませんが、α-シヌクレインがたまっていることを確認する検査方法について、研究が進められています。たとえば、脳脊髄液や血液を詳細に解析する検査、自律神経が通っている皮膚や消化管の組織を採って解析する検査、脳におけるα-シヌクレインの蓄積を示すPET画像検査など研究開発が進んでおり、近い将来の実用化が期待されます。

私を含むレビー小体型認知症研究者の国際的なグループ である“DLB国際コンソーシアム”は、2017年にNeurology誌で発表した『レビー小体型認知症の診断と治療に関する推奨。DLBコンソーシアム第4レポート』にて、レビー小体型認知症の診断基準を12年ぶりに改訂しました。それ以降、ここで発表した診断基準に基づいた診療が一般に行われています。

中心的な特徴である認知症とともに、四つの中核的特徴(認知機能の変動、繰り返す具体的な幻視、パーキンソニズム、レム期睡眠行動異常症)のうち二つ以上あれば、Probable DLB、つまり臨床的にほぼ確実なレビー小体型認知症であると診断します。

また、中核的特徴が一つしかなくても、三つの指標的バイオマーカーであるドパミントランスポーターシンチグラフィ(DATスキャン)、123I-MIBG心筋シンチグラフィ検査、睡眠時ポリソムノグラフィのうち一つでも特徴が認められれば、ほぼ確実と診断します。

認知症のある患者さんで、中核的特徴が一つだけ見られるという場合、Possible DLB、つまり臨床的にレビー小体型認知症の可能性があると考えます。

また、中核的特徴が一つもなくても、三つの指標的バイオマーカーのうち一つでもレビー小体型認知症の特徴が認められれば、可能性があると考えます。

レビー小体型認知症の治療には、大きく分けて薬物療法と非薬物療法があります。

レビー小体そのものを治療できる根本的な治療があるとよいのですが、残念ながら現時点ではありません。レビー小体病では、神経細胞が障害されて神経細胞間の伝達に必要な物質が足りなくなった結果、症状が出ています。現在の薬物療法は、脳で“足りなくなった物質を補う”ような治療が行われ、患者さんが困っている症状を和らげる薬が処方されます。たとえば、認知症の症状がある場合は脳内のアセチルコリンという物質を増やす薬を使い、パーキンソニズムがある場合は運動症状を改善する作用があるドパミンという物質を増やす薬を使う、といった治療です。しかし、ある症状をよくするための治療がほかの症状を悪化させる、薬の副作用などの問題があり、薬物療法には限界があります。

レビー小体型認知症では、認知症症状ばかりでなく運動症状をはじめとするさまざまな症状が見られること、さらに薬物療法には上記のような問題があるため、薬物療法以上に重要になるのが、リハビリテーションやケアなどの非薬物療法です。

リハビリテーションについて

たとえば、有酸素運動や柔軟体操などを行うことで、筋力の維持や転倒予防とともに、脳の活性化も期待できます。また、日常生活でパズルを解いたり、家族や周囲の方と関わったりすることや、デイケア、デイサービスなどを利用しリハビリや環境整備をしてよい生活のリズムをつくることなど、いきいきとした生活を送ることにつながります。

患者さんとの接し方について

患者さんとの接し方も重要です。たとえば、幻視があり「知らない人がそこにいる」と繰り返しおっしゃる患者さんがいますが、薬剤治療に頼ると、かえってほかの症状が悪化して十分な治療ができない場合もあります。そういう場合、「そこに見える人は、決してあなたに危害を加えることはありません。安心してよいですよ」などと丁寧に説明することで納得していただける場合もあります。

ケアのプロフェッショナルへの相談について

レビー小体型認知症は、運動症状や自律神経症状などの多様な症状が現れ、ケア面で苦労することが多いです。ケアのプロフェッショナルである専門職の方々を中心に、さまざまな症状が出ることを理解したうえで、患者さん一人ひとりに合わせたケアやリハビリを行うようにすることが大切です。

患者さんから「私は悪夢を見て暴れてしまうようです。将来、認知症になりますか」と相談を受けることもあります。睡眠時ポリソムノグラフィを行うと、確かにレム期睡眠行動異常症が確認できました。その患者さんは、レム期睡眠行動異常症がない方と比べれば、レビー小体型認知症になりやすいと考えられます。しかし、実際にレビー小体型認知症を発症するかどうか、予測することは難しく、睡眠時の症状のみで一生過ごされるかもしれません。

レビー小体型認知症は、症状や進行の違いに多様性のある病気です。そのため、病気の進行をどのように予測し早期の段階で診断するかは、近年の重要な研究テーマとなっています。日本を含む世界の研究者たちは、レビー小体型認知症の早期診断を課題として、さらなる研究・開発に取り組んでいます。また、レビー小体の出現を抑制したり除去したりすることができる根本的な治療法(“疾患修飾療法”とよばれます)の研究開発も進んでいます。

先生

レビー小体型認知症の診療において重要なのは、診断基準として挙げられている四つの中核的特徴(認知機能の変動、繰り返す具体的な幻視、パーキンソニズム、レム期睡眠行動異常症)に、できるだけ早く気がつくということです。

また、うつ症状や便秘といった支持的特徴も、診断の役に立ちます。たとえば、抗うつ薬が効かない頑固なうつ症状が中高年に発症しているような場合、専門家は、それだけでもレビー小体型認知症を疑います。「歳を取ったからかもしれない」などと考えずに、少しでも気になることや困った症状があれば、遠慮なく受診するようにしてください。

レビー小体型認知症やパーキンソン病などのレビー小体病全体を専門とし、幅広い症状が診られる日本神経学会神経内科専門医やレビー小体型認知症に詳しい認知症の専門医(日本認知症学会専門医や日本老年精神医学会専門医)に相談することをおすすめします。

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