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レビー小体型認知症(DLB)で処方される治療薬とは?〜治療方針は患者の症状によって異なる〜

レビー小体型認知症(DLB)で処方される治療薬とは?〜治療方針は患者の症状によって異なる〜
中根 一 先生

帝京大学医学部附属溝口病院 脳神経外科 教授

中根 一 先生

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レビー小体型認知症(DLB)とは認知症の一種で、認知機能障害のほか、幻視、パーキンソン症状など、さまざまな症状を伴う病気です。レビー小体型認知症の診断では医師による診察やMRIによる画像検査から、認知症疾患診療ガイドラインに掲載された“DLBの臨床診断基準”に基づいて判断され、診断後は患者の症状に合わせて薬物療法や非薬物療法が行われます。

本記事ではレビー小体型認知症と診断された場合に行われる治療や、処方される治療薬について詳しく解説します。

レビー小体型認知症には病気を根本的に治す治療はなく、症状を和らげる対症療法が行われます。レビー小体型認知症の症状は変動する認知機能障害、幻視(見えないものが見える症状)、パーキンソン症状(体の動きが悪くなるなど)、REM睡眠行動障害など多岐にわたり、患者の症状に合わせてそれぞれの治療方針を決めていく必要があります。

レビー小体型認知症では症状に合わせて治療薬が処方されます。

しかし、レビー小体型認知症の患者は薬が効き過ぎてしまう、副作用が強く出てしまう、症状が悪化してしまうなど、薬物療法による有害事象が出ることもあります。そのため、薬の服用時は医師の指示に従い、気になる症状があれば病院を受診する際に報告しましょう。また市販の風邪薬、胃薬などを服用する場合も、担当医への相談を検討しましょう。

患者の症状によって処方される薬は異なりますが、一般的な症状に対する治療薬は以下のとおりです。

注意力の低下など認知機能障害が生じている場合、日常生活に支障がなければ、生活環境を整えたうえで、定期診察により経過観察を行います。もし日常生活に支障があれば、アルツハイマー型認知症の治療でも使用されるコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル塩酸塩)が処方されます。

幻視などの心理的症状や、大声で寝言を言う、悪夢で目覚めて暴れるなどの睡眠障害があった場合には、抗精神病薬や抗てんかん薬が処方されることもあります。ただし、レビー小体型認知症の患者は抗精神病薬が効き過ぎる場合があるため、まずは非薬物療法を行い、それでも改善しなかった場合には抗精神病薬の処方が検討されます。

体が硬くなり動きが鈍くなる、手の震えが生じるなど、パーキンソン病の症状が見られた場合、パーキンソン病の治療薬のレボドパが処方されることがあります。ただし、レボドパを服用すると、幻視などの精神症状が悪化することもあるため、患者の状態に合わせながら低用量での処方が行われます。

レビー小体型認知症では自律神経障害が生じ、立ちくらみなどの起立性低血圧や便秘、排尿障害などが生じることもあります。これらの症状は、パーキンソン病にも共通しているため、基本的にはパーキンソン病の治療方法に準じた治療が行われます。

具体的には、起立性低血圧にはパーキンソン病による立ちくらみを改善するドロキシドパや、低血圧治療薬のミドドリンが処方されます。

また、便秘には便を軟らかくする酸化マグネシウム、消化管のはたらきをよくするモサプリドなどが処方されます。排尿障害は認知障害機能を治療する薬などで改善することもありますが、状況に応じて別の治療薬が処方されることもあります。ただし、抗コリン薬は認知機能が悪化する恐れがあるため、処方が控えられています。

レビー小体型認知症の症状を和らげるためには、薬物療法だけでなく、非薬物療法を行う必要があります。現段階で有用と考えられている非薬物療法には、以下のようなものが挙げられます。

認知症では、興奮のきっかけとなる事柄を取り除き、転倒防止のために段差をなくすなど、患者の生活環境を整えることが肝要です。また、家族や介護者が病気を理解したうえで患者と関わることも大切です。

レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症と比較して、およそ10倍転倒しやすいといわれています。リハビリテーションなどで体を動かし、転倒を予防することが大切です。

残念ながら、現時点でレビー小体型認知症は治療で完全に治ることはないといわれています。しかし、病気と付き合いながら日常生活を送っていくために、症状に合わせた治療やケアを行っていくことが肝要です。診断後は、家族と医師が協力し、患者が安心して生活できるような環境づくりを行うことを心がけましょう。

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