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認知症の治療-認知症の方との接し方
認知症は「治さなくていい」という考え方が重要であるとお伝えしました(記事1:認知症は「治さなくていい」。治る認知症は一部だけ)。では、それを踏まえたうえでどのように認知症の方(以下「ご本人」)と...
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認知症の治療-認知症の方との接し方

公開日 2015 年 11 月 07 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

認知症の治療-認知症の方との接し方
上田 諭 先生

東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科教授

上田 諭 先生

認知症は「治さなくていい」という考え方が重要であるとお伝えしました(記事1:認知症は「治さなくていい」。治る認知症は一部だけ)。では、それを踏まえたうえでどのように認知症の方(以下「ご本人」)と接すればよいのでしょうか。認知症の治療と、ご本人に接するうえでの重要なポイントについて、日本医科大学 精神神経科 講師の上田諭先生にお話しいただきました。

治療の基本は認知症の方を中心にすること

認知症の方が何を考えているのか、どんな気持ちでいるのかを想像したことはあるでしょうか。ご本人とご家族が一緒に診察にこられたとき、多くの場合ご家族からの話が中心で、ご本人の話を聞く機会はあまり大事にされてこなかったように思います。多くの場合、診察室で医者が「調子はどうですか?」と家族に聞き、ご家族が答えるのみです。つまり、ご本人に話す機会を与えていないのです。
「認知症の方は何もわかっていない」とさえ思っている医者やご家族もいるかもしれません。認知症の方はわかっていないのではなく、話して聞いてもらえる場がないから答えないのです。

多くの病気では治療の際、「患者(ご本人)と医者」という関係であるにも関わらず、認知症では「ご家族と医者」という関係になっています。なぜなら、困っているのも治して欲しいのもご家族で、ご家族の意思が中心にされてしまうからです。しかし、どんな些細な話題であっても、ご本人を中心に話をして診察や治療を行うことが重要です。

家族や医者はどう接するのか

前の記事「認知症は「治さなくていい」。治る認知症は一部だけ」で述べたように、「認知症は治る」と捉えるとご家族は「治そう」とします。「よくなるためにこのようにして!」や「早くよくならないとダメだよ!」という接し方をしてしまいます。ご本人には常に、「治らなければいけない」という重圧がかかり続けることになります。そして「今の自分を認めてもらえていない」と気持ちがすさみます。ますます元気がなくなったり、ご家族の言うことに反発したりするようになってしまいます。

だからこそ「治さなくていい」と考えてほしいのです。治すことに力を入れるのではなく、治らないのだから「今のままのご本人でいい」と考えることです。そしてご本人の生活を充実させるということに力を注いでほしいのです。
ご本人の気持ちを中心にして、ご家族にはご本人の気持ちを害さないように接してもらいます。また医者はご家族にそのような指導を行います。

治療とは、「自己肯定感」の回復を行うこと

前項で述べたように、認知症の方が治療の過程で今の自分を否定されたような感覚を持つケースは多くあります。なぜなら、ご家族中心の診察室では、ご家族が医師に対して「ここがだめだ」「こんなことに困っている」と訴えられるばかりであるからです。ここで必要な治療とは、ご本人の「自己肯定感」を回復させてあげることです。このために変化させるべきことが2つあります。それは「ご本人への接し方」と「ご本人の生活」です。これらを変えると、症状も変わるのです。

  1. ご本人への接し方を変える

認知症は治さなくていい、ご本人は今のままでいいのだと考えることは非常に大切です。「認知症の症状を引き起こす原因に目を向ける」でも説明しますが、ご本人は忘れっぽくなったなどの自己の変化を感じ不安を覚えます。それに加え、ご家族から何度も忘れっぽさを指摘されると「なぜそこまで言われなければいけないのか」と反発を感じるようになるのです。
ご家族は「治す」ために、少しでもよくなるように励まそうと指摘や注意をされているのでしょう。しかしご本人にしてみれば叱られ、恥をかかされたように感じ、孤立感や疎外感を覚えてしまうのです。

ご本人への接し方の鉄則として次のことを私は言っています。

  • 指摘しない
  • 議論しない
  • 怒らない

認知症は治さなくていいと考え、今のままでいいのだと認めてあげます。認知症の方には少しずつできないことが増えてきますが、そのときはいたわる気持ちで助けてあげてほしいのです。そして医者もご家族もしっかりとご本人の話に耳を傾けてあげます。このように接し方や態度を変えてあげるのです。

  1. ご本人の生活を変える

趣味や特技、好きなもの・ことは誰もが持っているものですし、もちろん認知症の方も同じです。認知症の方の得意なことができる場所、自分を肯定できる場所をつくり生活を変えてあげることが重要です。たとえば、デイサービスもそのひとつです。
実例を挙げてお話しします。お茶屋さんを営む女性は、認知症を発症されてからお茶の銘柄やお釣りを間違えることが増えてしまい、ご家族は非常に困っていました。しかしお店が生きがいである女性はお店に立つことを止めず、その結果ご家族との喧嘩が絶えませんでした。

そこで、デイサービスでお茶をふるまうことを勧めました。関係者の方々の協力もあり、女性がお茶を振る舞える機会をつくってもらいました。もともとお茶をたてることが非常に上手ですから、デイサービスに通う他の方々にも喜んでもらえました。その結果、最初は通いたがらなかったデイサービスにも、生き生きとして通うようになりました。
このように、ご本人の得意なものを生かせる環境や認めてもらえる場があることがご本人をいきいきとさせるのです。デイサービスが合わない方もいますし、これはあくまで一例ではありますが、なんらかの方法で本人の生活を変えてあげることは非常に大切なのです。

関西学院大学社会学部卒業後、朝日新聞に記者として入社するが、医学への志向から北海道大学医学部に入学する。北海道大学医学部卒業後、東京武蔵野病院精神科などを経て、日本医科大学精神神経科講師を務める。老年期精神医学やリエゾン精神医学を専門とし、認知症のみならずこころの問題に力を注いでいる。17年4月より東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科教授に就任。

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