認知症にはいくつかの種類があり、アルツハイマー型認知症もその中の1つです。アルツハイマー型認知症は“アルツハイマー病”と呼ばれ、認知症患者の約半数がアルツハイマー型認知症だといわれています。主な原因は“アミロイドβ”や“タウ”といったたんぱくが異常凝集して神経細胞が障害され脳が変性することであり、この危険因子として家族内での遺伝や遺伝子異常、加齢、生活習慣病などが考えられています。
そこで本記事ではアルツハイマー型認知症の原因を中心に予防策などについても詳しく解説します。
アルツハイマー型認知症の発症の危険因子には、家族内での遺伝や遺伝子異常、加齢、生活習慣病などが考えられています。
なかでも遺伝的要因が関与しているといわれることから、家族にアルツハイマー型認知症患者がいる場合にアルツハイマー型認知症を遺伝的に発症する恐れがあります。この遺伝的リスク因子には、アポリポタンパクE(apoE:コレステロールを全身に送るはたらきを持つ)をつかさどる遺伝子が関係していることが知られていますが、そのほかの遺伝子との関係性は明らかになっていません。なお、apoEをつかさどる遺伝子にはいくつかのタイプがあり、タイプによってアルツハイマー型認知症との関連性は異なります。
ε4(イプシロン4):この遺伝子を保有していない人に比べてアルツハイマー型認知症を発症しやすく、発症年齢も若い傾向がある。
ε2:アルツハイマー型認知症を発症しにくい。
ε3:アルツハイマー型認知症を発症しやすいとも、しにくいともいえない。
アルツハイマー型認知症は糖尿病や高血圧といった生活習慣病、心臓疾患、脳卒中、高コレステロール、頭部外傷の既往などとも関連があるとされています。
そもそもアルツハイマー型認知症の発症は脳が変形することであるため、脳の血流が悪くなればアルツハイマー型認知症のリスクも高まると考えられます。したがって、生活習慣病などによる動脈硬化(動脈の壁が硬くなった状態)や脳における循環器病などが血流に影響すると、アルツハイマー型認知症の発症につながることがあります。
また、喫煙や加齢もアルツハイマー型認知症の危険因子とされています。喫煙はニコチンの作用によって脳の血流障害が生じることから、リスクが高まるとする報告もあります。
ほかにも頭部に物理的な衝撃が加わることで神経細胞が障害を受けたり、異常たんぱく質が蓄積したりすることもアルツハイマー認知症の発症リスクになると考えられています。
アルツハイマー型認知症の遺伝的要因を制御することは、現段階では難しいとされています(2020年7月時点)。一方、生活習慣病などの後天的要因についてはいまだ研究途上の部分もありますが、一般的に健康的とされる生活を送ることがアルツハイマー予防につながる可能性があるとされています。
生活習慣病予防のためには、食事、アルコール、喫煙習慣などに注意が必要です。 バランスの取れた食事を心がけるほか、アルツハイマー型認知症の予防に期待されている飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸を取れるよう、肉よりも魚を取り入れるとよいとされています。さらに、酸化から体を守るビタミンE、ビタミンC、βカロチンなどもアルツハイマー型認知症の予防にはよいといった報告もありますが、いずれも確固としたエビデンスはありません。
また、適度なアルコールはコレステロールの減少や思考力、記憶力の維持につながる可能性があるとされています。しかし、普段飲酒をしない人がアルツハイマー予防のためにわざわざ飲酒をすることは推奨されていません。さらに、認知症発症後はアルコールで症状が悪化することもあるため、基本的には禁酒するのがよいとされています。そのほか、喫煙者は非喫煙者に比べてアルツハイマー型認知症の発症率が3倍になるというデータもあるため、禁煙も心がけるとよいでしょう。
アルツハイマー型認知症はさまざまな原因があると考えられていますが、予防方法に関してははっきりとしたことはいえません。そのため、アルツハイマー型認知症が疑われる症状がある場合は早めに受診を検討しましよう。症状はもの忘れから始まることが一般的です。進行すると思考力、判断力、学習能力も徐々に低下し、最終的には歩行障害が現れ、寝たきりになることもあります。現段階では根本的な治療法はありませんが、もの忘れを改善する薬や、アルツハイマー型認知症によって引き起こされる睡眠障害や抑うつ状態などを改善する薬で治療を行うことは可能です。また、アルツハイマー型認知症と同じような症状でも、硬膜下血腫や正常圧水頭症などが原因の場合は、早期に治療すれば治ることもあります。そのため、もの忘れなどアルツハイマー型認知症のような症状が現れた場合は、脳神経内科、精神科、脳神経外科または認知症専門外来などの受診を検討しましょう。
金沢大学 脳神経内科 診療科長
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