インタビュー

認知症治療の評価と真の目的

認知症治療の評価と真の目的
繁田 雅弘 先生

東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授、東京慈恵会医科大学附属病院 精神神経科 診療部長

繁田 雅弘 先生

この記事の最終更新は2016年03月28日です。

認知症に対するさまざまな治療が本当に効果を上げているのかどうか―目に見えて良くなることがないだけに、治療の効果を評価することは難しい面があります。治療がうまくいっているのかどうかを測る物差しは必要です。しかし、治療の真の目的はその先にあるのだといいます。首都大学東京 大学院 人間健康科学研究科教授の繁田雅弘先生にお話をうかがいました。

これまでの記事でお示ししてきたように良いケアや治療を受けることができたとして、それらが実際に効果をあらわしていることをどうやって判断すればいいのでしょうか。医学の立場では、下記のようなことからそれを判断しています。

  • 医療機関でのテストの成績(低下の有無、低下の度合い)
  • 生活活動能力(ADL)の程度(着替えは自分できるが、服の収納場所が思い出せない、など)
  • 精神症状の強さ(不安やイライラなどの有無、その度合い)

しかしこれらの指標は、さまざまな職種・立場の人たちが協力して認知症の人を支援しようとするときに、医療従事者以外の人たちにはピンと来ない―理解されにくい面があります。それは、これらが治療の真の目標ではなく、物差しとして使われているものだからです。このことを医学の言葉では「代用目標(surrogate endpoint)」といいます。私たちは、その裏側にある「真の目標」のことを忘れてはなりません。

テストの点が以前に比べて下がっていなくても、ご本人がつらさや精神的な苦しさを感じているとしたら、それは良い医療が提供できているとは言えないのです。逆にテストの点が悪くなっていて、日常の動作で失敗することがあったとしても、ご本人がいきいきと物事に取り組んでいるのであれば、それはその人にとって良い人生を送ることができていると言えるのかもしれません。

では「真の目標」とは何なのでしょうか。それは本来、認知症の人を支援する多職種の方たちで議論をし、相談して決めるべきことですが、以下のようなことがその例として挙げられます。

認知症治療の真の目標(true endpoint)

  • 家庭や社会の中で何らかの役割を担い、生きがいを感じられること
  • 自分の力で何かを成し遂げられたという自己効力感や達成感、幸福感
  • 無気力・無関心にならず物事に興味・関心を持つこと など

このような目標であれば、医療従事者だけでなく、ケアに関わる人や行政担当者でも共有できるものになります。このことを共通認識として、それぞれの職種の人が自分たちの尺度で、これらの真の目的を達成するための方法論に落とし込むことができればよいのです。

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