インタビュー

アルツハイマー病の症状-経過とともに進行する

アルツハイマー病の症状-経過とともに進行する
金沢大学 医薬保健研究域医学系 教授 山田 正仁 先生

金沢大学 医薬保健研究域医学系 教授

山田 正仁 先生

アルツハイマー病と聞くと、「家族の顔がわからなくなる・何もできなくなる」というイメージばかりが先行してしまいがちです。しかしアルツハイマー病は徐々に進行するものであり、突然そのような症状があらわれるということはありません。本記事では、経過と重症度ごとの症状について金沢大学神経内科 大学院医薬保健学総合研究科 脳老化・神経病態学 (神経内科学)教授の山田正仁先生にお話しいただきました。

アルツハイマー病の進行

アルツハイマー病は徐々に進行します。アルツハイマー病は発症後、軽度認知障害(MCI・正常でも認知症でもない中間状態)を経て認知症になり、認知症は軽度、中等度、重度(高度)の段階に分類されます。

MCI(軽度認知障害)

近時記憶障害(少し前の出来事を思い出せない)のみの段階です。日常生活にはほぼ支障がありません。

軽度認知症段階

健忘型の軽度認知障害から始まります。近時記憶障害が目立つようになり(数分前に話したことやエピソードを思いだせない)、さらに時間に関する見当識の障害(日付けを思い出せない)や、実行機能障害(段取りをつけて物事を実施できない)、判断力の障害などが出現します。ほかにも自発性減退、うつ気分がみられ、物盗られ妄想が目立つ場合もあります。日常生活に支障がでてくるかどうかが軽度認知障害との境目であり、日常生活に支障がみられます。

中等度認知症段階

中等度になると認知機能全体の低下が著しくなり、時間ばかりでなく場所に関する見当識の障害が現れます。さまざまな高次脳機能の障害(大脳巣症状)がみられ、具体的には次のようなものが現れます。

①失語

  • 語健忘(物の一般名称がうまくでてこない)
  • 錯語(言い間違いや言おうとしていない言葉を言ってしまう)
  • 反響言語(相手の話しかけや問いかけに対して、適切に答えることはなく、おうむ返しにそのまま発言してしまう)
  • 語間代(「こんにちわちわちわ」と言葉の終わりの音節を反復する​)

②失行(運動器に異常がないにもかかわらず、身につけた一連の動作を行う機能が低下すること) 

  • 構成失行
  • 観念運動失行
  • 観念失行
  • 着衣失行

③失認(感覚器に異常がないにもかかわらず、目や鼻などの五感で周りの状況を把握することが低下すること)

  • 視空間失認など

④計算力低下

また、妄想・徘徊・夕暮れ症候群(夕方になると落ち着かなくなり、自宅にいても自分の家に帰りたいと言う)・食行動の異常=何でも食べようとする(口運び傾向・oral tendency)など、認知症の行動・心理症状(behavioral and psychiatric symptoms of dementia: BPSD)*がめだつようになります。これらの症状の有無や程度には個人差があります。中等度の段階ではかなりの手助けが必要になってきます。

重度認知症段階

重度の認知障害があらわれます。人物に関する見当識障害も出現し、家族などの親しい人間も忘れてしまうことがあります。最終的には何もできない状態になり、全面的な介護が必要となり寝たきりとなります。


*認知症の行動・心理症状(BPSD)について:たとえば、記憶障害によってどこかに置いた財布の存在を忘れてしまい、盗まれたと妄想してしまうことがあります。これは「物盗られ妄想」といい、最も身近にいてお世話をしているご家族(お嫁さんなど)がターゲットにされることが多いのです。この妄想により、ご家族に対して暴言を吐いてしまいます。このような記憶障害や見当識障害などの中核症状に付随するBPSDが起こらないようにすることが大切なのです。ご家族がアルツハイマー病についての知識をもち、デイケアなどの社会的資源を利用し、ご家族が息抜きして余裕をもって認知症の方と接することができるよう環境を整えます。早い段階で正確に診断し環境を整え、BPSDを予防するようにすることが重要です。

アルツハイマー病の進行

その他の認知症の症状

アルツハイマー型認知症では前述した症状が約9割であり典型的なものといえるでしょう。しかし、1割のアルツハイマー型認知症に以下のような非典型の症状があります。

  1. 前頭葉の変性が強く行動異常がめだつ例(frontal variant)
  2. 後方大脳皮質の萎縮と視空間機能の異常がめだつ例(posterior cortical atrophy)
  3. 言語障害のみが前景に立つ例など(多くの場合、進行に伴い記憶障害もめだつようになります。)

このように、臨床症状だけでは非典型的なアルツハイマー型認知症を正確に診断することが難しい場合があります。しかし、アルツハイマー病の検査法の進歩により、非典型例でもアルツハイマー病と診断できるようになってきました。(参照:「アルツハイマー病の検査と診断」